【完結】大魔法師様は運命の恋人を溺愛中。〜魔法学院編〜

みるくくらうん

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一年生・夏の章

ローザリオンの稲妻王子②

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「お前がシルフィーの心配か?珍しいな。中途半端な諜報員を送るのは逆に危険だと思ってな。シルフィーは最強の剣士だが、変装と諜報もすこぶる上手い。何かあっても帰ってこれるだけの強さもある」

「連絡は取れているんだろうな」
 
「あぁ。何回か鳩を寄越してきたが、やはりクラウスは自分にドラゴンの血を定期的に補充しているのは間違いないらしい。元々変化、憑依が得意な奴だ、ドラゴンの血のせいで能力が格段に上がっている。油断はできないな」


 アレクサンダーは綺麗な金髪を揺らしながら、秘めたる闘志を瞳に宿らせリヒトを真っ直ぐと見据えた。


「ドラゴンの血に適応したというのか……ふん、望むところだ。どんなに怪しい動きをしようとも、アカシックレコードで見破れる」


 リヒトは強気の発言をするが、アレクサンダーは根底にある懸念を見抜き目を細める。


「……お前はこのローザリオン王国の重要ポストである前に、俺の大事な友人だ。一人で全てをやろうとするなよ?お前の可愛い恋人だって、巻き込まないように最大限働きかけることだって出来る」


 アレクサンダーはニカっと笑みを浮かべ指を鳴らすと、快晴であるはずの空から、一筋の白い雷が落ち、大きな雷鳴が響渡った。
 王族はハイエルフで魔力が高い他に、指を鳴らすだけで特殊属性の“雷“を簡単に生み出す特殊能力があり、アレクサンダーは特に多くの雷を生み出す王子として幼少期から注目をされていた。



「”ローザリオンの稲妻王子“は健在か、頼もしい。だがお前は国のことを考えろ。フィンは案外、鍛えればかなり強くなる」


 リヒトはふっと軽く笑みを浮かべる。


「そうそう、フィン君!素晴らしいじゃないか、無詠唱でシルフクイーンを呼ぶなんて。あの厄介な精霊、大召喚士でも手を焼くと聞くが」

「そもそもフィンはシルフクイーンの祝福を受けている」

「な、何!?祝福ぅ!?風の女王から祝福なんて現存する文献でも見たことがない」


 アレクサンダーは興奮した声色でさらに続ける。


「フィン君はミネルウァに通っているのだろう?庶民と聞いたが、そんなに優秀だったのだな」

「エリオットから聞いてないのか、第一位だぞ」


 リヒトの言葉に、アレクサンダーは目を丸くする。


「ん?なんの第一位だ」

「ミネルウァに決まっている」


 アレクサンダーは口をあんぐりと開け、疑うようにリヒトを見て眉を顰める。


「は?あの虫も殺せなさそうな可愛い子が?ほわーっとしててそうは見えないぞー?」


 アレクサンダーは、パーティーの時に対面したフィンを思い出しうーんと唸りながら目を閉じる。


「悪口かお前」


 リヒトがじとっとした視線をアレクサンダーに投げると、アレクサンダーはそれを受け流すように笑みを浮かべる。


「いや、俄かに信じがたいだけだ。てっきりうちで預かってるルイ・リシャールが第一位かと思っていた。あのおぼっちゃまは優秀な御子息だからなぁ」


 アレクサンダーはキリッとした顔でリヒトを見つめる。


「俺も聞いた時には驚いたさ……エリオットによれば、筆記は常に満点、教科書を忘れても一語一句間違えずに暗唱するという芸当も見せていたらしい。頭の良さに重きを置くミネルウァではかなり評価が高いんだ。実技のテストも本番になれば難なくこなしているようだし」


 普段フィンは学校での自分の行動やテストの結果をリヒトに伝えることはあまりないため、エリオットから様々な逸話を聞くことが多い。
 本人が伸び伸びと学校を楽しんでいるため、無理をして成績をキープしている訳ではないと分かっている以上、リヒトも特に口を出すことはなかった。


「教科書を暗唱?とんでもない子だな。まぁ……お前が惚れた相手だからな、只者ではないと思っていたが。庶民出身でそんなに能力が高いなら、お前も安心じゃないか」


 アレクサンダーは嬉しそうに人差し指を立てて無邪気に笑う。


「……だが、魔力が多くないことはもちろんだが、そもそもの性格が心配だ。お人好しで騙されやすく、他者の悪意にかなり鈍感でな。頭はいいが、その鈍感さのせいで対応が遅れる」


 リヒトは上を見上げ、憂いた表情を浮かべた。


「ほーん。確かにパーティーでは薬を盛られ、ミスティルティンでは自白剤を盛られてる。そう言えば、ミネルウァでは密室までついていってしまってるし、隙が多いのは確かだろう。パーティーに関しては王城での出来事だし、俺の監督責任でもあるが……」


