【完結】大魔法師様は運命の恋人を溺愛中。〜魔法学院編〜

みるくくらうん

文字の大きさ
204 / 321
一年生・秋の章<それぞれの一週間>

アイスクリームとフレンチトースト①

しおりを挟む


「んー……」


 早朝に目を覚ましたフィンは、ゆっくりと起き上がって寝ぼけた表情で欠伸をする。


「あれ……?いつの間に寝たんだろう?もう朝になってる……!!」


 フィンはお酒を1、2杯飲んだ後の記憶が全く無いことに気付き動揺を示した。


「でも、ちゃんと着替えてる。リヒトかなー?」


 綺麗に寝間着を着ていることに気付くと、おそらくソファーで眠ってしまった自分を、帰宅したリヒトが着替えさせてベッドに寝かせてくれたのかと思ったフィンは申し訳なさそうな表情を浮かべてベッドを出た。


「お酒って怖いなぁ……記憶なくなっちゃうなんて。でもちょっとしか飲んでないのに」


 べッドから出たフィンは、リヒトの姿を探す。
 リビングルームに行くと、リヒトの姿は無いが代わりに昨晩飲んでいたチョコレート酒の瓶だけが置いてあった。


「あれれ!?半分も減ってる!?僕こんなに飲んじゃったんだ」


 残量を確認したフィンは目を丸くし記憶を辿るが、いつの間にそんなに飲んだのだろうと眉を顰めながらリビングルームを出る。すると同時に、シャワーを浴びたリヒトが廊下に現れた。


「リヒト!」


 フィンは石鹸の香りを放つリヒトに駆け寄る。
 リヒトは予想外にフィンの登場に驚きつつ、頭を撫でながら口を開いた。


「フィン、もう起きたの?まだ寝てていいのに。具合は悪くない?」


 リヒトはシャワーを浴びて再びベッドルームに戻ろうとしていたのか、早すぎるフィンの起床に動揺を示しつつ体の心配をする。


「目が覚めちゃったの。ちょっと頭痛いかも……」

「あれだけ強いお酒をたくさん飲んだんだ、頭も痛くなるよ」

「あのねリヒト、僕記憶なくて……あんなに飲んじゃったなんて信じられないの。ベッドに運んでくれてありがとう」


 フィンがそう言って笑みを浮かべリヒトを見上げると、リヒトは複雑そうな表情をする。


「……もしかして、覚えてない?昨日のこと」


 リヒトはフィン両頬をすりすりと撫でながら首を傾げた。


「うん……?お酒を二杯ぐらい飲んでる時の記憶はあるんだけど、そこから先はあんまり覚えてないの」


 フィンは考えるそぶりを見せながら目を閉じ「うーん」と唸ってもう一度思い出そうとするが、全くと言って良いほど記憶が抜けていたため諦めたように笑う。
 リヒトは少し複雑そうに、されど少し安心した表情でフィンを見下ろすと、ぎゅっとフィンを抱き締めた。


「フィン。もう一人であんなに飲んではダメだよ……?強いお酒を半分も飲んでたし、ソファーでぐっすり眠っててびっくりした。しばらくは俺がいないところで飲むのは禁止」

「う、うん……ごめんなさいっ」


 フィンは申し訳なさそうな表情でリヒトの言葉に頷く。


「分かってくれたならいいよ。酒は失敗して覚えていくとは言うけど、フィンには失敗させたくないな」


 リヒトはそう言ってフィンを抱き締め続ける。
 強く抱き締められたことで、フィンは何かを思い出したように目を見開く。

 脳裏によぎる微かな記憶。

 リヒトが涙を流す光景だ。


「あ……そうだ。あのね、リヒトの夢を見たの」

「俺の夢?」

「うん。リヒトが泣いてる夢……僕のことぎゅーってしながら」


 フィンが切なげにそう言うと、リヒトは目を見開き明らかな動揺を見せる。


「……そっか。随分と変な夢をみたんだね」


 リヒトはクスッと軽く笑みを浮かべてフィンを見下ろすと、フィンは途端にじっとリヒトを見上げる。


「リヒト、目がちょっと腫れてるよ……?」


 フィンは心配そうにリヒトの顔を引き寄せると、愛らしい眼差しでじっと見つめ続け、瞼に優しくキスをした。


「大丈夫……?」

「あ、あぁ」


 リヒトは目を細め、少し戸惑いながら返事をした。


「それに、ちょっと元気ない……よね?」


 いつも通りのリヒトではあるが、なんとなく雰囲気が違う。
 フィンはリヒトの顔をじっと見つめ続けると、相手が動揺したように目を逸らし、不自然に顔を背けた。


「気のせいだよ……。ほらフィン。起きたならシャワーを浴びておいで。昨日はそのまま寝てしまったからね。
タオルとか着替えは置いてあるから」


 リヒトは話を逸らすようにフィンにシャワーを促すと、フィンは「うん……」と不思議そうに返事をしてシャワールームを目指す。
 

「(なんだか今日のリヒト、ちょっと変かも)」


 リヒトの背を見つめたフィンだったが、そのままシャワーを浴びに行った。
 フィンが背を向けたところで、リヒトは少し振り返りフィンの背を見送る。


「(泣いて目が腫れるなんて子供か俺は……)」


 リヒトは顔を顰めながら執務室に逃げ込み、指を鳴らして氷を出す。


「フィンがシャワーから出る前に、この情けない目はなんとかしないとな」


 悲しいとか、嬉しいとか、そういった単純な感情で流した涙ではない。
 どうしようもなく溢れるフィンへの愛情と、呆れるほど止まらない黒い独占欲が入り混じり、そんなぐちゃぐちゃな愛情を受け入れて欲しいと願う身勝手な自分を優しく包みこんだフィンへの懺悔の涙だった。


「(昨日のことは、内緒にしておこう……)」


 フィンを気が済むまで愛し尽くした夜。フィンが眠ると、その穏やかで多幸感を感じさせる寝顔がリヒトの感情を甘く揺さぶっていた。そしてその寝顔を愛おしく思いながら、無意識に泣きそのまま眠ってしまったことは覚えている。
 だからなのか、目の腫れはしつこくて、なかなか去ってはくれなかった。


「はぁ……」


 優しいフィンだから、きっとまだ自分を心配している。鈍感な恋人だが、変に鋭い時があって、それが今発揮されているのだ。
 数十分経った後、フィンはタオルで髪を拭きながら執務室をノックする。リヒトは慌てて氷を消すと、ふぅっと一息吐いて口を開いた。


「……おいで。随分と早いね」


 リヒトがそう声をかけると、フィンは扉を開き、同じ石鹸の匂いを放ちながら勢いよくリヒトに抱き付く。
しおりを挟む
感想 160

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

処理中です...