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—————
———
——……兄、この子生きてる。
——こっちはもうダメだ。
——おカネなくなっちゃった。もともと少ししか持ってこなかったし……。
——仕方ない、帰ろう。
——いやだ。せっかく逃げてきたのに。
——でも、この子を助けなきゃ。それにこの……も、このままは良くない。
——わかった。……たち、離れ離れになったりしない?
——するもんか。だって……とは……だろ。
—————
———
「おい、おい……っ」
激しく揺すぶられて、(え? 何?)とぼんやりしているうちにいきなり往復ビンタされた……結構、容赦なく。
「痛っ!」
と、叫びながら上半身跳ね上げて起きた途端、今度はおでこに衝撃を受けて、
「~~っく!」
マジ目の奥で星が飛び散った。
痛い。
あんまり痛いと声も出せなくなるよね?
おかげでさっきまで見ていた夢の内容がスッ飛んだ。
ひりつく部分を直接触らないようにおでこを押さえて下を見れば、ベッドサイドに私と同じように額を抑えしゃがみこんでる男性の姿。こいつか。私の可憐なおでこと出会い頭にお見合いしちゃった相手は。部屋の照明は低く落とされていて、足元を照らす間接照明のオレンジの明かりがじんわりと私に覚醒をうながしてくる。ん? この人のスーツ、見たことあるなぁ……。
「……あれ? 氷雨先輩」
「あれ? ……じゃない! あわてて迎えに来れば、ぐーすか寝てるし! いきなり頭突きしてくるし! イズっちゃんデコ硬すぎだし!」
「くくっ……マジ面白い……っ」
そんな私たちを見て、氷雨先輩の後ろで肩を震わせ、お腹を抱えて笑っているのは、
「あ! キス魔」
としか呼びようがない、さっき私のファーストキスを奪いやがった男の人。
だって名前聞いてないもん。許可なく乙女にキスしてくる不届き者には(サングラスにあってるし、先輩より背が高いし、すらりとした体型がモデルか芸能人かってくらいカッコイイけど!)キス魔呼ばわりで充分なのだ。うん。
そしたら急に立ち上がった氷雨先輩が(先輩のおでこも赤く腫れていた)、私に覆い被さってきた。
首筋に鼻を突っ込んでクンクンされる。
(ちょっと! 恥ずかしいから!)先輩の肩を押して引き離そうとするのに、押し返されてかえって密着されてしまって……顔が真顔でちょっとコワい。
ようやく離れてくれたと思えば、今度は私が思わずキス魔って呼んだ男の人の胸元に顔を近づけ、やっぱりクンクン……って。それじゃ変態!
「同じ匂い……ムカつく」
と、眉を寄せる先輩にキス魔が、
「すみません……やむを得ず伊豆川さんにキスしました。気を失われたので僕の借りている部屋で休んでもらっていたのです」
と言った。
瞬間、
「はぁっ!?」
と肩を怒らせた先輩が怖い顔で私とキス魔のこと交互に見てきたけど、
(そっか。それで私ベッドで寝てたのかー)
と、私は納得、納得。
(ちょっとカッコいいし、キス、気持ちよかったし。下手な人に奪われるよりよかったかもしれないなぁ)
なーんて、ちょっぴり思ったり……あくまでもちょっぴり、だけどねっ!
「お前なぁ!」
と声を荒げて先輩がキス魔に掴みかかる。確かにキス魔の襟元を掴んだはずの先輩の手がするりと空を切った。
それはね……キス魔がまるで虫網を掻い潜る蝶のようなフワッとした動きで飛び掛かってきた先輩をよけたから。
多々良を踏んだ先輩が、がるる……と犬だったら唸り声をあげてるだろう表情で睨みつけてもキス魔は知らん顔。
(なんていうか……すっごい度胸ある人!)
って、私は妙に感心してしまった。
すると、「仕事でマンションに戻れないときよくこのホテルを使うので……」と言ったキス魔がめちゃくちゃキザな仕草でサングラスを外した……。
「レンのパシリの王子様っ!?」
思わず声を上げて指差してしまった私に王子様がふっと笑って見せる。
(カァッ……カッコイイー!)
……けど、私なんかにキスしちゃってよかったの?
目を丸くする私の隣で先輩もすっごく驚いたんだろう、
「……あ゛あ?」
と、それ以上二の句をつげないでいる。
そんな私たちの様子に、王子様はアハハと笑い出した。
なかなか笑いが止まらない。笑い上戸なのかな。
先輩が何故か私にガンを飛ばしてきた。
(おお、怖っ)って思う半面、(ドキっ♡)胸を射抜かれてしまって。
やっぱり先輩の眼力に私は弱いのだ。
目に見えない矢が私の胸に突き立っている錯覚。
なんともないはずの自分の胸を押さえずにはいられない。
うっ……。いつも締まりのない表情してる先輩が……素直に認めよう、これはこれでカッコいい。
そんなこんなでベッドの上で身悶えしていたら、ムッとした表情の先輩に「なんともないなら行くぞ」と強引に起こされ手を引っ張られ……帰りの車に押し込まれた。
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——……兄、この子生きてる。
——こっちはもうダメだ。
——おカネなくなっちゃった。もともと少ししか持ってこなかったし……。
——仕方ない、帰ろう。
——いやだ。せっかく逃げてきたのに。
——でも、この子を助けなきゃ。それにこの……も、このままは良くない。
——わかった。……たち、離れ離れになったりしない?
