アンバランサー・ユウと世界の均衡 第二部「星の船」編

かつエッグ

文字の大きさ
45 / 69
アンバランサー・ユウと世界の均衡「星の船」編

ジーナは、アーダに感心される。

しおりを挟む
 「うーん、この香り! ミネーヴァさま、やっぱり、神酒茶ネクターティー、最高です!」

 ミネーヴァさまの秘密の庭。
 この前の時とかわらず、よい香りの白い花が咲き、心地よい風がわたしたちのほおをなぜる。
 テーブルについたわたしたちに、ミネーヴァさまから、神酒茶がふるまわれた。
 さっそくジーナが、薄青い神酒茶を一口すすって、そのえもいわれぬ味に感嘆する。
 わたしたちの横でテーブルについているビーグル一家は、王都の主神である女神ミネーヴァさまと、同じ席につき、あろうことか神酒茶まで手ずからふるまわれるという事態に、完全に緊張しきって固くなっており、とうてい目の前のお茶に、手をのばすどころではない。

 「……ライラ、どうして、ジーナはあんなふうにのびのびできるのよ? 畏れ多くも女神さまの前だよ」

 アーダが小声でわたしに聞いてくるが、どうしてと聞かれても、ジーナはそういう人であるとしか、わたしにも言いようがない。思い出してみれば、ジーナって、ガネーシャさまやヴリトラさまの前でも、こうだった。ヴリトラさまにいたっては、「言えるもんなら、言って見なさいよ!」なんて、イリニスティスを構えて、くってかかっていた。ぶれない。
 ジーナ、あんたって、ひょっとしてたいへんな大物?
 ジーナが、わたしとアーダの視線に気づき、

 「あれっ? アーダ飲まないの? 美味しいよ」

 呑気にいう。

 「そうそう、ここは神の庭だから、時間がたっても、お茶はけっして冷めないけど……遠慮しないで飲んでもらえると嬉しいわ」

 ミネーヴァさまが、にっこりと微笑みながら、お茶を勧めた。
 それで、ようやく、おずおずとビーグル一家も手を伸ばす。
 薄青い神酒茶は、ひとくち口をつけると、薄紫に色をかえ、そんなふうに、口をつけるたびに、さまざまな色と味わいに変化していく。
 ビーグル一家も、神酒茶の滋味に陶然とした表情になった。
 みんなが一通り、お茶に口をつけたのを見てから、ミネーヴァさまは

 「さあ、ユウ、あれからどんなことがあったか、教えて」

 と、ユウに声をかける。

 「ミネーヴァさま、あなたは、すでに、ご存知なのでは?」

 ユウが、お茶を飲みながら、いつもの口調で答える。
 この人もぶれない。神様の前でも平常運転だ。

 「わたしは、あなたの口から聞きたいの。当事者から、ちょくせつ冒険のお話を聞くのは、それはそれは楽しいものよ」

 ミネーヴァさまもあいかわらずである。
 やはり、なんだか、わたしたちのルシア先生にちょっと似ていて。

 「わかりました。……マリアさんたち、ぜんぶ、ミネーヴァさまに話してもいいね?」
 「「「もっ、もちろんです!」」」

 三人が同じように、あわてて首を振る。うん、親子だ。
 ユウはうなずき、

 「あの日、ぼくたちがミネーヴァさまのところを辞して、宿舎に帰ってみると……」

 と、アーダとカテリナ団長が訪ねてきた、あの夜のところからはじめて、砂漠での戦い、湖の誕生、そして、星の船にのって王都に戻り、の攻撃を受ける、これまでの経緯を、ユウはミネーヴァさまに詳しく語った。

 例によって、ミネーヴァさまは、目を輝かせ、身を乗り出して聞いていた。

 「……と、言うわけで、ぼくたちは今日、ここにきたわけなんですが」

 ユウが語り終わると、ミネーヴァさまは、目をいったん閉じ、それからまた開いて、ビーグル一家をに顔をむけた。
 そして、優しく言った。

 「マリア……、あなたは、たいへんな目にあってしまったわね。さぞや辛かったでしょう」
 「い、いえっ、とんでもありません。わたしが、しっかりしていなかったために、娘たちにも悲しい思いをさせてしまって……」

 マリア院長は辛そうにうつむく。
 そんなマリア院長に、ミネーヴァさまは、女神の威厳と慈愛に満ちた声で語りかけた。

 「ユウが、あなたに言ったでしょう。あなたは間違っていないと」

 マリア院長は、はっと顔をあげた。

 「わたしも、そう思います。あなたは、せいいっぱいやった……、マリア、カテリナ、アーダ、あなたたち一家には、いつでもわたしの加護があると思いなさい」
 「ミネーヴァさま……」

 マリア院長は涙した。アーダと、カテリナ団長も涙ぐむ。
 わたしたちのテーブルに、穏やかな風が流れ、花の香りが漂う。
 静かな時間が流れた。

 「ところで、ミネーヴァさま」

 ユウが口を開く。

 「うん、いよいよ本題ね?」
 「ですね」

 ユウがにこりとして

 「禍つ神は、どうしてもあの『星の船』が欲しかったらしい。
  そのために、マリアさんまで巻き込んで、いろいろとはかりごとをすすめたようだ。
  けっきょく、まんまと、一台持って行かれちゃいましたが……」
 「まあ、それはしかたないわね」
 「禍つ神が、どうしてそこまで『星の船』にこだわるのか……その理由をミネーヴァさまはお分かりなのではないでしょうか……」

 ユウはさらに続けた。

 「ご家庭の事情にたちいってもうしわけありませんが、ひょっとして、この件、妹君のアーテミスさまに、なにか関係していませんか?」

 ミネーヴァさまは、ユウをじっと見つめ、そして静かに答えた。

 「そうね……おそらく、禍つ神は、星の船を月におくりたいのでしょう。そこに、アーテミスがから」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...