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95 進展
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ハミルトンがアンジェリカの所に行ったっきり戻って来ないまま、パーティーはお開きの時間になった。
ホールの出口で主催者であるフォスター侯爵一家が見送る中、私とお兄様が先に退出する。
「ユージーン様、フェリシア様。本日はありがとうございました。どうかこれからも娘のアンジェリカをよろしくお願いいたします」
フォスター侯爵もアンジェリカの機嫌が直った事でニコニコと私達を見送ってくれる。
そのアンジェリカの隣には少し困ったような顔をしたハミルトンが立っている。
アンジェリカも笑顔を浮かべているが、私には勝ち誇ったような顔にしか見えなかった。
何とか笑顔を保っていたけれど、馬車に乗ってお兄様と二人きりになった途端、私はハァ、と大きなため息を吐いた。
ハミルトンがフォスター侯爵家を大事にしているのはわかる。
出会ったばかりの私よりも長年の付き合いのあるアンジェリカを気にかけるのは仕方がない事だろう。
それでもやはり釈然としないのはどうしてだろう。
「フェリシア、大丈夫かい?」
もう一度ため息を吐いた時、お兄様が心配そうに顔を覗き込んできた。
「…ええ、大丈夫です」
本当は大丈夫なんかじゃないけれど、そう答えるしかないわね。
「まさかハミルトンがあのまま戻って来ないとは思わなかったからな。フォスター侯爵はハミルトンとアンジェリカ嬢を結婚させるつもりなんだろうか?」
お兄様の呟きにサァっと血の気が引いたようになる。
ハミルトンは私と結婚したがっていても、家同士で話が進めば従わないわけにはいかないだろう。
そうなったら私は平静でいられるんだろうか?
動揺している間に馬車は王宮へと戻って来た。
部屋に戻ってアガサや侍女達にドレスを着替えさせられてもぼんやりと考え込んでいた。
夕食の時間になって食堂に向かったけれど、食欲がなくカトラリーを動かす手が止まってしまう。
「フェリシア、どうした? 食事が進まないみたいだが、具合でも悪いのか?」
お父様が目ざとく私の様子がおかしい事に気付いて心配そうに尋ねてくる。
「なんでもありませんわ」
そう答えてカトラリーを動かす私にお兄様が口を挟む。
「フェリシア、なんでもなくはないだろう。父上、フェリシアはハミルトンを他の女性に取られるんじゃないかと心配しているんですよ」
お兄様ったら!
そんな話をしたらお父様が喜びそうだからやめてほしいわ。
「ハミルトンを取られそう? あいつは私に『フェリシアと婚約したい』と言いながら他の女性にも手を出していたのか?」
お父様ったら、どうしてそういう話になるのかしら。
私が憮然とするのに対してお兄様は大笑いをしている。
「ハハハッ。ハミルトンに二股をかけられる程の甲斐性があるとは思えないけどな。父上、そうじゃありませんよ。フォスター侯爵家の娘がどうやらハミルトンを好きらしいんです」
お兄様の説明にお父様は自分の勘違いに気付いたようだ。
「何だ、つまらん。フォスター侯爵と言えば、パトリシア夫人の実家だったな。フェリシアの婚約は嫌だが、あそこの娘にフェリシアが負けたとは言われたくないな。仕方がない。近い内にハミルトンとフェリシアの婚約発表をするか」
お父様にそう言われて私は喜んでいいのかどうか複雑な気分になった。
ハミルトンとの婚約発表は嬉しいけれど、その理由がそれって…。
お兄様に視線を移すと、小さく首を振って肩を竦められた。
ここは素直に喜んでいた方がいいみたいね。
お父様の気が変わらない内にさっさと婚約発表をしてしまいましょう。
「お父様、ありがとうございます。明日の朝一番にアシェトン公爵家に使いをお願いしますね」
お父様はちょっと後悔しているような顔をしたけれど、私はそれを無視して食事を再開した。
ホールの出口で主催者であるフォスター侯爵一家が見送る中、私とお兄様が先に退出する。
「ユージーン様、フェリシア様。本日はありがとうございました。どうかこれからも娘のアンジェリカをよろしくお願いいたします」
フォスター侯爵もアンジェリカの機嫌が直った事でニコニコと私達を見送ってくれる。
そのアンジェリカの隣には少し困ったような顔をしたハミルトンが立っている。
アンジェリカも笑顔を浮かべているが、私には勝ち誇ったような顔にしか見えなかった。
何とか笑顔を保っていたけれど、馬車に乗ってお兄様と二人きりになった途端、私はハァ、と大きなため息を吐いた。
ハミルトンがフォスター侯爵家を大事にしているのはわかる。
出会ったばかりの私よりも長年の付き合いのあるアンジェリカを気にかけるのは仕方がない事だろう。
それでもやはり釈然としないのはどうしてだろう。
「フェリシア、大丈夫かい?」
もう一度ため息を吐いた時、お兄様が心配そうに顔を覗き込んできた。
「…ええ、大丈夫です」
本当は大丈夫なんかじゃないけれど、そう答えるしかないわね。
「まさかハミルトンがあのまま戻って来ないとは思わなかったからな。フォスター侯爵はハミルトンとアンジェリカ嬢を結婚させるつもりなんだろうか?」
お兄様の呟きにサァっと血の気が引いたようになる。
ハミルトンは私と結婚したがっていても、家同士で話が進めば従わないわけにはいかないだろう。
そうなったら私は平静でいられるんだろうか?
動揺している間に馬車は王宮へと戻って来た。
部屋に戻ってアガサや侍女達にドレスを着替えさせられてもぼんやりと考え込んでいた。
夕食の時間になって食堂に向かったけれど、食欲がなくカトラリーを動かす手が止まってしまう。
「フェリシア、どうした? 食事が進まないみたいだが、具合でも悪いのか?」
お父様が目ざとく私の様子がおかしい事に気付いて心配そうに尋ねてくる。
「なんでもありませんわ」
そう答えてカトラリーを動かす私にお兄様が口を挟む。
「フェリシア、なんでもなくはないだろう。父上、フェリシアはハミルトンを他の女性に取られるんじゃないかと心配しているんですよ」
お兄様ったら!
そんな話をしたらお父様が喜びそうだからやめてほしいわ。
「ハミルトンを取られそう? あいつは私に『フェリシアと婚約したい』と言いながら他の女性にも手を出していたのか?」
お父様ったら、どうしてそういう話になるのかしら。
私が憮然とするのに対してお兄様は大笑いをしている。
「ハハハッ。ハミルトンに二股をかけられる程の甲斐性があるとは思えないけどな。父上、そうじゃありませんよ。フォスター侯爵家の娘がどうやらハミルトンを好きらしいんです」
お兄様の説明にお父様は自分の勘違いに気付いたようだ。
「何だ、つまらん。フォスター侯爵と言えば、パトリシア夫人の実家だったな。フェリシアの婚約は嫌だが、あそこの娘にフェリシアが負けたとは言われたくないな。仕方がない。近い内にハミルトンとフェリシアの婚約発表をするか」
お父様にそう言われて私は喜んでいいのかどうか複雑な気分になった。
ハミルトンとの婚約発表は嬉しいけれど、その理由がそれって…。
お兄様に視線を移すと、小さく首を振って肩を竦められた。
ここは素直に喜んでいた方がいいみたいね。
お父様の気が変わらない内にさっさと婚約発表をしてしまいましょう。
「お父様、ありがとうございます。明日の朝一番にアシェトン公爵家に使いをお願いしますね」
お父様はちょっと後悔しているような顔をしたけれど、私はそれを無視して食事を再開した。
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