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あれだけきっぱり断ったのに、ついてくるとは思わなかった。
背中に男の気配を感じながらマンションのドアを開け、思い切り目の前で鉄の扉をバタンと閉めてやった。
(もう、二度と近づかないで!)という意思がこれで伝わっただろう。家までついてくるなんてあの男どうかしてる……。これでわからなければ、次にモーションかけてきた時点で「セクハラです!」って社内コンプライアンス室に駆け込んでやろう、と心に誓う。
「あー、疲れた。ただいまぁ」
と、言いながらコートを床に落とし脱いだスーツをソファに放り投げる。室内は暖房が効いているから寒くはない。部屋を暖めて待っていたのだろう。もはや身につけているものはサテンのブラジャーとパンティのみになったいよ子が寝室のドアを開けようとすると、
「いや、女性の独り暮らしには過ぎたくらいの大きさですねぇ。ここ、なんLD Kですか?」
と間の抜けた声が背後から降ってきた。
振り返ると、先ほドアの向こうにバイバイしたはずの黒い男が立っていた。
驚きすぎて声も出せない。
のびあがって三和土を見ると、あのぼろぼろの革靴がきちんと揃えて自分のヒールの横に並べられていた。志信のスニーカーが脇に押しのけられている。
志信、というのは目下の所の同居人で、モダンアートの世界では若いなりにそこそこ名が知れている存在なのだとか。
志信がこの部屋に入り浸って三ヶ月が経つ。夏には上海で個展があるといつだったかベッドの中で彼がゴニョゴニョと言っていたが、紗倉には興味のない話だった。
どう調べたか知らないが、彼のマネージャーと名乗る女から職場にちょいとょい「彼を返しなさい!」と電話がかかってきたが一切無視した。
返すもなにも、志信が出て行きたがらないからしょうがないのだ。
背中に男の気配を感じながらマンションのドアを開け、思い切り目の前で鉄の扉をバタンと閉めてやった。
(もう、二度と近づかないで!)という意思がこれで伝わっただろう。家までついてくるなんてあの男どうかしてる……。これでわからなければ、次にモーションかけてきた時点で「セクハラです!」って社内コンプライアンス室に駆け込んでやろう、と心に誓う。
「あー、疲れた。ただいまぁ」
と、言いながらコートを床に落とし脱いだスーツをソファに放り投げる。室内は暖房が効いているから寒くはない。部屋を暖めて待っていたのだろう。もはや身につけているものはサテンのブラジャーとパンティのみになったいよ子が寝室のドアを開けようとすると、
「いや、女性の独り暮らしには過ぎたくらいの大きさですねぇ。ここ、なんLD Kですか?」
と間の抜けた声が背後から降ってきた。
振り返ると、先ほドアの向こうにバイバイしたはずの黒い男が立っていた。
驚きすぎて声も出せない。
のびあがって三和土を見ると、あのぼろぼろの革靴がきちんと揃えて自分のヒールの横に並べられていた。志信のスニーカーが脇に押しのけられている。
志信、というのは目下の所の同居人で、モダンアートの世界では若いなりにそこそこ名が知れている存在なのだとか。
志信がこの部屋に入り浸って三ヶ月が経つ。夏には上海で個展があるといつだったかベッドの中で彼がゴニョゴニョと言っていたが、紗倉には興味のない話だった。
どう調べたか知らないが、彼のマネージャーと名乗る女から職場にちょいとょい「彼を返しなさい!」と電話がかかってきたが一切無視した。
返すもなにも、志信が出て行きたがらないからしょうがないのだ。
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