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14.さあ、行こうか
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「戦争…? ですか?」
軍を統括する家に生まれたとはいえ、まだ見ぬ戦争に恐怖し、身体が震えた。
「ああ。そんな血生臭いものじゃないから安心して」
そう言うレオナルドの表情には狂気じみたものを感じた。ばれぬように固唾を飲み込む。
「ひとつ、これだけは信じてほしい」
そう言ってレオナルドは私の前に跪いた。反射的に後ずさった身体を、レオナルドは私の手を取ることで阻止する。
にこりと微笑むその顔は、最初のそれとは違い、心の底からの笑みだと思った。
「僕は君が好きだ。大切にしたいと思っている。…忘れないでくれ」
「え…」
何を言われているのか、しばらく分からなかった。頭の中でレオナルドの言葉を何度か反芻して、ようやく理解できた。それと同時に、顔が熱くなる。
何年も婚約者だったルークからもそんな言葉をもらったことはない。耐性がついていないのも致し方ないと自分を正当化した。
「ほんとは君の言葉も欲しいところだけど、今は時間がない。さ、エスコートさせてくれるかい?」
「…もちろん。よろしくお願いします」
よかったと無邪気に笑うレオナルドは私の手の甲にキスをした。心臓が耳のすぐ近くにあるのかと思うほどに、うるさい。
レオナルドをみつめ返す度胸は私にはなくて窓の外に目をやれば、スコールもいつの間にか止み、外は雨によって洗われたかのようにすがすがしい街並みが続いていた。
お父様とお母様、ノアの三人が戻ってきたところで、婚約パーティーが今夜あるのだと聞かされた。お母様の顔色が、乗り物酔いとは別に悪くなっているような気がして少し心配になった。
「ここから王都までは三時間ほどなんだ。さあ、行こうか」
私はレオナルドと馬車に乗り、お父様たちは来るときに乗ってきた馬車に乗って王都へ走らせた。
レオナルドとの会話は、話題が尽きず楽しい。今のストラテ王国の政策や貿易のこと、隣国の情勢など、国王ならば当然の情報量だけれど新鮮だった。元皇太子のルークは何の根拠もなく、取り巻きからの言葉のみで自分が優秀だと信じて疑わず、そのくせ難しい話と分かればどこかへ消える。そんな男と比べてレオナルドは…、と思えばすぐに申し訳なく思った。
趣味や好きな食べ物の話になると、意外にも似通っているところがあって心の中で喜んだ。恋人との会話とはこんなものなのだろうかと、胸が高鳴るのを感じつつレオナルドの言葉に耳を傾けた。
軍を統括する家に生まれたとはいえ、まだ見ぬ戦争に恐怖し、身体が震えた。
「ああ。そんな血生臭いものじゃないから安心して」
そう言うレオナルドの表情には狂気じみたものを感じた。ばれぬように固唾を飲み込む。
「ひとつ、これだけは信じてほしい」
そう言ってレオナルドは私の前に跪いた。反射的に後ずさった身体を、レオナルドは私の手を取ることで阻止する。
にこりと微笑むその顔は、最初のそれとは違い、心の底からの笑みだと思った。
「僕は君が好きだ。大切にしたいと思っている。…忘れないでくれ」
「え…」
何を言われているのか、しばらく分からなかった。頭の中でレオナルドの言葉を何度か反芻して、ようやく理解できた。それと同時に、顔が熱くなる。
何年も婚約者だったルークからもそんな言葉をもらったことはない。耐性がついていないのも致し方ないと自分を正当化した。
「ほんとは君の言葉も欲しいところだけど、今は時間がない。さ、エスコートさせてくれるかい?」
「…もちろん。よろしくお願いします」
よかったと無邪気に笑うレオナルドは私の手の甲にキスをした。心臓が耳のすぐ近くにあるのかと思うほどに、うるさい。
レオナルドをみつめ返す度胸は私にはなくて窓の外に目をやれば、スコールもいつの間にか止み、外は雨によって洗われたかのようにすがすがしい街並みが続いていた。
お父様とお母様、ノアの三人が戻ってきたところで、婚約パーティーが今夜あるのだと聞かされた。お母様の顔色が、乗り物酔いとは別に悪くなっているような気がして少し心配になった。
「ここから王都までは三時間ほどなんだ。さあ、行こうか」
私はレオナルドと馬車に乗り、お父様たちは来るときに乗ってきた馬車に乗って王都へ走らせた。
レオナルドとの会話は、話題が尽きず楽しい。今のストラテ王国の政策や貿易のこと、隣国の情勢など、国王ならば当然の情報量だけれど新鮮だった。元皇太子のルークは何の根拠もなく、取り巻きからの言葉のみで自分が優秀だと信じて疑わず、そのくせ難しい話と分かればどこかへ消える。そんな男と比べてレオナルドは…、と思えばすぐに申し訳なく思った。
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