アンバランサー・ユウと世界の均衡 第二部「星の船」編

かつエッグ

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アンバランサー・ユウと世界の均衡「星の船」編

ジーナは憤る。

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 「もう、そろそろ着くよー」

 ユウがそういったとき、本当に半刻しかたっていなかった。
 信じがたいが、眼下に広がっているのは、たしかに王都だ。
 大聖堂の尖塔も、王宮も、密集したたくさんの家も……。
 もっとも、今は深夜で、ほとんど明かりはない。
 本来なら、夜警の詰め所などをのぞいて闇に沈んでいるはずだが、ユウが、星の船のを調整して、暗視が利くようにしてくれているのだ。

 「あのあたりに降りようかな」

 ユウが、地上をながめて、着陸地点を決める。
 王都の城壁から外、少しはなれたところにある、広い森だった。

 「あそこなら、地形が王都まで平坦だし、森が船を隠してくれるだろう。よし、着陸だ」

 ユウが半円の環を、両手でぐっと押し出すと、星の船は高度を下げる。
 わたしたちの乗る星の船のあとから、もう一台の星の船も高度を下げてくる。
 こちらは無人である。だれも人が乗っていないのに、ちゃんと飛んでいる。

 「で、ぼくらの船についてくるように設定してあるよ」

 と、ユウが、理解のむずかしいことをいっていた。
 要するに、ユウが指示したように、星の船がかってに飛んでくれるのだそうだが、

 「あっちにも動力を供給しないといけないので、ぼくからはあまり離れられないけどね」

 とのことである。

 「さて、着陸できるように、場所をつくって、と」

 ユウがつぶやき、森の中心部がみるみる整地されたように、木々が後退して、方形の平らな空き地となる。

 「これで、二台とも降りられるだろう。よし、降りるか」

 ユウがそう言った時、王都の一角で、ぱっ!とまぶしい光が瞬いた。
 とたんに、

  !!

 操縦室にけたたましい音が鳴り響き

 「警告! 警告! 危険接近! が発射された!」

 という、抑揚のない、金属的な声が聞こえてきた。
 光はさらに三度瞬き、

 「警告! さらに3発の発射あり。 計4発、現在高速で接近中」

 声は続ける。

 「撃墜しますか?」

 ユウが答える。

 「いや、ここで撃墜したら、大ごとになる。ぼくが無力化するよ」
 「了解です。待機します」

 ユウの言葉通り、星の船に急接近していた「みさいる」なるものは、ふっとその勢いをうしない、くるくる回りながら、森に落下していった。

 「ねえ、さっきからしゃべってるの、いったい、だれ?」

 ジーナが聞く。

 「船だね」
 「この船、しゃべれるんだ!」

 ジーナがびっくりした声をだした。

 「うん、船のが、いろいろ教えてくれるよ」
 「へぇ、こんぴゅーた、すごーい!」

 ジーナ、あんた、「こんぴゅーた」が何か全然わかってないでしょう。
 わたしも、もちろん、ぜんぜんわからないよ。
 いや、それより。
 わたしはユウに聞いた。

 「ユウさん、わたしたち、今、攻撃されたってこと?」
 「そうだ。これは古代兵器による攻撃だね」

 ユウは、いつもの口調だ。

 「王都から? だれが?」
 「あの光の位置は、おそらく、王立古代遺跡院の保管庫です」

 と、マリア院長が言った。

 「何者かが、王立古代遺跡院に保管してある古代武器を、わたしたちに向けて使った……」
 「ええっ? 勝手に、なんてことをしてくれたんだ」

 職員が天を仰いだ。

 「そんな!」

 ジーナがいきどおる。

 「マリア院長も乗ってるじゃん。味方を撃って、どうするの!」
 「たぶん、あの四人が関係していると思います。あの男たちが、禍つ神の影響下にあることを、調査にくわわらずに遺跡院に残っている職員は、まだ知らないでしょう。ですから、彼らが保管庫にはいることは簡単です」
 「じゃあ、次の攻撃が来る?」
 「わたしたちに向かって発射されたあの武器、「みさいる」ですか、たぶんあれで終わりです。発掘できたのは、四本だけだから。でも、他の武器が使われる可能性も……」
 「いや、それはなさそうだ……」

 ユウが言った。

 「えっ?」
 「遺跡院から、逃亡していく気配を感じる。あいつらか、もしくは同等の存在だ。不意打ちがうまくいかなかったので、退散するようだ。それとも……」
 「それとも」
 「これは、ただの挨拶かも」
 「えぇっ? いくらなんでも、そんなあいさつなんて、ある?」
 「まあ、相手は禍つ神だし……ぼくらを驚かせて面白がってるのかも」

