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アンバランサー・ユウと世界の均衡「星の船」編
わたしたちは、女神様に会う。
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わたしたちは、あっという間に、おおぜいの衛兵に囲まれてしまった。
衛兵は、みな鋭い槍を手にしている。
「いったい、なにが怪しいっていうのよ?」
ジーナが文句を言う。
「獣人の娘!」
神官が言う。
「なによ!」
「おまえは、まあ、いい」
「あれっ? いいの?」
「とりあえずな。それより」
そういって、錫杖をわたしと、ユウに向ける。
「お前と、お前だ」
「やれやれ、そうきましたか……」
ユウがつぶやく。
「なにかいったか? おい、お前、何者だ?」
「いや、ふつうの……」
「ふつうのはずがあるか! 感じるぞ、お前の頭上になにか怪しい波動をな」
「ああ、これ」
「わかってるじゃないか!」
神官はわたしの方にも
「それにお前!」
「は、はい」
「なんだ、その赤い蜘蛛と蛇は!」
「えっ、まだくっついてる?」
「ほら見ろ! お前もわかってるじゃないか!」
この神官、それなりに感じる力があるようだ。
それにしても、ヴリトラ様、まだわたしにくっついてるんですか?
(ちがうぞ、娘よ。その神官は残像をみているだけだ)と、どこか遠くで声が聞こえたような気がするが、これって、気のせいなんでしょうか。気のせいでないと、ヴリトラさまとわたしは、いまだになんらかの形でつながっていることになってしまうんですが……?
「とにかく、お前たちはいろいろ怪しい! その二人と一緒にいる、お前、獣人娘も、同罪だな」
「ええー、そんなあ」
ちょっと、そんなあってどういう意味よ、ジーナ。
「いや、ぼくらはただの冒険者で、カードも持ってますよ、ほら」
ユウはそういって、ギルドカードを取り出して見せるが、
「なんだ、その真っ白なカードは? そんなギルドカードがあるものか!」
逆効果である。
「とにかく、詰め所に連行する! 衛兵、その刀を没収しろ」
衛兵の一人が、イリニスティスに手を伸ばすが、イリニスティスが、ジーナの口を借り、太い声で
「我にさわるな、この無礼者!」
「うわっ、なんかしゃべった?!」
「さっさとせんか!」
もういちど、衛兵が手を伸ばそうとしたとき
「……なにを騒いでいるのですか」
静かな声がかかる。
「ああっ、大司教さま」
神官と衛兵があわてて、礼の形をとる。
大司教と呼ばれる人間は、この王都には、たった一人しかいない。
王都教会の最高位者、アウグストゥス大司教が、おつきのものを従えて、そこに立っていたのだ。
「いえっ、怪しいものが、この聖なる土地に侵入しようとしたものですから……」
神官が言う。
「だから、あたしら、怪しくないって」
ジーナが言う。
「むっ?」
大司教は、ユウをみて、驚いた顔になった。
威儀を正し、
「これはアンバランサーさま、王都においででしたか。王都をあげて、衷心より、歓迎いたします」
首を曲げ、正式な礼をした。
「おやめください。ぼくはただの冒険者で……」
「お戯れを。その頭上の、輝く御徴をみれば一目瞭然……」
「あっ、みえちゃいますか」
「もちろん。そのものにも」
といって、呆然としている神官に目をやり
「視えておりますよ。ただ、修行が足りず、それが何であるかまではわからなかったようですが……」
それから、わたしをみて
「ヴリトラ様に祝福されたお方、あなたにも失礼なことをしてしまいましたね。
申し訳ない」
「いえっ、いえいえ!」
わたしは、あわてて手を振る。
えっ、これって、祝福なんですか、ヴリトラ様?
(「娘よ、むろんであろう。神の徴だぞ」とどこか遠くで聞こえたような……気のせいです)
そして、大司教は衛兵に
「そのお方の刀にはふれてはならぬぞ、それは魂のある名刀である」
「御心のままに!」
衛兵がかしこまる。
「なあんだ、この人、よく、わかってるじゃん」
気安く言うジーナ。
ジーナ、あんた大司教様に失礼だよ……。
大司教は、ジーナの無礼さをとがめることもなく
「それでアンバランサーさま、本日はどのようなご用件ですかな? なにか重要な……」
「いえ、このジーナが、王都にきたからには、ぜひ一度大聖堂を拝観したいというものですから」
「はいっ! そうなんです!」
ジーナが元気よく言う。
「それは、それは。光栄なことですね。となると……案内をしてさしあげなければならないのですが、わたしは、今、折悪しく手が空かないので」
大司教は思案顔をする。
と、
「わたくしが、案内します!」
いきなり言ったものがいた。
みると、神官の服をきた小さな女の子が、いつのまにか、わたしたちの横に来ていた。
頭にも、神官のしるしの冠をかぶって、可愛らしい。
でも、ずいぶん位の高そうな冠で、こんな小さな子で、そんなことがあるんだろうか?
