御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

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冒険者編

244 朝食

 目を覚ますと宿屋のベッドルームの天井が見えた。

 あれ?

 いつの間にここに来たんだっけ?

 記憶を探るが、自分でここに来た記憶がない。

 ソファの上でウィルが寝ていたのを見た記憶しか残っていない。

 どうやらウィルの横で寝落ちした僕をオーウェンかヴィンセントがここまで運んでくれたようだ。

 小さい子供ならいざ知らず、この歳になってベッドに運ばれるのに気づかないなんてちょっと恥ずかしい。

 しかも、以前にもこうして運ばれたのにまたもや同じ目に遭うなんて…。

 僕は起き上がると思いっきり伸びをした。

 ソファの上のクッションにはウィルが身体を丸めて眠っているが、寝ている間に成長したのか、クッションが少し小さくなっていた。

 そろそろクッションではなく、僕の隣のベッドに寝かせるべきだな。

 そんな事を考えていると、寝ていたウィルが目を覚ますと、クッションの上に起き上がろうとした。

 だが、大きくなったウィルの足がクッションの縁からズルリと滑り、ウィルの身体が斜めになる。

「わわっ」

「ウィル!」

 バランスを崩したウィルはソファから落ちそうになったが、床に届くよりも先に浮遊魔法で浮き上がっていた。

 僕がホッと胸をなで下ろすと、ウィルはそのまま僕のところへ近寄って来た。

「もう流石にベッドに寝ないとダメだね」

 僕が声をかけると、ウィルはチラリとソファの上のクッションを見た。

「フワフワで気に入っていたんだけどな。今晩からはベッドで寝る事にするよ」

 僕が顔を洗って身支度を整えている間にウィルも人間の姿へと変わっていた。

「ドラゴンのままなら顔を洗わなくても済むのにな」

 そう文句を言いながらも顔を洗っているウィルは結構綺麗好きなんだろう。

 リビングに向かうといつものようにオーウェン達の姿がそこにあった。

「おはよう。朝ご飯は外に食べに行きましょうか。たまには場所を変えての食事も良いですよね」

 オーウェンの提案により、宿屋を出て街の食堂へと向かった。

 宿屋からほど近い場所に飲食店が建ち並ぶ界隈があった。

 その中の一軒の店にオーウェンが入って行く。

 ウィルは初めて入った食堂が珍しいのかキョロキョロと店の中を見回している。

 朝の早い時間にもかかわらずお店の中はほぼ満席に近い状態だった。

 空いている席に腰を下ろすと、すぐに店員がやって来た。

「いらっしゃい。ご注文は?」

 まだメニューも開いていないのに、そんな事を聞かれても…。

 そう思ってテーブルの上を見たがメニュー表も何もない。

 オロオロしている間にオーウェンはチラリと壁に目をやって「朝食セットを4つ」と告げていた。

「朝食セットを4つね。少々お待ちを」

 店員はそのまま厨房の方へ向かっていった。

 オーウェンが見ていた壁に目をやるとそこにメニューが貼ってあった。

 だが、今の時間は『朝食セット』しか置いてないようだ。

「ここは主に冒険者達が利用する食堂ですからね。いちいち悩まなくていいように朝は朝食セットしかないんですよ」

 オーウェンの言う通り、店のなかの殆どの客は見るからに冒険者とわかるような出で立ちをしている。

 だけど、どうしてオーウェンは僕達をここに連れてきたのかな?

 オーウェンの真意がわからず、僕は首をかしげるばかりだった。

 
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