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28 想定外の事態
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(どうしてこうなってしまったのだろう?)
アラスター王太子は父親である国王の執務室で書類に目を通しながら、今の現状を考えていた。
家を追い出され、貴族籍を抜かれた上、呪いをかけられたキャサリンを助け出して自国に連れ帰ったまでは良かった。
クシャミで人間と猫の姿を行ったり来たりするキャサリンのために、先にケンブル先生に魔道具を作ってもらい、それから父親に挨拶をさせるつもりだった。
それなのに、いきなりキャサリンと共に呼び付けられて話をさせられた。
キャサリンが苦境に立たされている事をアピールして、手助けをして欲しかったのに上手くいかなかった。
それどころか、部屋に戻った後でキャサリンの滞在期限とその後の身の振り方までも決められる始末だった。
その伝言を持ってきた従者と共に食堂に向かうと、既に父親が座って待っていた。
その場にブリジットがいない事に安堵したが、どうやら二人だけで話がしたかったようだ。
「やっと来たか。そこに座りなさい」
アラスター王太子が渋々と父親の向かいに座ると、給仕が料理を並べていく。
あらかじめ伝えられていたらしく、料理を並べ終えると給仕は食堂を出て行った。
二人きりになって、少々気詰まりな思いで食事を口に運ぶ。
「何故キャサリン嬢を王宮に連れてきたんだ?」
「キャサリン嬢と結婚したいからです。勿論、キャサリン嬢が僕のプロポーズを受け入れてくれたらですが…」
わかっているくせに、わざと聞いてくる父親にアラスター王太子は少しイラついた。
そんなアラスター王太子に対して父親は少し大げさにため息をついてみせる。
「何もわざわざ平民になったキャサリン嬢を連れてくる事もないだろうに…。私は少々お前を甘やかし過ぎたようだな」
「父上、私は…」
「黙りなさい! とにかく私はキャサリン嬢との結婚は認めないぞ! それでもキャサリン嬢と結婚したいと言うのであれば、オリヴァーに王太子の座についてもらうしかないな」
一回り年下の弟の名前を出されて、アラスター王太子はグッと詰まる。
オリヴァーはブリジットが産んだとは思えないほど、素直で優しい子だ。
アラスター王太子の事も兄として慕ってくれている。
ブリジットや彼女を取り巻く貴族達が、オリヴァーを王太子にしようと画策しているのは何となく感じている。
それでも父親はアラスター王太子を廃嫡するとは言っていない。
その事がブリジットには面白くないようだ。
アラスター王太子に何かと絡んでくるのも、あわよくば色仕掛でどうにかしようと思っているのかもしれない。
もっともアラスター王太子はブリジットになびくつもりなど毛頭ない。
(第一、自分が王太子でなくなったら、どうやってキャサリン嬢と生活して行けばいいんだ? 公爵令嬢だったキャサリンが平民の生活なんて出来るわけがない。何とかしてキャサリン嬢を養女にしてくれる貴族を探さないと…)
アラスター王太子は心の中でそう決意すると、父親との食事を終えて自室に戻った。
(明日から王宮に出入りする貴族達と話をして、キャサリン嬢を養女にしてくれる人を探そう)
そして翌朝、キャサリンの部屋に顔を出そうとした所を、侍従が呼びに来た。
「アラスター様、陛下がお呼びです。すぐにいらしてください」
無理にでもアラスター王太子を引っ張って行こうとする侍従に、無理を言ってキャサリンの部屋に顔を出した。
その足で父親の執務室に連れて行かれて書類に目を通している。
エイダも何やら用事を言い付けられていた。
したがってキャサリンは今一人きりであの部屋にいる事になる。
(こんなはずじゃなかったのに…)
この国に帰ったらキャサリンと庭園を散歩したり、一緒にお茶を飲んだりして過ごすはずだったのに…。