——するもんか。だって……とは……だろ。
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「おい、おい……っ」
激しく揺すぶられて、(え? 何?)とぼんやりしているうちにいきなり往復ビンタされた……結構、容赦なく。
「痛っ!」
と、叫びながら上半身跳ね上げて起きた途端、今度はおでこに衝撃を受けて、
「~~っく!」
マジ目の奥で星が飛び散った。
痛い。
あんまり痛いと声も出せなくなるよね?
おかげでさっきまで見ていた夢の内容がスッ飛んだ。
ひりつく部分を直接触らないようにおでこを押さえて下を見れば、ベッドサイドに私と同じように額を抑えしゃがみこんでる男性の姿。こいつか。私の可憐なおでこと出会い頭にお見合いしちゃった相手は。部屋の照明は低く落とされていて、足元を照らす間接照明のオレンジの明かりがじんわりと私に覚醒をうながしてくる。ん? この人のスーツ、見たことあるなぁ……。
「……あれ? 氷雨先輩」
「あれ? ……じゃない! あわてて迎えに来れば、ぐーすか寝てるし! いきなり頭突きしてくるし! イズっちゃんデコ硬すぎだし!」
「くくっ……マジ面白い……っ」
そんな私たちを見て、氷雨先輩の後ろで肩を震わせ、お腹を抱えて笑っているのは、
「あ! キス魔」
としか呼びようがない、さっき私のファーストキスを奪いやがった男の人。
だって名前聞いてないもん。許可なく乙女にキスしてくる不届き者には(サングラスにあってるし、先輩より背が高いし、すらりとした体型がモデルか芸能人かってくらいカッコイイけど!)キス魔呼ばわりで充分なのだ。うん。
そしたら急に立ち上がった氷雨先輩が(先輩のおでこも赤く腫れていた)、私に覆い被さってきた。
首筋に鼻を突っ込んでクンクンされる。
(ちょっと! 恥ずかしいから!)先輩の肩を押して引き離そうとするのに、押し返されてかえって密着されてしまって……顔が真顔でちょっとコワい。
ようやく離れてくれたと思えば、今度は私が思わずキス魔って呼んだ男の人の胸元に顔を近づけ、やっぱりクンクン……って。それじゃ変態!
「同じ匂い……ムカつく」
と、眉を寄せる先輩にキス魔が、
「すみません……やむを得ず伊豆川さんにキスしました。気を失われたので僕の借りている部屋で休んでもらっていたのです」
と言った。
瞬間、
「はぁっ!?」
と肩を怒らせた先輩が怖い顔で私とキス魔のこと交互に見てきたけど、
(そっか。それで私ベッドで寝てたのかー)
と、私は納得、納得。
(ちょっとカッコいいし、キス、気持ちよかったし。下手な人に奪われるよりよかったかもしれないなぁ)
なーんて、ちょっぴり思ったり……あくまでもちょっぴり、だけどねっ!
「お前なぁ!」
と声を荒げて先輩がキス魔に掴みかかる。確かにキス魔の襟元を掴んだはずの先輩の手がするりと空を切った。
それはね……キス魔がまるで虫網を掻い潜る蝶のようなフワッとした動きで飛び掛かってきた先輩をよけたから。
多々良を踏んだ先輩が、がるる……と犬だったら唸り声をあげてるだろう表情で睨みつけてもキス魔は知らん顔。
(なんていうか……すっごい度胸ある人!)
って、私は妙に感心してしまった。
すると、「仕事でマンションに戻れないときよくこのホテルを使うので……」と言ったキス魔がめちゃくちゃキザな仕草でサングラスを外した……。
「レンのパシリの王子様っ!?」
思わず声を上げて指差してしまった私に王子様がふっと笑って見せる。
(カァッ……カッコイイー!)
……けど、私なんかにキスしちゃってよかったの?
目を丸くする私の隣で先輩もすっごく驚いたんだろう、
「……あ゛あ?」
と、それ以上二の句をつげないでいる。
そんな私たちの様子に、王子様はアハハと笑い出した。
なかなか笑いが止まらない。笑い上戸なのかな。
先輩が何故か私にガンを飛ばしてきた。
(おお、怖っ)って思う半面、(ドキっ♡)胸を射抜かれてしまって。
やっぱり先輩の眼力に私は弱いのだ。
目に見えない矢が私の胸に突き立っている錯覚。
なんともないはずの自分の胸を押さえずにはいられない。
うっ……。いつも締まりのない表情してる先輩が……素直に認めよう、これはこれでカッコいい。
そんなこんなでベッドの上で身悶えしていたら、ムッとした表情の先輩に「なんともないなら行くぞ」と強引に起こされ手を引っ張られ……帰りの車に押し込まれた。
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