アンバランサー・ユウと世界の均衡 第二部「星の船」編

かつエッグ

文字の大きさ
22 / 69
アンバランサー・ユウと世界の均衡「星の船」編

わたしだけ、変装になってない。

しおりを挟む
 「あたしらは、別に実技審査なんか受けなかったけど?」

 と、ジーナが不思議そうな顔できいた。


 「実績が十分なら、実技審査は必要ないですから」

 と、フェリシアさん。

 「それに、みなさんの場合、師匠が師匠ですからねえ……」
 「まあ、たしかにいきなりダンジョンに連れて行かれ、ルシア先生がヘイトで呼び寄せた、コボルドキング率いる軍団と戦ったり、クラーケンの相手をしたり、だもんね、あれが実技審査みたいなもんかも……」
 「えっ、それは……」

 フェリシアさんも驚いている。

 「ということは、今日の受験者というのは」
 「そうですね。ピンからキリまで。まだ、あまり実戦経験のない駆け出しもいますし、なにかの事情で十分なクエストをこなせなかったけど、実力はそれなりにあるので、評価する必要があるものとか」
 「なるほど」
 「まあ、まれに、実力はあるのですが、倫理的にギルドカードを与えてはいけないような連中もいて、そういうやからを門前払いするために行うこともありますが」
 「いいね、いいね、あたし、そういうの大好き! うう、来ないかな?」

 と、ジーナが嬉しそうにいった。



 控え室で支度を調えていると、ユウが

 「ねえ、ライラ、ジーナ」
 「なんですか?」
 「あんまり、ぼくたち、目立たない方が良いと思うんだよ」
 「いまさら、なにいってるんですか」
 「そうだよ、これで目立たないわけないじゃん」
 「それに、ユウさん、わたしたちがぶざまな姿をみせたら、ルシア先生の名前に泥を塗ることになりますからね!」
 「だね! あたしは全力でやるよ!!」
 「うん、それはそうだけど、ぼくに、良い考えがあるんだ」
 「へえ、どんな考えですか」

 そして。
 闘技場にあつまった冒険者をまえにして、ギルド長が熱弁をふるった。

 「実技審査参加者の諸君! 本日参加の君たちは、たいへん幸運です。
  たまたま、このギルドを訪れた、あの『雷の女帝のしもべ』が、なんと、特別に審査官をひきうけてくださったのです。
  多忙をきわめる彼らは、君たちが、優れた冒険者として今後活躍できるようにと、こころよく、無償でひきうけてくだっさたのであります!」
 「おおっ?!」
 「すげー!」

 参加者がどよめく。

 「なんか、かってにずいぶん話を盛っている感じがする……」
 「さすがギルド長ともなると、したたかだなあ」

 などとわたしたちは後ろで演説を聞いていた。

 「それでは、『雷の女帝のしもべ』のみなさん、どうぞ、いらして下さい!」

 演説がおわり、ギルド長が、わたしたちに手をふった。

 「しょうがないね、行こうか」
 「うう、果たし合い、楽しみ」
 「ジーナ、果たし合いは違うから」

 わたしたちは、ギルド長のうしろからさっそうと登場し、冒険者たちの前に立った!

 「えっ?」
 「えっ?」

 ざわついていた冒険者たちが、いっしゅんに静まる。

 「ユウさん……」

 わたしは小声で

 「これ、なにかないですか?」
 「いやー、そんなはずないよ。ぼくはいいと思うけど」
 「でも、なにか、みんな静まりかえってますよ」
 「ぼくらがかっこいいから、見とれてるんじゃないの?」

 とてもそうは思えない。

 ユウは、要はぼくたちだとわからなければいいんだからと、変装するように提案したのだ。
 変装なんていっても、急にできませんよ、と反論すると、だいじょうぶ、用意してあるから、そういって、例のから、いつこんなものを用意したというのか、次々におかしな小道具をとりだしてきた。
 そしてわたしたちが、今、どんな格好になっているかというと。

 まず、ユウ。
 頭に白い布をまいて(というらしい)色の付いた覆いを目の前につけて(、というらしい)なにか南国風のだぶだぶの服をきている。手には、ユウが使ったことなんかいちども見たことがない、革の鞭。

 怪しい。怪しすぎる。

 この格好、なにかモデルがあるんですか、と聞いたら

 「うん、

 と、わけのわからないことをいう。
 そういう人が、ユウの世界にはいるらしい。
 きっと、この「はりまお」という人は、向こうでも怪しい人なんだと思う。

 ジーナは。
 いちおう、剣士と言える格好をしているが、イリニスティスは腰に下げ、黒いマントをはおり、そして顔には、たてがみのついた獣の仮面をかぶっているのだった。

 「たてがみは、本来は女性にはないけれど、ジーナ、あったほうがかっこいいから、かんべんしてね。そうしないと、にならないし…」

 と、ユウは、わけのわからないことをいいながら、ジーナに謝っていた。

 「うん、いいよこれ! あたし獣人だから、なんかこれ、かっこ良くて、気合いが乗るよ!」

 ジーナは、なんと気に入ったようだ。

 そして、わたしはといえば。
 赤を基調とした、からだをおおう長衣に、要所を皮で覆い、靴はブーツ。
 そして手にはフレイル。
 頭には、王冠のようなティアラ。
 いちおう、目の周りだけをおおう皮のマスクをつけているが、これって
 
 「まんま、ルシア先生じゃないですか」
 「うん、ライラは女帝の後継者だからね、そういう感じでいいんじゃない?」
 「あたしだけ、変装になってないような気がする……」
 「そうかい、なら、もっとなにか、派手なのを考えた方がいいかなあ……ええと、いまから用意できそうなのは、そうだ、とか……」