アラスター王太子はまた一つため息をつきながら、次の書類に手を伸ばした。
アラスター王太子は父親である国王の執務室で書類に目を通しながら、今の現状を考えていた。
家を追い出され、貴族籍を抜かれた上、呪いをかけられたキャサリンを助け出して自国に連れ帰ったまでは良かった。
クシャミで人間と猫の姿を行ったり来たりするキャサリンのために、先にケンブル先生に魔道具を作ってもらい、それから父親に挨拶をさせるつもりだった。
それなのに、いきなりキャサリンと共に呼び付けられて話をさせられた。
キャサリンが苦境に立たされている事をアピールして、手助けをして欲しかったのに上手くいかなかった。
それどころか、部屋に戻った後でキャサリンの滞在期限とその後の身の振り方までも決められる始末だった。
その伝言を持ってきた従者と共に食堂に向かうと、既に父親が座って待っていた。
その場にブリジットがいない事に安堵したが、どうやら二人だけで話がしたかったようだ。
「やっと来たか。そこに座りなさい」
アラスター王太子が渋々と父親の向かいに座ると、給仕が料理を並べていく。
あらかじめ伝えられていたらしく、料理を並べ終えると給仕は食堂を出て行った。
二人きりになって、少々気詰まりな思いで食事を口に運ぶ。
「何故キャサリン嬢を王宮に連れてきたんだ?」
「キャサリン嬢と結婚したいからです。勿論、キャサリン嬢が僕のプロポーズを受け入れてくれたらですが…」
わかっているくせに、わざと聞いてくる父親にアラスター王太子は少しイラついた。
そんなアラスター王太子に対して父親は少し大げさにため息をついてみせる。
「何もわざわざ平民になったキャサリン嬢を連れてくる事もないだろうに…。私は少々お前を甘やかし過ぎたようだな」
「父上、私は…」
「黙りなさい! とにかく私はキャサリン嬢との結婚は認めないぞ! それでもキャサリン嬢と結婚したいと言うのであれば、オリヴァーに王太子の座についてもらうしかないな」
一回り年下の弟の名前を出されて、アラスター王太子はグッと詰まる。
オリヴァーはブリジットが産んだとは思えないほど、素直で優しい子だ。
アラスター王太子の事も兄として慕ってくれている。
ブリジットや彼女を取り巻く貴族達が、オリヴァーを王太子にしようと画策しているのは何となく感じている。
それでも父親はアラスター王太子を廃嫡するとは言っていない。
その事がブリジットには面白くないようだ。
アラスター王太子に何かと絡んでくるのも、あわよくば色仕掛でどうにかしようと思っているのかもしれない。
もっともアラスター王太子はブリジットになびくつもりなど毛頭ない。
(第一、自分が王太子でなくなったら、どうやってキャサリン嬢と生活して行けばいいんだ? 公爵令嬢だったキャサリンが平民の生活なんて出来るわけがない。何とかしてキャサリン嬢を養女にしてくれる貴族を探さないと…)
アラスター王太子は心の中でそう決意すると、父親との食事を終えて自室に戻った。
(明日から王宮に出入りする貴族達と話をして、キャサリン嬢を養女にしてくれる人を探そう)
そして翌朝、キャサリンの部屋に顔を出そうとした所を、侍従が呼びに来た。
「アラスター様、陛下がお呼びです。すぐにいらしてください」
無理にでもアラスター王太子を引っ張って行こうとする侍従に、無理を言ってキャサリンの部屋に顔を出した。
その足で父親の執務室に連れて行かれて書類に目を通している。
エイダも何やら用事を言い付けられていた。
したがってキャサリンは今一人きりであの部屋にいる事になる。
(こんなはずじゃなかったのに…)
この国に帰ったらキャサリンと庭園を散歩したり、一緒にお茶を飲んだりして過ごすはずだったのに…。
アラスター王太子はまた一つため息をつきながら、次の書類に手を伸ばした。
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