婚約破棄? あなたごときにできると思って?

碓氷雅

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13.いいじゃないか

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「…それのどこが問題なんだ? いいじゃないか」

 その親書によれば、国交・貿易により両国に利益があり、軍事力を奪われたとはいえ、それを考慮しても利点の方に天秤は傾く。その利益がルークの婚約ごときで手に入るのだ。安いものだと俺は思った。口角が緩みそうになるのを必死にこらえる。

「ああ…憂慮すべきはストラテ王国でのルークの自由か」

「さようでございます。下手をすると国交悪化につながりかねません」

「ならば、そこに条件を付加すればいいのではないか?」

「どのような条件でございましょう?」

「ストラテ王国におけるルークの行動範囲を制限すること、でどうだ」

「なるほど。その行動範囲はこちらで考えましょう。殿下には後ほど親書をストラテ王国国王へ書いていただきたく存じます」

「よかろう。あとで持ってきてくれ」

 粛々と進められ、滞ることなく早々にその場は解散した。

 元老院に皇太子と認められたとはいえ、帝国議会の第二皇子派はこれに反対するだろう。自分たちの思い通りに政が立ち行かなくなってしまうから。

 とはいえ、その勢力も今や風前の灯火だ。ルークが隣国の大使たち、各国の神官たちが集まる夜会で「自分は男色家である」と宣言してしまったのだ。後継ぎの望めぬ皇太子など、どんなに優秀だろうが役に立たない。

 その場を見たとき、生まれて初めてルークによくやったと言いたくなった。現皇帝の意向のみで皇太子になったルーク。幼少期はお父様の愛を一身に受けているから、お父様からの愛情を諦めてからは努力もせず自分は優秀だと信じる態度が気に食わず、おれはルークが大嫌いだった。

 腹違いとはいえ、弟として愛しいと思えたことはない。

 そのルークがやっと、帝国の為に役立ってくれるのだ。盛大に追い出さねば。おれは嬉々として親書の筆をとった。
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