62 / 98
62 封鎖 / 後半 ユージーン視点
しおりを挟む
少し落ち着きを取り戻した頃、にわかに廊下が騒がしくなった。
扉がノックされ、こちらの返事を待たずに扉が開いてお父様とお兄様が部屋になだれ込んで来た。
「フェリシア、大丈夫か? 一体何があったんだ?」
「…お父様…」
駆け寄ってきたお父様の姿を見た途端、反射的に立ち上がり、お父様に抱きついていた。
せきを切ったように涙があとからあとから溢れてくる。
泣きじゃくる私をお父様はぎゅっと抱きしめてくれている。
お兄様も私を落ち着かせるように優しく背中をさすってくれた。
二人に慰められてようやく落ち着きを取り戻した私は、涙を拭うと顔を上げてお父様に微笑みかけた。
「ありがとうございます、お父様。もう大丈夫です」
「フェリシア、一体何があったんだ? 詳しく話を聞かせてくれ」
お父様とお兄様に挟まれる形でソファーに腰を下ろすと、私は先程の出来事を話した。
「部屋に戻ろうとした時に誰かの視線を感じたんです。だけど、誰もいなくて別邸に通じる扉が見えて…。アガサから封鎖されているとは聞いていたんですが、どうしても気になって取っ手を引いたんです。そうしたら開かないはずの扉が開いてびっくりしてしまって…」
話をしている間もお父様とお兄様は私を安心させるように、それぞれ手を握っていてくれた。
「私も今見てきたが、確かに扉が開いていた。ちゃんと封鎖したはずなのに一体誰があの扉を開けたのか…。今、王宮魔術師に魔法であの扉を封鎖するように頼んだからな。この先あの扉が開けられる事はない」
お父様に言われて私はようやく安心出来た。
王宮魔術師が魔法を施したのならば、おいそれと扉が開く事はないだろう。
私はようやく安堵の表情を浮かべる事が出来た。
******
僕はソワソワとしながら午後からの仕事をこなしていた。
今、フェリシアは葬儀に出席するためのドレスの仮縫いをしているはずだ。
フェリシアの事だから。きっと何を着ても似合ってしまうだろうな。
チラッとでも見に行きたいが、流石に父上が側にいれば、それは叶わないだろう。
仕方がない、当日まで我慢しよう。
諦めて仕事に集中していると、バタバタと足音が近付いて来た。
何事だ?
思わず手を止めると、扉がノックされて間髪を入れずに扉が開いた。
執務室に入ってきたのはフェリシアについている侍女だった。
どうして彼女が?
まさか、フェリシアに何かあったのか?
侍女は迷わず父上の前に進むと驚きの報告を始めた。
「陛下! 大変でございます。別邸への扉が開いておりました。フェリシア様がそれに気付かれてかなり動揺されております」
「何だと! 誰があの扉の封鎖を解いた! すぐに向かうぞ!」
「父上、僕も行きます!」
すぐに執務室を出て、そちらに向かったが、確かに扉の封鎖が開いていた。
「一体、誰がこんな事を…」
「すぐに王宮魔術師を呼べ! ここを魔術で封鎖させる」
父上の命で王宮魔術師が呼ばれて直ちに魔法での封鎖が施された。
それが済むとすぐに僕達はフェリシアの部屋へと急いだ。
フェリシアは真っ青な顔でソファーに座っていたが、父上の顔を見るなり立ち上がって抱きついていた。
僕は泣きじゃくるフェリシアの背中をさすってやることくらいしか出来なかった。
泣き止んだフェリシアは僕達を安心させるように微笑んでみせたが、その顔がかえって痛々しい。
フェリシアに話を聞くと、誰かの視線を感じたらそこにあの別邸への入り口があったそうだ。
閉ざされている事を確認するために取っ手に触れたのに思いがけず開いてしまい、驚きに拍車がかかったようだ。
フェリシアをこんな目に合わせるなんて、一体誰があの扉の封鎖を開いたんだ?
