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呪いの(?)雛人形
うちの孫がファンなんです
しおりを挟むあらためて切り株のようなテーブルと椅子に座り、乃ノ子たちは地元の銘菓と冷たいお茶をいただいた。
いやまあ、自分も地元なので、よく食べてるものだったのだが。
パイ生地にあんこが入ったその銘菓は、やっぱり美味しかった。
会長が語り出す。
「いつも正月明けにお雛様の展示をはじめて、四月頭にしまってるんですけどね。
何故だか、今年はしまえなくて」
やはりしまえない呪いだったのか。
っていうか、呪われてしまえないってどういう状態? と乃ノ子が思ったとき、会長が言った。
「でも、そんなこと知れたら、みんな気味悪がって来てくれなくなると思って。
今年は虫干しも兼ねて長めに出してるんですと言い繕っていたのですが、もう夏です」
そう会長は眉をひそめる。
「さすがに怪しまれて、テレビ局が取材に来てしまったんですよ。
断りましたが。
それが……ほら、なんて言うんでしたっけ?
アイドルの……。
うちの孫がファンなんですけど」
「ジュンペイです」
と言ったイチに、そうそう、と会長が思い出せて笑顔になる。
「そのジュンペイさんのお耳に入ったみたいで。
ジュンペイさんがその手のお仕事をされてる方を紹介してくださると」
……ジュンペイさん経由の話だったのか、と乃ノ子が思ったとき、会長が笑って言った。
「そういえば、この間、うちの孫が小学校にジュンペイさんの下敷き持ってって取り上げられたってギャアギャア言ってましたよ」
「そうなんですか。
じゃあ、今度、ジュンペイにサインでも持ってこさせますよ」
とイチが言うと、会長は、
「ありがとうございま……」
と笑顔で言いかけ、
「え? 持って来させる?」
と訊き直していた。
イチにとっては、ただの弟なので、ついそう言ってしまったのだろうが。
今度サインもらってきますよ、ならともかく。
アイドルにサインして持ってこさせるというのはどうなんだろうな、と乃ノ子は苦笑いする。
だが、なるほど。
スタッフから話を又聞きしたジュンペイを通じて、ふんわり来た依頼だったから、詳しい内容がわからなかったんだな、と乃ノ子が思ったとき、会長が、これを、とイチに謝礼を渡そうとした。
「いえ、ちゃんと仕事が終わってからで結構です」
とイチは断っていた。
上手くやれるか不安なのだろうか。
いや、この人の場合、事情によっては、あやかし側についてしまい。
雛人形は呪われたまま、ということもあるかもしれないから。
それでそう言っているのかもしれない、と乃ノ子は思った。
「うちもあちらの座敷に雛人形を飾っています。
ご案内しましょう」
と会長は立ち上がる。
手入れのいい坪庭の横の廊下を歩きながら乃ノ子は、
それにしても、このおじさん、何処かで見たような、と思っていた。
「こちらです」
と襖の前で振り向き笑った会長の笑顔に、乃ノ子は唐突に思い出し、
「あっ」
と叫ぶ。
察したように、イチが乃ノ子の足を軽く蹴った。
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