左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ

文字の大きさ
16 / 30
見知らぬ客

見知らぬ客 後日譚――

しおりを挟む
 

 数日後の朝。

「ねえねえ、菜乃、知ってる?
 友だちの友だちが言ってたんだけどさ」
と言いながら、スミ子が菜乃の机にやってきた。

 『友だちの友だちが~』とかいうのは、大抵の都市伝説のはじまりだけど。

 友だちの友だちのうち、最初に出てくる『友だち』の方すら、誰だかわからないことがほとんどなのが不思議だ……。

 友だちのはずなのに、とか思いながら、菜乃はスミ子の話を聞く。

「旧校舎にさ。
 赤い――」
とスミ子が言い出したので、赤い紙、白い紙の話かなと思ったが、違った。

「赤い腕時計をつけた花子さんが出るんだって。

 赤以外の腕時計をしていると、トイレの中にひきずり込まれて、異世界に連れてかれるらしいよ」

 ……なんかいろいろ混ざってる。

 っていうか、なぜ、みんな、トイレの向こうに異世界があると思うんだろうな。

 などと考えていたとき、涼太が教室に飛び込んできた。

「おい、菜乃っ。
 俺のテスト、返してくれっ」

「えっ? なんで?
 うまく始末できたからよかったって言ってたじゃん」

 小テストが返ってきたとき、案の定、点が悪かった涼太に、
「それ、ちょうだい」
と言うと、あっさり渡してくれたのだが。

 涼太は今になって返せと言ってくる。

「ママ……おふくろに小テストがあったことがバレちゃってさ。
 今すぐ持ってこいって怒ってるんだよっ」

「あっ、ごめん。
 あれ、もう、欲しいって人にあげちゃった」

 いや……人ではないんだが、と思いながら、菜乃はそう言った。

「ええ~っ?
 100点のテストとかじゃないのに、いる人いるのかよっ?」

「あ、大丈夫だよ。
 涼太の名前は消してあるからね。

 もし、とり返したいのなら、4時44分に旧校舎の女子トイレに行くといいよ」

「4時44分!?
 旧校舎!?
 女子トイレ!?

 行きたくないしっ。
 そもそも、女子トイレ、入れるわけないだろっ!?」

 まあ、行きたくない要素、満載まんさいだよね、と思いながら菜乃は、ひとつ提案ていあんしてみた。

「そうだねー。
 じゃあ、ママにその小テストのこと忘れてもらうとか?」

「おふくろに?」
と涼太はわざわざ、ママからおふくろに言いかえる。

「どうやってだよ」

「明日の漢字の小テストで満点をとったらいいんじゃない?
 そしたら、きっと、前のテストのことは忘れるよ」

「いや、無理だろ。
 明日だぞっ」

「大丈夫。
 漢字テストだもん。

 暗記するだけでしょ」

 暗記するだけとか言うな、この優等生めっ、という、よくわからないののしりの言葉を受ける。

「付き合ってあげるよ。
 放課後、旧校舎の空いてる教室で、吐くほど、漢字、書きなぐろうっ」

「それくらいなら、4時44分に女子トイレに行った方がマシだ~っ」
と涼太は叫んだ。

 そんな涼太の後ろで、スミ子は今日も消しゴムを転がしている。



「赤い紙、青い紙とか。
 赤い腕時計とか。

 なんで、都市伝説には色ネタ多いんですかね?」

 旧校舎前のグラウンドで、菜乃は会長にそんな話をする。

 放課後、涼太は逃げたが、会長はやってきた。

 日差しは強かったが、グラウンドの端は旧校舎の大きな影の中に入っているせいで、少し涼しかった。

「腕時計の話が増えたのは、お前のせいだろ」

 今日は学校帰りなのか、会長は制服姿だった。

 そんな会長を見上げて、菜乃がちょっと笑うと、どうした? ときかれる。

「いえ、もう来られないのかと思ってました。

 テストを手に入れて、願いが叶ったから、成仏しちゃって、もう来ないのかなって」
と菜乃が笑うと、

「成仏って。
 俺は生きてるが……」
と会長は渋い顔で言う。

 出会ってから、この人の真面目な顔と渋い顔しか見てないな。

 バカ笑いとかしないのかな、と菜乃は、いつも冷静な会長の端正な顔を見上げた。

「そういや、お前、中三だよな?
 お前も受験生じゃないのか?」

 どこ行くんだ? 高校、と問われる。

 菜乃は苦笑いして答えた。

「一応、会長と同じ、秀峰しゅうほう高校なんですけど……」

「えっ?」

 入れるのかっ? ときかれるかと思ったが、そうではなかった。

「お前、来年来るのか。
 うちの学校にまで、おかしな都市伝説増やすなよ?」

「いやいや、赤い腕時計の話が増えたのは、たまたまですからね?」

 そんな話をしながら、ふたりで旧校舎の地下に下りる。

 またまた、なにか増えているだろう、購買部の『いらないモノ』を眺めに行った――。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot
児童書・童話
 薬草を採りに入った森で、魔獣に襲われた僕。そんな僕を助けてくれたのは、一人の女性。胸のあたりまである長い白銀色の髪。ルビーのように綺麗な赤い瞳。身にまとうのは、真っ黒なローブ。彼女は、僕にいきなりこう尋ねました。 「シチュー作れる?」  …………へ?  彼女の正体は、『森の魔女』。  誰もが崇拝したくなるような魔女。とんでもない力を持っている魔女。魔獣がわんさか生息する森を牛耳っている魔女。  そんな噂を聞いて、目を輝かせていた時代が僕にもありました。  どういうわけか、僕は彼女の弟子になったのですが……。 「うう。早くして。お腹がすいて死にそうなんだよ」 「あ、さっきよりミルク多めで!」 「今日はダラダラするって決めてたから!」  はあ……。師匠、もっとしっかりしてくださいよ。  子供っぽい師匠。そんな師匠に、今日も僕は振り回されっぱなし。  でも時折、大人っぽい師匠がそこにいて……。  師匠と弟子がおりなす不思議な物語。師匠が子供っぽい理由とは。そして、大人っぽい師匠の壮絶な過去とは。  表紙のイラストは大崎あむさん(https://twitter.com/oosakiamu)からいただきました。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

冒険者ではない、世界一のトレジャーハンターになる!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」宝船竜也は先祖代々宝探しに人生を賭けるトレジャーハンターの家に生まれた。竜也の夢は両親や祖父母のような世界1番のトレジャーハンターになる事だ。だが41年前、曾祖父が現役の時代に、世界に突然ダンジョンが現れた。ダンジョンの中でだけレベルアップしたり魔術が使えたりする上に、現れるモンスターを倒すと金銀財宝貴金属を落とす分かって、世は大ダンジョン時代となった。その時代に流行っていたアニメやラノベの影響で、ダンジョンで一攫千金を狙う人たちは冒険者と呼ばれるようになった。だが、宝船家の人たちは頑なに自分たちはトレジャーハンターだと名乗っていた。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

処理中です...