父上が魔法で封鎖させる事を告げたら、ようやくフェリシアの顔に安堵の表情が浮かんだ。
大丈夫だよ、フェリシア。
君を泣かせた奴は僕が必ず捕まえてみせるからね。
扉がノックされ、こちらの返事を待たずに扉が開いてお父様とお兄様が部屋になだれ込んで来た。
「フェリシア、大丈夫か? 一体何があったんだ?」
「…お父様…」
駆け寄ってきたお父様の姿を見た途端、反射的に立ち上がり、お父様に抱きついていた。
せきを切ったように涙があとからあとから溢れてくる。
泣きじゃくる私をお父様はぎゅっと抱きしめてくれている。
お兄様も私を落ち着かせるように優しく背中をさすってくれた。
二人に慰められてようやく落ち着きを取り戻した私は、涙を拭うと顔を上げてお父様に微笑みかけた。
「ありがとうございます、お父様。もう大丈夫です」
「フェリシア、一体何があったんだ? 詳しく話を聞かせてくれ」
お父様とお兄様に挟まれる形でソファーに腰を下ろすと、私は先程の出来事を話した。
「部屋に戻ろうとした時に誰かの視線を感じたんです。だけど、誰もいなくて別邸に通じる扉が見えて…。アガサから封鎖されているとは聞いていたんですが、どうしても気になって取っ手を引いたんです。そうしたら開かないはずの扉が開いてびっくりしてしまって…」
話をしている間もお父様とお兄様は私を安心させるように、それぞれ手を握っていてくれた。
「私も今見てきたが、確かに扉が開いていた。ちゃんと封鎖したはずなのに一体誰があの扉を開けたのか…。今、王宮魔術師に魔法であの扉を封鎖するように頼んだからな。この先あの扉が開けられる事はない」
お父様に言われて私はようやく安心出来た。
王宮魔術師が魔法を施したのならば、おいそれと扉が開く事はないだろう。
私はようやく安堵の表情を浮かべる事が出来た。
******
僕はソワソワとしながら午後からの仕事をこなしていた。
今、フェリシアは葬儀に出席するためのドレスの仮縫いをしているはずだ。
フェリシアの事だから。きっと何を着ても似合ってしまうだろうな。
チラッとでも見に行きたいが、流石に父上が側にいれば、それは叶わないだろう。
仕方がない、当日まで我慢しよう。
諦めて仕事に集中していると、バタバタと足音が近付いて来た。
何事だ?
思わず手を止めると、扉がノックされて間髪を入れずに扉が開いた。
執務室に入ってきたのはフェリシアについている侍女だった。
どうして彼女が?
まさか、フェリシアに何かあったのか?
侍女は迷わず父上の前に進むと驚きの報告を始めた。
「陛下! 大変でございます。別邸への扉が開いておりました。フェリシア様がそれに気付かれてかなり動揺されております」
「何だと! 誰があの扉の封鎖を解いた! すぐに向かうぞ!」
「父上、僕も行きます!」
すぐに執務室を出て、そちらに向かったが、確かに扉の封鎖が開いていた。
「一体、誰がこんな事を…」
「すぐに王宮魔術師を呼べ! ここを魔術で封鎖させる」
父上の命で王宮魔術師が呼ばれて直ちに魔法での封鎖が施された。
それが済むとすぐに僕達はフェリシアの部屋へと急いだ。
フェリシアは真っ青な顔でソファーに座っていたが、父上の顔を見るなり立ち上がって抱きついていた。
僕は泣きじゃくるフェリシアの背中をさすってやることくらいしか出来なかった。
泣き止んだフェリシアは僕達を安心させるように微笑んでみせたが、その顔がかえって痛々しい。
フェリシアに話を聞くと、誰かの視線を感じたらそこにあの別邸への入り口があったそうだ。
閉ざされている事を確認するために取っ手に触れたのに思いがけず開いてしまい、驚きに拍車がかかったようだ。
フェリシアをこんな目に合わせるなんて、一体誰があの扉の封鎖を開いたんだ?
父上が魔法で封鎖させる事を告げたら、ようやくフェリシアの顔に安堵の表情が浮かんだ。
大丈夫だよ、フェリシア。
君を泣かせた奴は僕が必ず捕まえてみせるからね。
44
あなたにおすすめの小説
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
さようなら、私の愛したあなた。
希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。
ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。
「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」
ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。
ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。
「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」
凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。
なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。
「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」
こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
姉の婚約者と結婚しました。
黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。
式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。
今さら式を中止にするとは言えない。
そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか!
姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。
これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。
それどころか指一本触れてこない。
「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」
ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。
2022/4/8
番外編完結
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる