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5.私は犬と暮らしています
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土曜の早朝、私はいつものようにリードで繋いだキュウと一緒に歩いていた。今日は少しだけ遠出する。最近できた大きな公園。その園内の広々とした芝生広場をテレビで見た時から行こうと決めていた。
「たくさん走ろうね」
と声をかけると、キュウが「ワン!」と元気よく返事する。
こう言うタイミングの良さは度々で、まるでキュウと会話している気持ちになる。相性が良いって事だろうけど。
朝早いからまだ私たちだけかと思っていたら、五月の透明な風がふわりと、犬と人の気配を運んできた。
行き着いた芝生の広場で犬を遊ばせていたのは、百合と生垣さん、それから少し成長した桜ちゃんだった。
「こんなところで会うなんて! 奇遇ですね」
「百合さんにもらったこの子、キュウって名付けたの」
と話していると、生垣さんが私に聞いた。
「もしかして、九弥くんから一文字もらったのかな」
「ええ」
生垣さんの言ったとおり、キュウの名前は九弥の九からだ。
「遠くに行くなよ!」と、生垣さんが桜ちゃんたちの方へ駆けてゆく。私は百合と二人でベンチに座った。
「桜ちゃん、大きくなりましたね」
「えぇ」
朝の澄んだ光がキラキラと眩しい。桜ちゃんと犬たちが駆け回る姿は生そのものだった。私は九弥を想ってちょっと泣きそうだった。
「桜、私と生垣の子なんです」
「えっ」
百合の告白に驚いて、私は彼女の横顔を凝視した。
「十五歳で産んで……。歳が離れているから、スキャンダルになるでしょ。ずっと隠してました。でも、公表します。大変な事になるだろうけど……あの子の成長を考えたら、ちゃんと家族でなくちゃ」
「前に九弥さんに怒られました。親だろって」と、彼女が立ち上がる。行ってしまった百合と入れ違いにキュウが戻ってきた。膝に乗せると、
「よかったなぁ」
と、私のすぐそばで声がした。
「誰?」
見回しても誰もいない。男の声だった、聞き覚えのある……。
頭に浮かんだ思いつきに私は苦笑した。まさか!
「クシュン! ゔ~」
キュウのくしゃみだ。けど、その語尾の「ゔ~」って、は? 何それ?
「キュウ、もう一度言ってごらん?」
「きゅう~」
視線を逸らしとってつけたように鳴いた子犬を、私は睨んだ。
「わざとらしい……」
「ギクッ」
「今「ギクッ」って言った? 言ったよね!」
マンションに帰って、すぐリビングでキュウをお座りさせる。私も彼の前に正座して、じっくり問い詰めた。
結果、彼は白状した。
自分は、松田九弥の転生した姿であると。
「生まれ変わったけど、犬の寿命は短いから。また悲しませちゃう。ごめんね、桜智さん」
私は情けなく耳を垂れた彼を見下ろした。すると、耳と耳をつなぐ線上の真ん中につむじがあった。結構毛が長い。耳の毛もふわふわだ。私は感心して言ってしまった。
「2323になってよかったね~」
パッと子犬が不機嫌な瞳で私を見上げる。思わず「ふふふっ」と声に出して笑ってしまった。
私は犬と暮らしています。
〈了〉
「たくさん走ろうね」
と声をかけると、キュウが「ワン!」と元気よく返事する。
こう言うタイミングの良さは度々で、まるでキュウと会話している気持ちになる。相性が良いって事だろうけど。
朝早いからまだ私たちだけかと思っていたら、五月の透明な風がふわりと、犬と人の気配を運んできた。
行き着いた芝生の広場で犬を遊ばせていたのは、百合と生垣さん、それから少し成長した桜ちゃんだった。
「こんなところで会うなんて! 奇遇ですね」
「百合さんにもらったこの子、キュウって名付けたの」
と話していると、生垣さんが私に聞いた。
「もしかして、九弥くんから一文字もらったのかな」
「ええ」
生垣さんの言ったとおり、キュウの名前は九弥の九からだ。
「遠くに行くなよ!」と、生垣さんが桜ちゃんたちの方へ駆けてゆく。私は百合と二人でベンチに座った。
「桜ちゃん、大きくなりましたね」
「えぇ」
朝の澄んだ光がキラキラと眩しい。桜ちゃんと犬たちが駆け回る姿は生そのものだった。私は九弥を想ってちょっと泣きそうだった。
「桜、私と生垣の子なんです」
「えっ」
百合の告白に驚いて、私は彼女の横顔を凝視した。
「十五歳で産んで……。歳が離れているから、スキャンダルになるでしょ。ずっと隠してました。でも、公表します。大変な事になるだろうけど……あの子の成長を考えたら、ちゃんと家族でなくちゃ」
「前に九弥さんに怒られました。親だろって」と、彼女が立ち上がる。行ってしまった百合と入れ違いにキュウが戻ってきた。膝に乗せると、
「よかったなぁ」
と、私のすぐそばで声がした。
「誰?」
見回しても誰もいない。男の声だった、聞き覚えのある……。
頭に浮かんだ思いつきに私は苦笑した。まさか!
「クシュン! ゔ~」
キュウのくしゃみだ。けど、その語尾の「ゔ~」って、は? 何それ?
「キュウ、もう一度言ってごらん?」
「きゅう~」
視線を逸らしとってつけたように鳴いた子犬を、私は睨んだ。
「わざとらしい……」
「ギクッ」
「今「ギクッ」って言った? 言ったよね!」
マンションに帰って、すぐリビングでキュウをお座りさせる。私も彼の前に正座して、じっくり問い詰めた。
結果、彼は白状した。
自分は、松田九弥の転生した姿であると。
「生まれ変わったけど、犬の寿命は短いから。また悲しませちゃう。ごめんね、桜智さん」
私は情けなく耳を垂れた彼を見下ろした。すると、耳と耳をつなぐ線上の真ん中につむじがあった。結構毛が長い。耳の毛もふわふわだ。私は感心して言ってしまった。
「2323になってよかったね~」
パッと子犬が不機嫌な瞳で私を見上げる。思わず「ふふふっ」と声に出して笑ってしまった。
私は犬と暮らしています。
〈了〉
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