 アレクサンダーが申し訳なさそうに頬を掻くと、リヒトは軽く溜息を吐く。


「何にせよ、そこら辺は気をつけるよう念を押す。パーティーのような場所も極力避けるから、誘ってくれるなよ」

「えー。せめて仲の良いメンバーを集めて飲むのは来てくれよ。シルフィーが帰ってきたら計画する」


 アレクサンダーは、子供のように口を尖らせて目を潤ませながらリヒトを見るも、リヒトは真顔のままだった。
 アレクサンダーは昔から王子としての威厳を持ち合わせてはいるものの、気を許した者に対しては人懐っこい。


「……考えておく」


 リヒトの”考えておく“は前向きな回答なため、アレクサンダーはニカッと歯を見せて嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「ところで話は変わるが、フィンは自分が可愛いとは微塵も思っていないところが危ない。あの性格だと悪い虫がつきやすいし、俺は何よりそれが心配だ……あんな可愛い子を外に出すのも本当は嫌なんだが、何かいい方法はないか?下心のある者を寄せつけない道具とかないのか?」


 リヒトはあくまで真剣な様子で、一大事と言わんばかりに俯き目を閉じてそう語った。アレクサンダーは一瞬目を見開くと、大声で笑い出す。



「あっはっはっはっは!お前、エリオットの言った通りだな。フィン君のことになるとIQが10ぐらいになってるぞ。ちなみにそんな道具はないし、あったとしてもお前が近づけなくなるだろ」

「…………」


 リヒトは眉を顰め苛ついた表情でアレクサンダーを睨むと、アレクサンダーはやれやれと首を横に振る。


「まあ怒るなって。そんなお前が見れる日が来るとは思わなかったって事だよ。俺は嬉しいの」


 アレクサンダーの屈託のない笑みに、リヒトは何も言わず「ふん」と鼻を鳴らす。



「まぁ、フィン君は可愛い小動物って感じだもんな。あの純粋な瞳で見つめられたら、意志が弱い奴はコロッといきそうだ。あぁそうだ、お前が万が一にでも死んだら俺がもらっ」

「オイ」


 リヒトがアレクサンダーの発言を低い声色で制すと、窓の方へ杖を向け、上空に魔法陣を出したかと思えば、そこから黄色い雷が大きな音を立てて降り注ぐ。


「誰がお前になんかやるか。王族だからと言って調子に乗るなよ我儘金髪」

「おいおい!ローザリオンの稲妻王子に、そんなへなちょこ雷で喧嘩売る気かァ!?」


 アレクサンダーも対抗するように指を何度も鳴らして雷を呼ぶと、リヒトも負けじと杖を振って雷魔法を発動させる。
 騒ぎを聞きつけた衛兵が部屋に突入すると、睨み合っている二人が立っていた。


「王子!それに大魔法師様、一体何を!?外は大騒ぎになっております故、何卒お戯れはお辞めいただきますよう……」


 衛兵が切実にそう言うと、興奮していた二人は冷静になり咳払いをする。
 窓の外を見ると、雷に打たれた木が倒れたり、地面が抉れたりと散々な事になっていたため、二人は少し引いた目でお互いを見た。


「ふん、これぐらいで許してやるか」


 アレクサンダーが得意げに腕を組むと、リヒトは鼻で笑う。


「こっちのセリフだ。俺はもう行くぞ、王族特務の仕事が忙しいからな」

「お国のために働け働け」

「……」


 リヒトは紅茶を飲み干すと、銀髪を靡かせながら扉の方へ向かった。
 アレクサンダーは顔をそちらに向けながら口を開く。


「今回の件、ご苦労だった。また何かあればすぐに言え」

「ああ」


 多く語らずとも、信頼関係がある二人。
 リヒトが退室したあと、アレクサンダーはワインを飲みながら物思いに耽る。


「大魔法師にとうとう最大の弱みが出来たってわけか……これから大変だな」


 アレクサンダーは大きく溜息を吐きつつも、リヒトの変化に嬉しさを覚え笑みを浮かべた。
 そしてそのまま立ち上がり、雷の被害がどのくらいなのか窓を眺め確かめる。


「あー、思ったより派手にやっちまったな」


 二人が荒らした土地は、強力な魔力によって荒らされ、しばらくの間は園芸術師が敷地の緑化に手をこまねいたという。






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夏の章、思ったよりも長引きました~!

ということで、次回から秋の章に入ります!
秋の章のストックがまだ溜まっていないので、しばらく毎日更新が難しいです!
申し訳ない。。

新作が公開になっておりますので、そちらの方もよろしくお願いします!
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