神は気まぐれ

碓氷雅

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お久しぶりですねぇ?

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 嫌いだ。その笑顔が嫌いだ。いや、その顏すらその瞳すらその存在すら気に食わない。婚約者とは言われたが、腹の底でぐつぐつと煮えたぎる憎悪のせいで、横に立たれるのも我慢ならなかった。

 だが、屈する表情は胸がすくだろうとは思った。生まれた時から高い地位にいた女だ。いつも微笑を浮かべて何が起きても動じないその顏が、悔しそうに歪むかと思うと幾分ましというものだ。

 だから身分の低い、身目の良い女を選んで横に据えた。別に好いてはいなかったが、都合のいい感じに馬鹿で、そこが可愛くてそれなりに愛してやった。

『アンナ様にいじめられました…うっ…殿下ぁ』

 ある日、ネリアンはそう泣きついてきた。

あの女がそんな低俗なことをするわけがない。ネリアンの言うことが嘘だということは少し調べればわかることだった。

 だが俺は道化を演じるかのごとく、ネリアンを肯定してあの女を責めた。会議終わりに世間話として、ちょっとした紳士の集まりにちょっとした小話として、あの女がどれだけ非道な人間かを広めていった。

「…婚約破棄をここに宣言する!!」

 そう言った俺にあいつは動揺のひとつも見せず、ただ、目を瞑っただけだった。やせ我慢をしているのかと思ったが、再び見せたその瞳には人間らしい感情は一片もなかった。

 苦しい…胸が押されて呼吸がうまくできない…。

 何とか目を開ければ、砂の山がこちらへと流れてきていた。俺はどうやら岩のような重いもので押しつぶされているようだった。

 どうにかこの重たい何かから抜け出そうと身体を動かしてみるが、どうしてか地面に縫い付けられたようにうまくいかない。

「お久しぶりですねぇ? ルシファー様。どかしてあげましょうか? 今のあなた様の力では時間がかかりすぎますでしょう?」
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