総務部人事課慰労係

たみやえる

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「イズっちゃんさ、結婚して借金チャラにしよーとか思ってたんだろ?」


 ぎく、と動きを止めた私の後ろから今度は和雨さんが。


「呆れましたね。僕らが先約なのに」


「へ?」

と小首を傾げた私。振り返ると「カワイイですね♡」と和雨さんに頭を撫で撫でされた。ついでのようにするりと耳たぶを撫でられ「ひゃっ」と声をあげてしまう。


「鈍いよね~。俺たちのことあっさり忘れかけていたくらいだから、鈍いのは当たり前か」


 今度は近づいてきていた氷雨先輩に反対の耳たぶのこと指先ではむはむされて産毛が総立ちになった。


……ただでさえ弱い耳を両側から責められたら、動けなくなっちゃうの!


「兄さん、棘があります。それは、ハルカちゃんが今のご両親に大事に育てられてきた証拠でしょう? 寂しさを感じずにはいられませんが……」


 和雨さんが眉間に憂いを浮かべ空いた手で目頭を押さえる。氷雨先輩の表情も同時に曇る。


「え……いやあの、ごめんなさいっ。忘れてたつもりはなくて。ほんと全然気付いてなくて。あの時私を支えてくれたお兄ちゃん達と先輩達が結びつかなかっただけで」


 必死になって言い訳していて気がついた。私に顔を背けてうつむく二人の肩が小刻みに震えている。


「……」


 黙ったままでいたら、二人が顔をあげてこちらを見た。すると、ギョッと目を見張る二人のシルエットが水性ペンで描いた字の上に濡れたペットボトルを置いてしまった時みたいにぼんやり滲み出した。


「兄さん、泣かせないでよ」


「俺のせい?!」


 オロオロするにも程があるってくらい動揺している二人に向かって両手を広げ、抱きしめた。


 その時には恥ずかしながら鼻水も洪水を起こしてグチュグチュで、口からは震える呼吸音しか出せないくらいの……つまり号泣しちゃったってことなんだけど。


 頭の中で、いろんな言葉がぐるぐる撹拌されて、結局、何も言葉にできなかった。


 二人の腕が私の背中に回される。


 ぎゅっと体を押し付けると私の体なんて二人の腕の中にすっぽりと入ってしまう。




……帰ってきたんだ。

って。


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