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アンバランサー・ユウと世界の均衡「星の船」編
ジーナは、アーダに感心される。
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「うーん、この香り! ミネーヴァさま、やっぱり、神酒茶、最高です!」
ミネーヴァさまの秘密の庭。
この前の時とかわらず、よい香りの白い花が咲き、心地よい風がわたしたちのほおをなぜる。
テーブルについたわたしたちに、ミネーヴァさまから、神酒茶がふるまわれた。
さっそくジーナが、薄青い神酒茶を一口すすって、そのえもいわれぬ味に感嘆する。
わたしたちの横でテーブルについているビーグル一家は、王都の主神である女神ミネーヴァさまと、同じ席につき、あろうことか神酒茶まで手ずからふるまわれるという事態に、完全に緊張しきって固くなっており、とうてい目の前のお茶に、手をのばすどころではない。
「……ライラ、どうして、ジーナはあんなふうにのびのびできるのよ? 畏れ多くも女神さまの前だよ」
アーダが小声でわたしに聞いてくるが、どうしてと聞かれても、ジーナはそういう人であるとしか、わたしにも言いようがない。思い出してみれば、ジーナって、ガネーシャさまやヴリトラさまの前でも、こうだった。ヴリトラさまにいたっては、「言えるもんなら、言って見なさいよ!」なんて、イリニスティスを構えて、くってかかっていた。ぶれない。
ジーナ、あんたって、ひょっとしてたいへんな大物?
ジーナが、わたしとアーダの視線に気づき、
「あれっ? アーダ飲まないの? 美味しいよ」
呑気にいう。
「そうそう、ここは神の庭だから、時間がたっても、お茶はけっして冷めないけど……遠慮しないで飲んでもらえると嬉しいわ」
ミネーヴァさまが、にっこりと微笑みながら、お茶を勧めた。
それで、ようやく、おずおずとビーグル一家も手を伸ばす。
薄青い神酒茶は、ひとくち口をつけると、薄紫に色をかえ、そんなふうに、口をつけるたびに、さまざまな色と味わいに変化していく。
ビーグル一家も、神酒茶の滋味に陶然とした表情になった。
みんなが一通り、お茶に口をつけたのを見てから、ミネーヴァさまは
「さあ、ユウ、あれからどんなことがあったか、教えて」
と、ユウに声をかける。
「ミネーヴァさま、あなたは、すでに、ご存知なのでは?」
ユウが、お茶を飲みながら、いつもの口調で答える。
この人もぶれない。神様の前でも平常運転だ。
「わたしは、あなたの口から聞きたいの。当事者から、ちょくせつ冒険のお話を聞くのは、それはそれは楽しいものよ」
ミネーヴァさまもあいかわらずである。
やはり、なんだか、わたしたちのルシア先生にちょっと似ていて。
「わかりました。……マリアさんたち、ぜんぶ、ミネーヴァさまに話してもいいね?」
「「「もっ、もちろんです!」」」
三人が同じように、あわてて首を振る。うん、親子だ。
ユウはうなずき、
「あの日、ぼくたちがミネーヴァさまのところを辞して、宿舎に帰ってみると……」
と、アーダとカテリナ団長が訪ねてきた、あの夜のところからはじめて、砂漠での戦い、湖の誕生、そして、星の船にのって王都に戻り、みさいるの攻撃を受ける、これまでの経緯を、ユウはミネーヴァさまに詳しく語った。
例によって、ミネーヴァさまは、目を輝かせ、身を乗り出して聞いていた。
「……と、言うわけで、ぼくたちは今日、ここにきたわけなんですが」
ユウが語り終わると、ミネーヴァさまは、目をいったん閉じ、それからまた開いて、ビーグル一家をに顔をむけた。
そして、優しく言った。
「マリア……、あなたは、たいへんな目にあってしまったわね。さぞや辛かったでしょう」
「い、いえっ、とんでもありません。わたしが、しっかりしていなかったために、娘たちにも悲しい思いをさせてしまって……」
マリア院長は辛そうにうつむく。
そんなマリア院長に、ミネーヴァさまは、女神の威厳と慈愛に満ちた声で語りかけた。
「ユウが、あなたに言ったでしょう。あなたは間違っていないと」
マリア院長は、はっと顔をあげた。
「わたしも、そう思います。あなたは、せいいっぱいやった……、マリア、カテリナ、アーダ、あなたたち一家には、いつでもわたしの加護があると思いなさい」
「ミネーヴァさま……」
マリア院長は涙した。アーダと、カテリナ団長も涙ぐむ。
わたしたちのテーブルに、穏やかな風が流れ、花の香りが漂う。
静かな時間が流れた。
「ところで、ミネーヴァさま」
ユウが口を開く。
「うん、いよいよ本題ね?」
「ですね」
ユウがにこりとして
「禍つ神は、どうしてもあの『星の船』が欲しかったらしい。
そのために、マリアさんまで巻き込んで、いろいろとはかりごとをすすめたようだ。
けっきょく、まんまと、一台持って行かれちゃいましたが……」
「まあ、それはしかたないわね」
「禍つ神が、どうしてそこまで『星の船』にこだわるのか……その理由をミネーヴァさまはお分かりなのではないでしょうか……」
ユウはさらに続けた。
「ご家庭の事情にたちいってもうしわけありませんが、ひょっとして、この件、妹君のアーテミスさまに、なにか関係していませんか?」
ミネーヴァさまは、ユウをじっと見つめ、そして静かに答えた。
「そうね……おそらく、禍つ神は、星の船を月におくりたいのでしょう。そこに、アーテミスがいるから」
ミネーヴァさまの秘密の庭。
この前の時とかわらず、よい香りの白い花が咲き、心地よい風がわたしたちのほおをなぜる。
テーブルについたわたしたちに、ミネーヴァさまから、神酒茶がふるまわれた。
さっそくジーナが、薄青い神酒茶を一口すすって、そのえもいわれぬ味に感嘆する。
わたしたちの横でテーブルについているビーグル一家は、王都の主神である女神ミネーヴァさまと、同じ席につき、あろうことか神酒茶まで手ずからふるまわれるという事態に、完全に緊張しきって固くなっており、とうてい目の前のお茶に、手をのばすどころではない。
「……ライラ、どうして、ジーナはあんなふうにのびのびできるのよ? 畏れ多くも女神さまの前だよ」
アーダが小声でわたしに聞いてくるが、どうしてと聞かれても、ジーナはそういう人であるとしか、わたしにも言いようがない。思い出してみれば、ジーナって、ガネーシャさまやヴリトラさまの前でも、こうだった。ヴリトラさまにいたっては、「言えるもんなら、言って見なさいよ!」なんて、イリニスティスを構えて、くってかかっていた。ぶれない。
ジーナ、あんたって、ひょっとしてたいへんな大物?
