あなたの罪はいくつかしら?

碓氷雅

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#8-①

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 明朝、日が昇る前に彼らは王城を取り囲んでいた。すべての入口を塞ぎ、突撃の準備が整ったと赤いのろしが上がったのは昼前。扇動部隊は正面から入り、警備がそちらに集中したことを確認し、他の待機していた部隊は突撃した。そう時間はかからず、王座の間に戦士たちは集った。

「何者だ! 衛兵! 出遭えっ出遭え!!!」
「へいかぁ…今日の分はまだ、ですかぁ」
「わたしも、もらっておりませぬ…陛下ぁ…ふふっ」

 今日に限ってパルテン王の傍には幾度にもクスリを重ねて摂取した者のみが仕えていた。臣下を始め、給仕のメイドやフットマンに至るまで少なからず禁断症状を発症している。今までこんなことはなかったはずなのに、族が入ってきている今、抵抗もできない状況であることをパルテン王は不思議に思うことすらできない。それでも目の前の絶望がわかるほどに理性は残っている。しかし、これがいけなかった。

「お、お前たち…この際どうでもいい。お前らもこの煙を吸うがいい。いい気分になれるぞ? ほれ、どうだ? 国王として許可してやろう」
「…かような男に、オーレリアは惚れたのか…。なんとむなしいことか」

 戦士たちの先頭に立つひと際屈強な身体の男は言う。鍛えられた腕から伸びる拳が固く握られる。色黒なその姿はこの国では珍しく、彼らを認識した人間は得体の知れない恐怖に打ち震えるしかなかった。それも数十人といる中のほんの数人であったが。

「ん? 何の話だ」
「思い出してもらわねば復讐義にはなれないだろう。王よ。否が応でも思い出してもらうぞ」

 背に抱える厚手の刀を鞘から抜き構えた男は、その刃をパルテン王の首にあてた。冷たい感触、ピリピリという痛みでパルテン王は青ざめ、身体を震わせる。

「ま、まて。やるっ! なんでもやろう! 望みを言うがいい。金か? 宝石か? 権力か?」
「望みはただひとつ。死んだ妹と同じだけの絶望を…王、お前に見せることだ」
「ひっ…!」

 正面の城塞から左右の副門、さらには隠し通路の全てに至るまで占拠することが出来たと、パルテン王の生殺与奪を握る男に伝えられる。険しい表情は変えず、男は大きな声で宣言した。

「ここに王城は、わがヒラリオンが一族、ヒパラテムの管理下に置く! 先に配った魔法球は持っているな? 魔法球は人の嘘を見抜く。オーレリアに危害を加えたものには相応の報いを! 容赦はいらない! 部外者とわかった者は離宮に丁重につれていけ! 間違っても危害は加えるな! いいな!!」

 わああっ、と野太い男たちの声で王座の間は震える。クスリで意識が朦朧としている者たちはその声でほとんどが泡を吹いて倒れた。実用的な筋肉をその身に惜しげもなくつけている男たちに、王城の臣下たちは抱えられ縛られて一か所にまとめられる。

 のろしが上がってわずか30分足らず。王城は陥落した。
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