17 / 321
一年生・春の章
シルフクイーンの祝福②
しおりを挟むミネルウァのアリーナでは、一年A組の生徒がぞろぞろと集まり、全員が教科書と杖を用意している。
「こんな複雑な魔法陣、上手く組めないって。絶対失敗する……スライムしか召喚出来ない……」
セオドアは教科書を見ながら呟き理論を頭に入れるが、召喚魔法は特殊で繊細な魔法なため、不安げに項垂れた。
「別にドラゴン召喚しろって言われてる訳じゃねーだろ。何がそんなに難しい?」
「出来る奴は出来ない奴の気持ちが分かんないって本当なんだなー」
セオドアは深く溜息をしながら恨めしそうにルイを見ると、ルイはセオドアの肩を叩き笑う。
「悪かったよ。教えてやるって」
「ありがたいけどさー、これって結構センスも必要じゃねー?フィンちゃんやった事ある?」
「んーん?初めてやるよ、できるかな」
フィンは杖を持ちウキウキしながら横に揺れる。
「召喚魔法って古代魔法とか特級魔法までは行かないけど、呼び出すモノによってはアホみたいに魔力使うから、ガス欠には気を付けろ」
ルイはピンッと指を立てながらフィンに詰め寄る。
「魔力補助の腕輪もあるし大丈夫!(本当は魔力を借りるんだけど!)」
フィンは左腕を掲げ、碧色の魔石が埋め込まれた腕輪を見せると、二人はじっとそれを見つめる。
「え、なんかスゲーのつけてるね」
セオドアは目を凝らしその腕輪を観察する。魔石の奥で光る無数の魔法陣を認識すると、驚きの表情を見せた。
「ルイ、もっと奥の方見てみろよ、すごくねー?」
「どれどれ」
ルイも同じように目を凝らし魔石を覗くと、セオドアと同じ反応を見せた。
「コレはどういう……何でこれだけの魔法陣が安定して魔石に定着して失活しないんだ!?」
ルイはフィンの左腕を掴み、腕輪を指差し驚きの表情を浮かべる。
「うーん、分かんない!(やっぱこれすごいんだ……)」
「分かんないっておま……」
ルイが問い詰めようとすると、授業開始の合図である鐘が鳴り響き、だだっ広いアリーナの中心にリリアナとジャスパーが箒で飛んで現れると、生徒達は自ずと整列し出す。
「(あ、せんせーじゃん……)」
セオドアはドキッと胸を高鳴らせジャスパーを見るも、一瞬目が合っただけで、ジャスパーはすぐに目を逸らし無表情のままだった。
「(そっけないなぁー)」
セオドアは余裕そうにフッと軽く笑みを浮かべると、やれやれと両手を広げる。
「はぁーいこんにちはぁー、午後は召喚魔法の時間ですよー」
おっとりとした声色で話すリリアナに、生徒一同は注目した。
ここ数ヶ月は座学が多かったため、実践の授業に緊張する者、高揚感を感じている者、不安げな者、反応は様々だったが、リリアナの抱擁感のある雰囲気は周囲を和ませていく。
「今日は実際に魔獣を召喚する授業になりまぁーす!ここには未来の大召喚士がいるかもしれませんねぇーフフフ」
「…………」
横にいたジャスパーは杖を取り出し、アリーナの最も中心の位置に移動し始めた。
「召喚魔法は、危険を伴うこともありますのでぇー!念のため、アリーナ全体に防御魔法をかけたいとおもいまぁーす。ではランベール先生、お願いしますねー」
「はい」
ジャスパーはリリアナの合図で杖を頭上に上げると、アリーナの上から徐々に防御魔法が生成されていく。
何やらブツブツと呪文を唱えているが、それは生徒の耳には届かないぐらいの声量だった。
「完了しました。それでは私は邪魔にならない場所で待機しております」
ジャスパーは軽く礼をしてその場を少し離れていく。
「はぁーい。ありがとうございますねー!(あら?ずっといてくれるのかしらー?ま、いっかぁー)」
ジャスパーが頃合いを見て戻ってくるのではなく、その場にいる様子だったのをみたリリアナ。一瞬疑問に思うも、すぐに授業を始めた。
385
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜
たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話
騎士団長とのじれったい不器用BL
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる