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と、和雨が先輩に顔を向けた。席は決まってる。二人が隣同士に座って私はその向かい側二人のちょうど真ん中に椅子を移動させてある。テーブルセットの椅子は四脚。私は中途半端にテーブルの横幅のマン真ん中を使っているから、哀れ、あぶれた四脚目の椅子は玄関で物置になっている。
和雨につられて私も先輩の顔を見る。はしばみ色の瞳にははっきり不満の色が浮かんでいた。理由のわからない私はドキリとして、
「あ、あのっ。先輩のこと、ハブにしたわけじゃないんですよ? それともお腹痛いとか、ですか」
と聞いた。すると、
「……ねぇ、イズっちゃん」
って、先輩が静かな声を出すから、余計緊張しちゃうじゃん。
「は、ハイ」
「和雨のことは呼び捨てなのに、何で俺のことはいつまで経っても先輩なんだよ」
——そっちか!
「だって、会社では先輩だし、社長じゃないですかー!」
「会社では、だろ。家では氷雨って呼べよ」
先輩が私に命令口調してくるのは珍しいことだ。慌てた私は、
「ひ……ひしゃめ……っ」
……舌を噛んでしまった。
——うぅっ。恥ずかしい!
ひりつく舌先に思わず涙目になった私は思わず、
「そっちこそ、何で二人の時は一緒にご飯食べないわけ!?」
と、ここ最近ずうっと胸に抱えていたモヤモヤを先輩にぶつけた。
なのに、なにその先輩の顔。〈何今更わかりきったこと聞いてくるんだ?〉って言いたげな、哀れみすら漂わせる視線を私に向けてきた。
「ものを食べるって言うのはさ、口を開けるだろ。歯とか舌とか見えるとムラムラするんだよ」
何だ、そりゃ。っていうか、言い方が、ム・カ・つ・く!
「食事をする相手にいつもムラムラしちゃうわけ? この変態」
「へ、変態~? バカ言うな。ムラムラするのはお前限定だっ」
と、言い合っていると、今度は頬に圧を感じた。それは先輩も同じだったようで、私たちはほぼ同時に圧を感じた方向に顔を向けると、
「二人でばかりいちゃつかれると、僕も妬けてきちゃうんだけどな」
テーブルに肘ついて私たちのこと見ている和雨の目が据わっていた。
「機嫌なおしてよ。ひ、氷雨っ、和雨っ」
ヤケクソ気味に私が二人のこと呼び捨てで声を張り上げると、目の前に座ったこの毛色の違う双子は顔を見合わせ「イシシ」と笑い合った。
「「じゃ、キスして」」
なんでハモるかなー。
仲良く唇を突き出してくる二人の頬にチョンチョンとキスすると、
「ま、ガキンチョにはこれが精一杯か」
「一度触れてしまったら、次の扉を開けるのは容易いものですよ、兄さん」
だって!
「次の扉って……?」
和雨の言葉の意味を理解できなかった私が反復すると、双子はまたも顔を見合わせ、色気たっぷりの微笑みを私に放ってきた!
じわっと、顔だけじゃなく全身に熱が走る。
あ、あ、あ……と声にならない私を見て二人が爆笑する。普段の私ならプリプリするところなのに、頭の芯を何か熱いもので握られたようになってしまっている私は怒る気力を振り絞れない。
「……わ、私にはまだ借金返済が残ってるから。それまでは清く正しく過ごさないとっ」
氷雨先輩が身を乗り出す。お互いの唇が触れそうなくらい近くで見つめられる。
「それって、関係ある?」
と言い、私の耳の薔薇色のピアスを突いてニヤリとしてきた。そしたら、氷雨同様、私の顔スレスレに顔を寄せてきた和雨に、
「ダメダメ、オレたちが本気になれば、いつだって清く正しくなくなっちゃうよ?」
と艶っぽく微笑まれて、もう失神寸前。
しかも和雨はそんな私の様子もお構いなし、先輩が触っているのと反対の、もう片方の耳にハマるピアスをいじってくる。サワサワゾワゾワとした刺激に耐えきれず、頭に血が集中してのぼせあがってしまった私はすっかり腰が抜けてしまった。
その後結局、このイケメン二人にソファまで抱き上げ移動させられた。仲良く並んで座った二人の膝の上で介抱されるって、傍目には天国に見えるだろうけど、何せ男のひとの膝、女と違って脂肪がないから(特にこの二人は余計な肉がついていない)寝心地がすこぶる悪い。
——あぁ、こんな毎日をこれから過ご菅田なんて……私、身体も心も持ちそうにないよ……。
顔がカッカと熱くて潤む視界。見上げれば二人のイケメンが心から心配している表情で私のこと見おろしている。
——神様、いるのなら、普通の幸せが欲しいです。
と胸の中でつぶやいてみたけど、神様が返事をするわけもなく。ホワホワとピンク色に霞む意識の中、私は、
(とりあえず、明日からまた、仕事ガンバロ……)
と、心に誓い、目をつむるのだ——。
〈了〉
和雨につられて私も先輩の顔を見る。はしばみ色の瞳にははっきり不満の色が浮かんでいた。理由のわからない私はドキリとして、
「あ、あのっ。先輩のこと、ハブにしたわけじゃないんですよ? それともお腹痛いとか、ですか」
と聞いた。すると、
「……ねぇ、イズっちゃん」
って、先輩が静かな声を出すから、余計緊張しちゃうじゃん。
「は、ハイ」
「和雨のことは呼び捨てなのに、何で俺のことはいつまで経っても先輩なんだよ」
——そっちか!