ジーナが、わたしとアーダの視線に気づき、
「あれっ? アーダ飲まないの? 美味しいよ」
呑気にいう。
「そうそう、ここは神の庭だから、時間がたっても、お茶はけっして冷めないけど……遠慮しないで飲んでもらえると嬉しいわ」
ミネーヴァさまが、にっこりと微笑みながら、お茶を勧めた。
それで、ようやく、おずおずとビーグル一家も手を伸ばす。
薄青い神酒茶は、ひとくち口をつけると、薄紫に色をかえ、そんなふうに、口をつけるたびに、さまざまな色と味わいに変化していく。
ビーグル一家も、神酒茶の滋味に陶然とした表情になった。
みんなが一通り、お茶に口をつけたのを見てから、ミネーヴァさまは
「さあ、ユウ、あれからどんなことがあったか、教えて」
と、ユウに声をかける。
「ミネーヴァさま、あなたは、すでに、ご存知なのでは?」
ユウが、お茶を飲みながら、いつもの口調で答える。
この人もぶれない。神様の前でも平常運転だ。
「わたしは、あなたの口から聞きたいの。当事者から、ちょくせつ冒険のお話を聞くのは、それはそれは楽しいものよ」
ミネーヴァさまもあいかわらずである。
やはり、なんだか、わたしたちのルシア先生にちょっと似ていて。
「わかりました。……マリアさんたち、ぜんぶ、ミネーヴァさまに話してもいいね?」
「「「もっ、もちろんです!」」」
三人が同じように、あわてて首を振る。うん、親子だ。
ユウはうなずき、
「あの日、ぼくたちがミネーヴァさまのところを辞して、宿舎に帰ってみると……」
と、アーダとカテリナ団長が訪ねてきた、あの夜のところからはじめて、砂漠での戦い、湖の誕生、そして、星の船にのって王都に戻り、みさいるの攻撃を受ける、これまでの経緯を、ユウはミネーヴァさまに詳しく語った。
例によって、ミネーヴァさまは、目を輝かせ、身を乗り出して聞いていた。
「……と、言うわけで、ぼくたちは今日、ここにきたわけなんですが」
ユウが語り終わると、ミネーヴァさまは、目をいったん閉じ、それからまた開いて、ビーグル一家をに顔をむけた。
そして、優しく言った。
「マリア……、あなたは、たいへんな目にあってしまったわね。さぞや辛かったでしょう」
「い、いえっ、とんでもありません。わたしが、しっかりしていなかったために、娘たちにも悲しい思いをさせてしまって……」
マリア院長は辛そうにうつむく。
そんなマリア院長に、ミネーヴァさまは、女神の威厳と慈愛に満ちた声で語りかけた。
「ユウが、あなたに言ったでしょう。あなたは間違っていないと」
マリア院長は、はっと顔をあげた。
「わたしも、そう思います。あなたは、せいいっぱいやった……、マリア、カテリナ、アーダ、あなたたち一家には、いつでもわたしの加護があると思いなさい」
「ミネーヴァさま……」
マリア院長は涙した。アーダと、カテリナ団長も涙ぐむ。
わたしたちのテーブルに、穏やかな風が流れ、花の香りが漂う。
静かな時間が流れた。
「ところで、ミネーヴァさま」
ユウが口を開く。
「うん、いよいよ本題ね?」
「ですね」
ユウがにこりとして
「禍つ神は、どうしてもあの『星の船』が欲しかったらしい。
そのために、マリアさんまで巻き込んで、いろいろとはかりごとをすすめたようだ。
けっきょく、まんまと、一台持って行かれちゃいましたが……」
「まあ、それはしかたないわね」
「禍つ神が、どうしてそこまで『星の船』にこだわるのか……その理由をミネーヴァさまはお分かりなのではないでしょうか……」
ユウはさらに続けた。
「ご家庭の事情にたちいってもうしわけありませんが、ひょっとして、この件、妹君のアーテミスさまに、なにか関係していませんか?」
ミネーヴァさまは、ユウをじっと見つめ、そして静かに答えた。
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