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2.ハゲてないから
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思いもしなかった九弥の浮気疑惑にムカムカしながらベランダで洗濯物を干した。部屋に戻ると、起きた九弥が、私のドレッサーの鏡に向かってお辞儀の姿勢でつむじを突き出している。
「は? 何してるの?」
と、聞くと、
「ね、僕ハゲてるかな?」
聞き返された。私は、
「え?」
と、狼狽えてしまった。
「ほら、ここ……」
私の動揺に気づかない九弥が、今度はこちらに頭を突き出してくる。目の前にある頭頂部から目を逸らせると、九弥が右手にピンク色のヘアブラシを握っている。
「それ、私の!」
「だって、ちゃんと見たくて」
「私のヘアブラシは使わないで、っていつも言ってるでしょ」
と、強めの口調になると、顔を上げた九弥が頬を膨らませた。
「愛がない」
その彼に、一応大人の男なんだから……と、私は呆れてしまう。
「愛ならあるわよ。いつも九弥のパンツ私のと一緒に洗ってるし、九弥が私の歯ブラシ間違って使っても、私怒らないし」
一気にそう言うと、九弥は手にしたヘアブラシに視線を落とした。そしてもの問いたげに私を見る。捨てられた子犬みたいな視線に私は(うっ)とたじろいだ。
「だけど、ヘアブラシだけは別なの!」
強めに言うと、九弥の眉がハの字にさがった。
とにかくヘアブラシを取り返し、そのブラシ面を見る。私と違う明るい髪色の毛が数本、くしにからみついていた。切ない。
「やっぱり、ハゲてる?」
と、九弥が再度聞いてきて、私は唇を窄めた。
「そんなことないよ」
「桜智さんが怒るのは、僕がハゲてるって意識したくないからじゃないの?」
「意識してないし」
「でも最近風呂場にヘアケアグッズ増やしたよね?」
「べ、別に? うちの部署でそういうのを試すのが流行っているから、波に乗っただけよ」
と、言い訳すると「フゥン」と九弥が頷いた。
「あの頭皮マッサージする熊手みたいなやつ、気持ちいいよね」
「それなら良かった。じゃ、私は仕事行ってくるね」
変なことを口走る前に出勤してしまおうと、私はそそくさと部屋を出た。後ろ手に閉めたドアノブに手をかけたまま思わずため息を吐く。
だって、だってね……、役者志望なのに薄毛ってちょっとカッコつかない。いいおじさんならともかく九弥はまだ二十代だもの。
ほんと、ちょっと薄いかな~? って、程度だからね?
「は? 何してるの?」
と、聞くと、
「ね、僕ハゲてるかな?」
聞き返された。私は、
「え?」
と、狼狽えてしまった。
「ほら、ここ……」
私の動揺に気づかない九弥が、今度はこちらに頭を突き出してくる。目の前にある頭頂部から目を逸らせると、九弥が右手にピンク色のヘアブラシを握っている。
「それ、私の!」
「だって、ちゃんと見たくて」
「私のヘアブラシは使わないで、っていつも言ってるでしょ」
と、強めの口調になると、顔を上げた九弥が頬を膨らませた。
「愛がない」
その彼に、一応大人の男なんだから……と、私は呆れてしまう。
「愛ならあるわよ。いつも九弥のパンツ私のと一緒に洗ってるし、九弥が私の歯ブラシ間違って使っても、私怒らないし」
一気にそう言うと、九弥は手にしたヘアブラシに視線を落とした。そしてもの問いたげに私を見る。捨てられた子犬みたいな視線に私は(うっ)とたじろいだ。
「だけど、ヘアブラシだけは別なの!」
強めに言うと、九弥の眉がハの字にさがった。
とにかくヘアブラシを取り返し、そのブラシ面を見る。私と違う明るい髪色の毛が数本、くしにからみついていた。切ない。
「やっぱり、ハゲてる?」
と、九弥が再度聞いてきて、私は唇を窄めた。
「そんなことないよ」
「桜智さんが怒るのは、僕がハゲてるって意識したくないからじゃないの?」
「意識してないし」
「でも最近風呂場にヘアケアグッズ増やしたよね?」
「べ、別に? うちの部署でそういうのを試すのが流行っているから、波に乗っただけよ」
と、言い訳すると「フゥン」と九弥が頷いた。
「あの頭皮マッサージする熊手みたいなやつ、気持ちいいよね」
「それなら良かった。じゃ、私は仕事行ってくるね」
変なことを口走る前に出勤してしまおうと、私はそそくさと部屋を出た。後ろ手に閉めたドアノブに手をかけたまま思わずため息を吐く。
だって、だってね……、役者志望なのに薄毛ってちょっとカッコつかない。いいおじさんならともかく九弥はまだ二十代だもの。
ほんと、ちょっと薄いかな~? って、程度だからね?
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