「だって、会社では先輩だし、社長じゃないですかー!」
「会社では、だろ。家では氷雨って呼べよ」
先輩が私に命令口調してくるのは珍しいことだ。慌てた私は、
「ひ……ひしゃめ……っ」
……舌を噛んでしまった。
——うぅっ。恥ずかしい!
ひりつく舌先に思わず涙目になった私は思わず、
「そっちこそ、何で二人の時は一緒にご飯食べないわけ!?」
と、ここ最近ずうっと胸に抱えていたモヤモヤを先輩にぶつけた。
なのに、なにその先輩の顔。〈何今更わかりきったこと聞いてくるんだ?〉って言いたげな、哀れみすら漂わせる視線を私に向けてきた。
「ものを食べるって言うのはさ、口を開けるだろ。歯とか舌とか見えるとムラムラするんだよ」
何だ、そりゃ。っていうか、言い方が、ム・カ・つ・く!
「食事をする相手にいつもムラムラしちゃうわけ? この変態」
「へ、変態~? バカ言うな。ムラムラするのはお前限定だっ」
と、言い合っていると、今度は頬に圧を感じた。それは先輩も同じだったようで、私たちはほぼ同時に圧を感じた方向に顔を向けると、
「二人でばかりいちゃつかれると、僕も妬けてきちゃうんだけどな」
テーブルに肘ついて私たちのこと見ている和雨の目が据わっていた。
「機嫌なおしてよ。ひ、氷雨っ、和雨っ」
ヤケクソ気味に私が二人のこと呼び捨てで声を張り上げると、目の前に座ったこの毛色の違う双子は顔を見合わせ「イシシ」と笑い合った。
「「じゃ、キスして」」
なんでハモるかなー。
仲良く唇を突き出してくる二人の頬にチョンチョンとキスすると、
「ま、ガキンチョにはこれが精一杯か」
「一度触れてしまったら、次の扉を開けるのは容易いものですよ、兄さん」
だって!
「次の扉って……?」
和雨の言葉の意味を理解できなかった私が反復すると、双子はまたも顔を見合わせ、色気たっぷりの微笑みを私に放ってきた!
じわっと、顔だけじゃなく全身に熱が走る。
あ、あ、あ……と声にならない私を見て二人が爆笑する。普段の私ならプリプリするところなのに、頭の芯を何か熱いもので握られたようになってしまっている私は怒る気力を振り絞れない。
「……わ、私にはまだ借金返済が残ってるから。それまでは清く正しく過ごさないとっ」
氷雨先輩が身を乗り出す。お互いの唇が触れそうなくらい近くで見つめられる。
「それって、関係ある?」
と言い、私の耳の薔薇色のピアスを突いてニヤリとしてきた。そしたら、氷雨同様、私の顔スレスレに顔を寄せてきた和雨に、
「ダメダメ、オレたちが本気になれば、いつだって清く正しくなくなっちゃうよ?」
と艶っぽく微笑まれて、もう失神寸前。
しかも和雨はそんな私の様子もお構いなし、先輩が触っているのと反対の、もう片方の耳にハマるピアスをいじってくる。サワサワゾワゾワとした刺激に耐えきれず、頭に血が集中してのぼせあがってしまった私はすっかり腰が抜けてしまった。
その後結局、このイケメン二人にソファまで抱き上げ移動させられた。仲良く並んで座った二人の膝の上で介抱されるって、傍目には天国に見えるだろうけど、何せ男のひとの膝、女と違って脂肪がないから(特にこの二人は余計な肉がついていない)寝心地がすこぶる悪い。
——あぁ、こんな毎日をこれから過ご菅田なんて……私、身体も心も持ちそうにないよ……。
顔がカッカと熱くて潤む視界。見上げれば二人のイケメンが心から心配している表情で私のこと見おろしている。
——神様、いるのなら、普通の幸せが欲しいです。
と胸の中でつぶやいてみたけど、神様が返事をするわけもなく。ホワホワとピンク色に霞む意識の中、私は、
(とりあえず、明日からまた、仕事ガンバロ……)
と、心に誓い、目をつむるのだ——。
〈了〉
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