毒婦と死神

たみやえる

文字の大きさ
3 / 5

3

しおりを挟む
「実は、志信くんの関係者の方から依頼を受けまして」
「え。あなた、ウチの社員でしょう?」
 下着しか身につけていないことも忘れて驚いてしまった。
「あー、副業です」
 軽い口調で言われて、なんと返してよいかわからなくて、いよ子は目をパチパチさせた。
 まぁ、確かにウチは副業を禁止してはいない。
 恋人を別れさせる副業ってなんなのだろう。別れさせ屋、なんて仕事があるのかあって成立するのかよくわからなかった。あるとしたら探偵か。副業が探偵なんて社員、小説や二時間ドラマの中でしか存在し得ないと思うのだが……。
「あーっ、いよ子さん帰ってるじゃん。って何? コイツ」
 寝室からふらりと出てきた志信がリビングで向かい合うふたりに、途中から声を荒らげた。いよ子を背後に隠して黒い男を睨みつける。
「篠原サンからのご依頼です。すみやかに彼女の元へお戻りください。承諾いただけない場合は強硬手段に切り替えることになります」
「かなえとはもぅ終わってるんだけどなー」
 ガシガシと頭を掻きむしりながら、志信が不機嫌そうに唸り声をあげた。
 志信のマネージャーの名は、篠原かなえ、というのだった。
「とにかく、かなえの所には帰らない。オジサン、勝手に入るなよ。出て行け」
「お分かりいけませんか。個展は一ヶ月後でしたね。アトリエにも姿をお見せにならないので、スタッフの皆さんも困っていらっしゃるそうですよ?」
「個展は……今まで書き溜めてきたやつがあるだろーが」
「クライアントには新作を出すと契約してあるとか」
「古くても新しくても、俺の作品だ。足りないならスタッフの何人かに描かせてここへ持ってこいよ。サインだけはしてやるよ。金になればいーんだろ」
「呆れました。なんと投げやりな。あなたは美の探求者ではなかったのですか。あなたの作品はあなたの手を経なければ生ませてもらえないのですよ?」
 突然志信が背後にいたいよ子を自分の体の前に抱き直し、ブラの肩紐をつるん、と外した。いよ子は慌てて胸をかかえるようにして落ちかけたブラを押さえる。だがそのブラを剥ぎ取ってポイと背後に放り投げた志信の骨張った指が見せつけるようにいよ子の胸と腰をはい回る。
「……、オジサン、これから俺たちイイコトすんの。別に見られてもいいけどさぁ。気が散るから出てってくれない? 警察呼ぶよ? 不法侵入で訴えるぜ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

妻が通う邸の中に

月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

処理中です...