 いや、いくら神さまだといっても、古代兵器を使ってきて、これは一歩間違ったら大惨事なのでは……。
 あたりに被害が出ることをなにも気にしていない。
 やはり、危険な相手だ。
 しかし、たしかに、ユウの言葉通り、それ以上の動きはなかった。

 「ところで、、さっきは警告ありがとう。君の名前は、ひょっとして、かな?」

 ユウがまた典拠不明なことを言う。「ふらいでい」って、いったい誰ですか。
 船は、抑揚のない声で答える。

 「いいえ。わたしのことは、とお呼びください」
 「あっ、そっちか……頼むから、反乱をおこさないでくれよ」
 「ごじょうだんを。わたしは、搭乗員の生命維持を第一に設計されております」
 「その維持装置を、いつのまにか、とめちゃったりして……ハハハハ」
 「いえいえ、そんなことしませんから。わたしは常により人命優先です。にはなりませんハハハ」

 ユウが、なにやら楽しそうに船としゃべっているが、なぜそういう話になるのか、まったくもって意味不明だ。そのうえ、なんだかとても、ぶっそうな内容に思えるのだが……。

 「では、予定通り、森の中に降りるよ」

 そういって、ユウが、船を操作する。
 さきほど作られた森の空き地に、静かに星の船は着陸した。
 無人のもう一台も、危なげなくその横に着陸する。

 「ぶじ到着だ。さて、これからどうするかだが……」
 「可能なら」

 とマリア院長が

 「わたしは今すぐにでも、遺跡院に駆けつけたいのです。どうなっているのか、とても心配でたまりません。でも……」

 肩を落とす。

 「残念ながら、夜間は城門がしまっており、通行はできないでしょう……」
 「行ってみますか? マリアさん」

 ユウが言う。

 「えっ? でも通れませんよ」
 「だいじょうぶ、城門を通らなければいい」
 「だね! いつものやつで、ふわっと」
 「いいのですか?」
 「まあ、まんいち捕まったら大問題になるけどね」
 「かまいませんよ、行きます! さあ、ユウさん、お願いします」

 マリア院長が言い、その横で職員が「院長……」また天を仰いだ。
 まあ、アンバランサーを捕まえられる人なんて、この世界にいるとは思えないけどね。

 「はる9000、ぼくら以外のものが来ても、中にいれたらダメだよ」
 「了解しましたアイアイサー艦長キャプテン

 いつのまにか、ユウは、艦長キャプテンとよばれている。
 それに、「あいあいさー」って何?
 つっこみどころ満載だ。
 わたしたちは船から降り、その上でわたしが、

 「土の精霊と水の精霊の紡ぐ金剛の茨の格子、不壊の覆いアンブロークンケイジ!」

 魔法を詠唱し、魔力の格子の中に、船を封印する。
 これでだれも簡単には船には近づけないだろう。

 「さて、じゃあ、ひとつ、王立古代遺跡院まで行きますか」

 ユウがそういって、手を差し出す。
 もう二度目のマリア院長は、その手をぎゅっと握る。

 「?」

 職員はなんのことかわからないようだが、マリア院長に倣って、ユウの手を握る。

 「いくよー」
 「うわわわーっ」

 職員の悲鳴を聞きながら、わたしたちは夜の空を飛行した。
 城壁を軽々と越えていく。
 古代遺跡院の近くの、人気のない路地に、そっと、わたしたちは降りる。

 「よっと」

 わたしやジーナは慣れたものだ。ユウの力をつかった飛行はさんざん体験している。

 「ほんとうに、すごいですね! 重力操作!」

 マリア院長は、目を輝かせている。彼女は好きなのだ、こういう現象が。
 好奇心にあふれる、研究者の鑑だ。
 しかし、「ひぃいい…」職員は気を失いそうになっている。

 「あれが古代遺跡院? ……、こりゃあ真四角だ」

 ジーナが声に出す。
 古代遺跡院は、たしかに真四角だ。大きさだけで言ったら、大聖堂にも引けを取らないようなサイズだが、特徴的なのは、直方体のその建物には、窓が一つもない。出土物を搬入するための、大きな入り口の扉が一つ、前面にあるだけで、あとはなんの飾りも窓もない、のっぺらぼうな建物なのだ。
 貴重な遺物が盗まれることを防ぐためらしい。
 また、中で行われる実験が外に漏れないためともいう。

 「も、?」

 例によって、ユウがよくわからないことをつぶやく。
 わたしたちが、通りに出て、たった一つの入り口に回り込んでいくと

 「誰だ?! そこにいるのは」

 厳しい、誰何すいかの声が投げつけられ、暗闇にギラリ光ったのは抜身の剣。

 「お勤めごくろうさま。わたしよ、カテリナ」

 マリア院長が答える。

 「えっ?」

 松明が掲げられ

 「お母さま!」

 そう叫んだのは、カテリナ騎士団長だった。

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