左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ

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購買部の仕入れ先

思い出の品

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 涼太は購買部の方を見た。

 ヒョウが笑って手を振っているが、涼太は、

「壁に例のお札が貼ってあるだけじゃん」
と言う。

 彼の目には白い壁と例のお札しか見えていないようだった。

 逆に今の菜乃には、それが見えないのだが。

「なんでこれ、また貼ったんだよ」
と言いながら、涼太はお札をはがそうとする。

「いや、待って。
 はがさないでっ」
と菜乃は止めた。

 これとあの左左左右右左左の呪文(?)により、ふたたび、ここに来れた気がしていたからだ。

「そのまま貼っておいて。
 それがなくなると、もう購買部に来れなくなる気がするから」

 そんなことを言っても、信じてもらえないだろうと思ったが。

 菜乃……とこちらを振り向いた涼太が言う。

「わかったよ、菜乃っ。
 ここにヒミツの購買部があるんだなっ?

 それがお前の妄想だとしても、俺は付き合うぜ!」

 涼太は、力強くこぶしを突き上げた。

「いい友だちだなあ」

 ほんとうにそう思っているのかわからない口調で、笑ってヒョウが言う。

「そうだ。
 そんなお前のお友だちにこれを売ってやろう」

 ポン、と片手でヒョウがカウンターを叩くと、そこに古びた枕が現れた。

 昔ながらのそばがらの枕のようだった。

 青いチェックの枕の上に、白いカバーがかけてある。

 なんだか懐かしい感じのする枕だ。

 ほのかにおばあちゃんちのような匂いまでする。

「これは、『授業が一瞬で終わる枕』だ」

 ヒョウはその枕をポンポンと叩いて言う。

「授業中に使え。
 ぐっすり眠れて一瞬で終わるぞ」

「……たぶんそれ、ほんとうに一瞬で終わりますよね。
 廊下に立っとけと言われて」

 菜乃は枕を持ち上げ、見えないだろうなと思いながら、涼太に向けてみた。

「涼太。
 これ、『授業が一瞬で終わる枕』だって。

 買う?」

 だが、そこでいきなり、涼太が叫んだ。

 うおおおおおおおおっ、と声を上げながら、涼太はその枕をつかむ。

「じっちゃんの枕だっ。
 どこから現れた~っ?」

「じっちゃんの枕?」

「ああ。
 このカウンターを越えると、ふつうの人にも、店の品が見えるようになるようだよ。

 まあ、ここに現れるモノすべて。
 もともとはお前たちの世界のモノだから」

 え? と菜乃は振り返ったが。

 ヒョウの声が聞こえない涼太はまだ、叫んでいる。

「うちのじっちゃんの匂いがするっ。
 間違いないっ」

「そうなの?」

「じっちゃんちに泊まりに行くとき、いつも横で寝ているじっちゃんが使ってた枕だっ。

 思い出の枕なんだが。

 じっちゃん、この間、新しい枕、オーダーメイドの店で作って。

 今まで愛用していた枕を捨てたんだ」

 こんなところで再会するとはーっ、と涼太は枕をかかげ、叫んでいる。

「えーと、捨てたってどこに?」

「ゴミ捨て場じゃないのか?」
と涼太が言うので、菜乃はヒョウを振り向き、訊いてみた。

「……あの~。
 もしや、ここの品って、ゴミ捨て場から拾ってきてるんですか?」

 まあ、それなら、確かにいらないモノだよな、と思ったのだが。

 ヒョウは、
「そんなわけあるか」
と言う。

 
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