「お前はなんだ!」
さきほどの神官が声を荒げる。
しかし、大司教は
「またまた、お戯れですねえ……」
苦笑している。
「いいでしょう? アウグストゥス。あなたは忙しそうだから、わたくしが案内します」
女の子は、大司教の名を呼び捨てである。
「おいっ!」
神官が激怒して怒鳴ったが、大司教はそれを制して、
「しょうがないですね……では、もうしわけありませんが、よろしくお願いいたします」
わたしたちに
「だれよりも、詳しい案内人といっていいでしょう。ご安心ください」
そういって、御付きを引き連れ、去っていったのだ。
「さあ、いきましょ。ここにはね、すてきな見所がたくさんあるのよ!」
女の子はユウの腕を抱えて、歩き出す。
「おいっ、お前」
神官が大声をあげて、呼び止める。
「さきほどから、無礼にもほどがあるだろう、寛容な大司教様はお許しになったようだが、わたしは許さぬ!」
女の子は、ふりかえって、神官を見ると
「だめねえ……」
ため息をつく。
「なにっ?!」
「せっかく視る力があるのに、まったく本質をみていない。
だから、あなたはいつも間違ってしまうのよ」
「なにを生意気なっ!」
「これなら、わかるかしらね」
その瞬間、夜の暗闇の中から明け方の光が現れるように、女の子のすがたに重なるようにして、まばゆく輝く神々しい女性が顕現した!
その女性は、王都の主神、女神ミネーヴァにまぎれもなかった。
「ああっ!」
「あなた、猛省しなさい」
それはほんの一瞬のこと、文字どおり瞬きをする間に、元のように、そこには小さな女の子が微笑んでいるだけとなった。
「そっ、そんなことが……」
神官は、がっくりと膝をついて、うなだれた。
「まあ、彼にはたっぷり反省してもらうこととして、わたくしたちはさっさといきましょう。ね、アンバランサー・ユウ」
そういってユウの腕にぶら下がる。
「いいんですか、ミネーヴァさま、こんなことして」
「あら、もちろんよ。八百年ぶりの、だいじなお客様ですから。アウグストゥスも、こころよく許可してくれたし」
あれは、こころよく許可したといえるのでしょうか。
ミネーヴァさまって、なんとなく……
「ねぇ、ライラ、やっぱり、あなたのいう通り、ルシア先生に似てるかも……」
とジーナが小声で言った。
衛兵は、みな鋭い槍を手にしている。
「いったい、なにが怪しいっていうのよ?」
ジーナが文句を言う。
「獣人の娘!」
神官が言う。
「なによ!」
「おまえは、まあ、いい」
「あれっ? いいの?」
「とりあえずな。それより」
そういって、錫杖をわたしと、ユウに向ける。
「お前と、お前だ」
「やれやれ、そうきましたか……」
ユウがつぶやく。
「なにかいったか? おい、お前、何者だ?」
「いや、ふつうの……」
「ふつうのはずがあるか! 感じるぞ、お前の頭上になにか怪しい波動をな」
「ああ、これ」
「わかってるじゃないか!」
神官はわたしの方にも
「それにお前!」
「は、はい」
「なんだ、その赤い蜘蛛と蛇は!」
「えっ、まだくっついてる?」
「ほら見ろ! お前もわかってるじゃないか!」
この神官、それなりに感じる力があるようだ。
それにしても、ヴリトラ様、まだわたしにくっついてるんですか?
(ちがうぞ、娘よ。その神官は残像をみているだけだ)と、どこか遠くで声が聞こえたような気がするが、これって、気のせいなんでしょうか。気のせいでないと、ヴリトラさまとわたしは、いまだになんらかの形でつながっていることになってしまうんですが……?
