【完結】妖精王をさがして〜小さな妖精フィルの冒険〜

伽羅

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6 コボルト族

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 レオの肩に乗って森の奥へと進んで行く。

「そういえばレオは何歳なんだ?」

 僕が見る限り、十五、六歳くらいに見えるけれど、実際は何歳なんだろう。

 そもそも、勝手に陛下を探す旅に連れ出してしまったけれど、レオには他に用事は無かったのかな?

 今更ながらに僕の旅に巻き込んでしまった事を後悔しつつも、レオについて知っておきたかった。

「僕は十五歳だよ。この前学校を卒業して、今は冒険者として活動しているんだ」

「冒険者?」

 前世で流行っていたラノベに出てくるような職業に僕はワクワクが隠せない。

「冒険者って、ギルドに登録して、魔獣を倒したりするやつ?」

「よく知ってるね。もしかして王の側近だった時に冒険者を見たりしたのかな?」

 レオに聞かれて僕は人間だった頃の記憶があると告げるべきかどうか迷ったが、結局は黙っておいた。

 僕自身、人間として生きた記憶が本当かどうかの判断がつかなかったからだ。

「まあね。時々、森に迷い込んでくる冒険者がいたりしたからね」

 本当は側近だった頃には人間になんて会った事はなかったが、そう言って誤魔化しておいた。

「ところで冒険者って何をするんだ?」

「色々あるけれど、主には魔獣の討伐かな。魔獣の被害を受けている人達から討伐を依頼されたり、素材を集めるために魔獣を倒したりしてるよ。駆け出しの冒険者だと薬草集めからスタートしてるよ」

 そう教えてくれるレオの姿を改めて見直してみた。

 動きやすそうな服装に左の腰には剣を下げている。

(確かに冒険者のような格好だけど、鎧は着けなくても大丈夫なのかな?)

「冒険者なのはわかったけれど、鎧は着なくて大丈夫なのか?」 

「一応魔法が使えるからね。少しくらいのケガは治せるし、今のところ、それほど強い魔獣には出会っていないよ」

 あっけらかんと答えるレオに僕はムムッと眉を寄せる。

(この先、強い魔獣が出て来ないとも限らないんだけど、本当に大丈夫かな? 僕だってまだ以前の力を取り戻していないし…)

 そうは思ったけれど、今更引き返すわけにもいかないのは十分承知だ。

(まあ、いきなり強い魔獣には出会わないだろうから、大丈夫だろう)  

 そう思い直し、僕はレオの肩に座り直した。

 レオの歩く動きに少し身体が揺れるけれど、そんなに気になるほどの事ではない。

 肩に乗っているのに飽きた時は背中の羽を羽ばたかせてあちこちを飛び回っていた。

 レオの前を飛びながら進んでいると、前方の草むらがガサガサと揺れて小さな男の子が飛び出してきた。

 大きさは僕よりも少し大きいくらいだけれど、その背中には羽がない。

(コボルト族だな)
 
 そう判断出来て僕は少し安堵した。

 自分の名前が思い出せなかったから、他の妖精達についても忘れているのではないかと少し不安になっていたんだ。

「あっ、小人だ!」

 僕の後ろにいたレオもコボルト族の存在に気付いて声をあげた。

 妖精は基本的に気に入った相手か、妖精の塗り薬を塗った人間にしか見えない事になっている。

 そんな妖精達が普通に見えるという事は、やはりレオには何かしら妖精との関わりがあるんだろう。

 コボルト族の男の子は、飛び出して来たままこちらを向いて固まったものの、すぐにまた歩き出した。

「人間がまた迷い込んできたのか。どうせボクの姿は見えないから気にする事はないな」

 そう呟きながら向こうの草むらへと入って行く。

 いや、レオにはちゃんと見えていたんだけどな。

 コボルト族の男の子はそんな事などつゆほども思っていなかったんだろう。

 僕とレオがそのままそこに留まっていると、またガサガサと草むらを掻き分けて先ほどのコボルト族が両手に木の実をいっぱい抱えて出てきた。

(あれだけ抱えていたら前が見えないんじゃないか?) 

 コボルト族の男の子は自分の身長よりも高く木の実を積み上げて運んでいる。

 ヨタヨタと歩く様は今にも足を引っ掛けて転んでしまいそうだ。

「手伝ってあげようか?」

 見かねたレオがコボルト族の男の子に声をかける。

「わぁっ!」

 いきなりレオに声をかけられて驚いたコボルト族の男の子は弾みで木の実をすべてその場にぶち撒けた。

 コボルト族の男の子はギギギッと音がしそうなほどゆっくりと首を回してこちらを見る。

「も、もしかしてボクが見えてる?」

 僕とレオがコクリと頷くとコボルト族の男の子は「うわぁっ!」と声をあげて草むらの中へ飛び込んでいった。

「木の実を落としたまんまだよ!」

 レオが草むらに向かって呼びかけると、草むらが揺れてコボルト族の男の子がほんの少しだけ顔を覗かせた。

 レオが辺りに散らばっている木の実を拾い集めると、その男の子に向かって差し出したが、男の子はジリジリと後ろに下がってしまう。

「大丈夫。レオは何にも悪い事はしないよ」

 僕はコボルト族の男の子の側に飛んでいって声をかけると、男の子は疑わしそうな目を僕に向ける。

「…ほんとに、何もしない?」

「もちろんだよ。レオは今、僕と一緒に旅をしているんだ」

 出会ったばかりでそんなに時間は経っていないけれど、わざわざそんな事を告げて男の子を不安にさせる事もない。

「君が近くにいたのは知っていたけど、人間には見えていないんだと思っていたんだ」

 コボルト族の男の子はレオが差し出した木の実を掴もうとして、その手を引っ込めた。

「手伝ってくれるって言ってたよね。他にもまだ運ばなきゃいけない木の実があるんだけど、お願いして良いかな?」

「もちろんだよ。何処にあるのかな? そこに案内してくれる?」

「こっちだよ」

 コボルト族の男の子は草むらから出てくると、木の実を抱えて出てきた方へと僕達を案内してくれた。

 

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