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第1章 幼少期

お披露目パーティー 1話

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部屋を出てしばらく歩き、やっと食堂へ着いた。

体感五分は歩いた。絶対。

宮って言っても普通?にひとつの屋敷だし。大きすぎるんだよ!

屋敷のなかを歩き回っているだけでも充分運動になると思う。

用意された椅子に座りながら心のなかで愚痴をこぼす。

ご飯を食べるのは母上が来てからだ。


少し待つと母上がきた。

「レイハルト、ごめんなさい。待たせましたわね」

「俺もさっき来たばかりなので全然待っていないですよ。大丈夫です」

母上に謝られたので慌てて笑顔で大丈夫だと伝える。

母上が席に着き、手を組む。

俺もそれに倣って手を組み、母上と同時に口を開く。

「「作り手、天の恵みに感謝を」」

この文言を言っているからか、この国の貴族たちに選民思想の人は滅多にいないらしい。

幼い頃から言っていれば平民に感謝の気持ちがわくのも当然か?

悪く言えば洗脳みたいなものかな。

そのあとは黙々と食事を取るだけ。

俺と母上の食事はだいたいそうだ。母上はこうやって育てられてきたんだろうな…

この国全体がそうなことはないと思う。

多分王族だからってだけ。

王族は窮屈だな…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

昼食を食べ終え、一度部屋に戻りまた着替える。

この後は五歳になった貴族子息子女のお披露目パーティーだ。

洗礼式以上に念入りに着飾らせられる。


着替えが終わり、後は時間になるまで待っているだけだ。

手持ちぶさたになった俺は部屋にあった本を読むことにした。

この2年間で文字は完璧になった。
ジャスミン宮にある図書館の本も既に半分以上読み終えた。

ジャンルを構わずに読んでいたから、多方向にわたって知識は増えた。

まぁありがたいことだな。

これは、『魔法属性論文集』か。

結構分厚いな。


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「レイハルト殿下、お時間になりました」

ふと声が聞こえ、振り返るとマリナが扉の近くに立っていた。

いつの間にか時間になっていたらしい。

この本とっても興味深かったな。

「わかった。ありがと」

そう答え、本をもとあった場所に戻す。

マリナがドアを開けてくれたため、そのまま廊下へ出る。

少し、いや、5分以上歩いて玄関ホールに着くと、父上と母上が揃っていた。

「お待たせしてすみません」

「大丈夫だ」

謝罪の言葉を口に出すと父上に優しく微笑まれた。

…「シュレインと第2王妃はまだ入らしていないのですか?」

シュンの姿が見えないことに不安を覚え父上に質問する。

「あぁ、まだ来ていない」

…何かあったのかな。

そう心配していると、父上にまたも抱き上げられた。

「心配か?ならそとで待っていよう」

俺の思考を読んだ風にそう言われたので思わず

「はい!」

と声を大きく上げてしまった。

そとに出て少しして、イベリス宮の方から馬車がやってきた。

2人が馬車から降りてくる。

「申し訳ありません。準備に手間取ってしまいまして…」

第2王妃、ロベリア様がそう謝罪する。

シュンの方を向くと、少し暗い表情をしていた。

「シュレイン?」

声をかける。

俺たちは人前では「シュレイン」「兄上」と呼び合うと決めていたから、その呼び方で呼ぶ。

「兄上…」

どうしたんだろう。なんか少し怯えているみたいだ。

「シュレイン」

少し考えていると、父上がシュンの名前を呼んだ。

シュンは少しビクッとして父上を見る。

すると父上は俺と同じ様にシュンを抱き上げた。

シュンの驚いた表情を見て納得した。

殴られると思ってたんだ。シュンは。

まだ前の恐怖がシュンを縛り付けている。

俺もそうだ。

未だに撫でられるというときに、手を伸ばされるが、身体が強張る。

多分一生慣れることはない。

そんな思考をしてる間に父上の馬車に乗せられる。

父上のこの行動にはもう慣れた。

そのため、大人しく父上の膝の上に乗せさせて貰う。










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