「とにかく、お前たちはいろいろ怪しい! その二人と一緒にいる、お前、獣人娘も、同罪だな」
「ええー、そんなあ」
ちょっと、そんなあってどういう意味よ、ジーナ。
「いや、ぼくらはただの冒険者で、カードも持ってますよ、ほら」
ユウはそういって、ギルドカードを取り出して見せるが、
「なんだ、その真っ白なカードは? そんなギルドカードがあるものか!」
逆効果である。
「とにかく、詰め所に連行する! 衛兵、その刀を没収しろ」
衛兵の一人が、イリニスティスに手を伸ばすが、イリニスティスが、ジーナの口を借り、太い声で
「我にさわるな、この無礼者!」
「うわっ、なんかしゃべった?!」
「さっさとせんか!」
もういちど、衛兵が手を伸ばそうとしたとき
「……なにを騒いでいるのですか」
静かな声がかかる。
「ああっ、大司教さま」
神官と衛兵があわてて、礼の形をとる。
大司教と呼ばれる人間は、この王都には、たった一人しかいない。
王都教会の最高位者、アウグストゥス大司教が、おつきのものを従えて、そこに立っていたのだ。
「いえっ、怪しいものが、この聖なる土地に侵入しようとしたものですから……」
神官が言う。
「だから、あたしら、怪しくないって」
ジーナが言う。
「むっ?」
大司教は、ユウをみて、驚いた顔になった。
威儀を正し、
「これはアンバランサーさま、王都においででしたか。王都をあげて、衷心より、歓迎いたします」
首を曲げ、正式な礼をした。
「おやめください。ぼくはただの冒険者で……」
「お戯れを。その頭上の、輝く御徴をみれば一目瞭然……」
「あっ、みえちゃいますか」
「もちろん。そのものにも」
といって、呆然としている神官に目をやり
「視えておりますよ。ただ、修行が足りず、それが何であるかまではわからなかったようですが……」
それから、わたしをみて
「ヴリトラ様に祝福されたお方、あなたにも失礼なことをしてしまいましたね。
申し訳ない」
「いえっ、いえいえ!」
わたしは、あわてて手を振る。
えっ、これって、祝福なんですか、ヴリトラ様?
(「娘よ、むろんであろう。神の徴だぞ」とどこか遠くで聞こえたような……気のせいです)
そして、大司教は衛兵に
「そのお方の刀にはふれてはならぬぞ、それは魂のある名刀である」
「御心のままに!」
衛兵がかしこまる。
「なあんだ、この人、よく、わかってるじゃん」
気安く言うジーナ。
ジーナ、あんた大司教様に失礼だよ……。
大司教は、ジーナの無礼さをとがめることもなく
「それでアンバランサーさま、本日はどのようなご用件ですかな? なにか重要な……」
「いえ、このジーナが、王都にきたからには、ぜひ一度大聖堂を拝観したいというものですから」
「はいっ! そうなんです!」
ジーナが元気よく言う。
「それは、それは。光栄なことですね。となると……案内をしてさしあげなければならないのですが、わたしは、今、折悪しく手が空かないので」
大司教は思案顔をする。
と、
「わたくしが、案内します!」
いきなり言ったものがいた。
みると、神官の服をきた小さな女の子が、いつのまにか、わたしたちの横に来ていた。
頭にも、神官のしるしの冠をかぶって、可愛らしい。
でも、ずいぶん位の高そうな冠で、こんな小さな子で、そんなことがあるんだろうか?
「お前はなんだ!」
さきほどの神官が声を荒げる。
しかし、大司教は
「またまた、お戯れですねえ……」
苦笑している。
「いいでしょう? アウグストゥス。あなたは忙しそうだから、わたくしが案内します」
女の子は、大司教の名を呼び捨てである。
「おいっ!」
神官が激怒して怒鳴ったが、大司教はそれを制して、
「しょうがないですね……では、もうしわけありませんが、よろしくお願いいたします」
わたしたちに
「だれよりも、詳しい案内人といっていいでしょう。ご安心ください」
そういって、御付きを引き連れ、去っていったのだ。
「さあ、いきましょ。ここにはね、すてきな見所がたくさんあるのよ!」
女の子はユウの腕を抱えて、歩き出す。
「おいっ、お前」
神官が大声をあげて、呼び止める。
「さきほどから、無礼にもほどがあるだろう、寛容な大司教様はお許しになったようだが、わたしは許さぬ!」
女の子は、ふりかえって、神官を見ると
「だめねえ……」
ため息をつく。
「なにっ?!」
「せっかく視る力があるのに、まったく本質をみていない。
だから、あなたはいつも間違ってしまうのよ」
「なにを生意気なっ!」
「これなら、わかるかしらね」
その瞬間、夜の暗闇の中から明け方の光が現れるように、女の子のすがたに重なるようにして、まばゆく輝く神々しい女性が顕現した!
その女性は、王都の主神、女神ミネーヴァにまぎれもなかった。
「ああっ!」
「あなた、猛省しなさい」
それはほんの一瞬のこと、文字どおり瞬きをする間に、元のように、そこには小さな女の子が微笑んでいるだけとなった。
「そっ、そんなことが……」
神官は、がっくりと膝をついて、うなだれた。
「まあ、彼にはたっぷり反省してもらうこととして、わたくしたちはさっさといきましょう。ね、アンバランサー・ユウ」
そういってユウの腕にぶら下がる。
「いいんですか、ミネーヴァさま、こんなことして」
「あら、もちろんよ。八百年ぶりの、だいじなお客様ですから。アウグストゥスも、こころよく許可してくれたし」
あれは、こころよく許可したといえるのでしょうか。
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