みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅

文字の大きさ
8 / 113

8 魔法の練習

しおりを挟む
 食事は改善されてリーズ達が食べているものとほぼ同じものが僕の食事として出されるようになった。

 全般的に薄味なのがちょっと釈然としないんだけどね。

 よし、この調子でどんどん食べて早く大きくなるぞ!

 …と、意気込んてはみるけれど、現実はそんなに甘くはない。

 リーズ達が寝静まった頃を見計らって人型に変化してみたけれど、相変わらず赤ん坊のままだ。

 それでも少しは成長してハイハイが出来るようにはなっているけどね。

 兄さん達は一月で一歳のペースで大きくなっていたのに対して僕は人間と同じスピードでしか大きくなれないなんて…。

 リーズと同じ大きさになるにはあと10年はかかるって事だよね。

 そんなにも待ってられないよ。

 一刻も早くここを抜け出して父さん達の元に戻りたいのに…。

 手っ取り早く大きくなるにはどうしたらいいんだろう。

 何か魔法で成長出来ないかな。

 せめて兄さん達と同じくらいの成長速度が欲しい。

 そもそも僕に魔法が使えるのかどうかも怪しいのに、いきなり体を成長させるなんて無理な話だよね。

 まずは自分に魔力があるかどうかを見極めないといけないな。

 僕は昼間のリーズの様子を思い出していた。

 リーズも魔力の勉強を始めたばかりみたいで、家でも学校で習ったことを復習していた。

 体の中の魔力の流れを感じ取る事。

 僕は赤ん坊の姿のまま、床に座り込むとお腹に手を当てて魔力の流れを探っていた。

 血液の流れとは別に何かが体中を駆け巡っているような流れを感じる。

 どうやらこれが魔力みたいだな。

 この流れを手のひらに集めるように集中させると、徐々に魔力が集まってきた。

 まだ喋れないので僕は心の中で唱えてみる。

【ライト】

 すると手のひらが少し熱くなりぼうっと明かりが点いた。

 しばらく明かりを点けたり消したりしていたが、不意に頭がクラっとしてきた。

 ヤバい!

 これが魔力枯渇と言うやつか?

 このままの姿で気を失うわけにはいかない。

 僕は慌てて狐の姿に戻るとそこでようやく安心して意識を手放した。




「狐さん、狐さん、生きてる?」

 翌朝、僕の体を揺すりながらリーズが心配そうに呼びかける声で目が覚めた。

 半目を開けてリーズを見上げると、ホッとした表情のリーズの顔がそこにあった。

 何でこんなに心配されてるんだ?

 よく見るとロジェとパメラも僕を心配そうに見つめている。

 どうやら今朝は僕がなかなか目を覚まさないので、皆が心配していたようだ。

 夜中に魔力枯渇を起こしたせいで、回復するまで眠っていたからだろう。

 出された食事を勢いよく食べだすと、皆は呆れたような顔で見ていた。

 魔力枯渇まで起こすのは時々にしたほうが良さそうだ。

 ロジェとリーズが出かけて家にはパメラ一人になった。

 パメラが家事で忙しそうにしている間、僕はこの部屋の中をウロウロして情報収集に励んだ。

 何でもいい。

 この場所の地名が書かれた物とか、この辺りの地図とか、僕が住んでいた場所に関する物とか…。

 だが、特にめぼしい物は何もなかった。

 ただ、何故か書いてある文字が理解出来るのが不思議だった。

 いわゆる異世界補正と言うやつかな。

 テーブルの上に置いている書物をガサガサいじくっていると、不意に扉が開いてパメラが入ってきた。

「あらあら、こんなに散らかして。これはあなたのおもちゃじゃないわよ」

 パメラは僕が散らかした書物をひとまとめにすると、テーブルの上に乗っかっている僕をひょいと抱き上げた。

「ふふっ。モフモフで可愛いわ。少しは大きくなったかしら?」

 母さんとは少し違うけれど、パメラに抱かれてもいい匂いがする。

 気持ち良さについウトウトしてしまうんだな。

 いつの間にか寝てしまった僕はパメラの手によって自分の寝床へと寝かされていた。

 目が覚めると間もなくリーズが帰ってくる時間になっていた。

 今日は学校で何を習って来たんだろう。

 僕にも役立てる事だったらいいのにな。

 夜中にまた皆が寝静まった頃、僕は寝床から起き出すと赤ん坊の姿になり、また魔法の練習を始めた。

【ライト】

 昨日よりは明るい光を灯すことが出来た。

 他の魔法も使ってみたいけれど、火魔法は流石に部屋の中では無理だな。

 風魔法もやはり却下だ。

 そうすると後は水魔法だな。

【ウォーターボール】 

 心の中で詠唱してウォーターボールを出してみた。

 ピンポン玉位の大きさのウォーターボールが出来上がる。

 このウォーターボールを移動させて僕の水入れの中に落としてみる。

 ポチャン!

 しまった!

 落とした位置が高すぎたせいか、反動で水しぶきが水入れの周りに飛び散ってしまった。

 ありゃりゃ、何か拭くものはないかな。

 辺りを見回すけれど、生憎とそんなに都合のいいものは何もなかった。

 仕方がない。

 風魔法を使って乾かしてみようかな。

【ウィンド】 
 
 ほんの少しの風を起こすつもりが思ったよりも強い風が吹いた。

 バサバサ!

 ガシャーン!

 風の強さで何かが倒れたようだ。

 ヤバい!

 皆が起きてくる!

 しかし、僕が思っていたよりも早く部屋の扉が開いて明かりが点いた。

 赤ん坊の姿のまま固まる僕と、僕の姿を見て固まるリーズ達の視線が絡まる。

 …とうとう、バレちゃったかな?

 


 


 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

処理中です...