 ユウが何事か不穏なことを考えはじめたのがわかったので、

 「いいです。あたしはこの格好でいきます!」

 あわててそう答えたのだった。

 「と、とにかく、諸君。まあ、その、『雷の女帝のしもべ』の方々にもいろいろと事情があるので、あまり気にしないで、とにかく、審査をはじめます!」

 われにかえったギルド長が、なんだか、微妙な言葉を発し、そして審査がはじまった。

 ユウが力を働かせ、わたしたちは、ふわりと宙を舞って、高い貴賓席から、闘技場の土の上に降り立った。
 ユウのターバン、ジーナの黒いマント、そしてわたしの髪が、ひらりとひるがえる。
 フレイルが、ジャランと鳴る。
 おもいっきり派手である。
 目立ちたくない、というユウの言葉は、いったいどこにいったのか。

 「おおーっ!」

 観客がどよめいた。観客といっても、むろん、みんなギルドの冒険者たちだ。一般人はいない。

 「では、まず、パーティ『虹の向こう』でてきて」

 そう告げられて、おずおずとでてきたのは、いかにも冒険者に成りたてです、という感じの四人組のパーティだった。男性剣士二人、男女の魔法使い、という構成だ。
 見るからに緊張している。

 「や、やあー」

 剣士二人が刀を構え、声をあげるが、切っ先は震えている。

 「さあ、どっからでもかかってきなさいよ!」

 イリニスティスを抜いたジーナが、一歩前に出て、両手をひろげ、宣言する。

 「うんうん、そうでなくちゃ。ゆけ、!」

 ユウが例によって、わけのわからないことをつぶやく。
 ジーナの目が黄金色に光る。

 「よおし、血祭りだ、フハハハ!」

 とイリニスティス。

 「ひぃっ」

 それをきいておびえる「虹の向こう」の剣士。

 「だから、血祭りはだめだって、イリニスティス」

 「い、いくぞー」
 「おうっ!」

 かけ声は勇ましいが、なかなか前にでるきっかけがつかめないようだ。
 ジーナの前で、一歩進んだり、戻ったりをくりかえしている。

 「うーん、ちょっと手伝ってあげるか」

 ユウがつぶやいて、

 「「おわっ?」」

 二人の剣士は、後ろから押されたかのように(じっさい、押されたのだが)飛び出した。
 しかし、一歩出てしまえば、度胸が決まったのか、それとも身体が自然に動くのか、

 「「だぁーっ!」」

 鋭く、刀を繰り出してくる。
 二人の連携もいい。
 一人が上から、一人が横から、ジーナに襲いかかった!

 「むっ?」

  キンッ! キンッ!

 ジーナはイリニスティスを傾け、上からの攻撃を束で、横からの攻撃を刀の背で受け止める。

 「「やあっ」」

 間をおかず、二人の次の攻撃が来る。
 なるほど、この二人は息の合った同時攻撃を得意とするようだ。
 しかし、ジーナはそれをものともしない。イリニスティス一本で、すべての攻撃を受け流す。

 「「火と風の精霊が、お互いの周りを廻るとき熱が生じる、炎球弾ファイアボール!」」

 ようやく、それまで気を呑まれていた向こうの魔法使いが参戦した。
 たてつづけに、火球を放ってくる。
 この魔法使い二人組も、息が合っていて、一人は水平に、一人は高いところから落下するようにと、軌道とタイミングをわけて、防ぎにくいように打ち出している。

 「ほう、なかなかやるねえ。このパーティはコンビで攻撃をするのが特徴か」

 ユウがのんきに言う。
 まあ、刀と魔法と、一度にぜんぶの攻撃をかわすのは、ジーナもたいへんだろうから、

 「水と土、風の混合により氷の季節来たる、氷柱の槍アイスジャベリン!」

 わたしが、氷の槍で、すべての火球を迎撃する。
 ついでに、あまった槍を、魔法使いにも向けて、打ち出しておく。 

 「あっ」
 「わっ」

 氷の槍が自分たちに突進してくるのを見て、魔法使いはあわてて、守りの魔法を詠唱しようとするが、焦りすぎてまにあわない。
 目の前にぐんぐん迫ってくる氷の槍に、

 「ひゃああ!」

 うろたえて、悲鳴を上げる。

 「た、たすけてー!」

 「はいっと」

 そこで、ユウが力を働かせ、氷の槍は、魔法使い二人の直前で消滅。
 ジーナの方も、

  ガィーン!

 「「ああっ」」

 二人の剣士の刀を、同時に弾き飛ばし、刀はくるくるまわって、闘技場の土に突き立った。

 「そこまで!」

 ギルド長の声がかかる。

 「えっ? もう?」

 ジーナは不満げだが、汗だくになり、力尽きた『虹の向こう』の冒険者たちは、その場にすわりこんだのだった。


 「たてがみの獣人剣士すげー。あんなちっこいのに、二人がかかりでも余裕だよ!」
 「いや、女帝の後継者もすごい。最後に、槍を消したのを見たか?
  なんで、いちど出した魔法を消せるんだよ? 詠唱し終わった魔法を、あとからどうこうするなんて、そんなこと、魔法の原理から言ってありえないよ」
 「それにしても、あのへんなヤツはなにをしてるんだ? ずっと後ろに立ってるだけで、なにもしてないよね? おまけなのか?」

 などと、観客は感想を言いあっている。
 ずいぶん誤解があるようです……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...