みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅

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64 奴隷商の男

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 少年から話を聞いてすぐに次の町に辿り着いた僕達は、獣人が入っているらしい籠を持っている男を探した。

 少年によると男が奴隷商の店を出てからまだそんなに時間は経っていないらしい。

 上手く先回り出来たのであればいいが、奴隷商の目的地がはっきりしない以上、雲を掴むような話だ。

 僕達は町の大通りを次の町に向かって歩いて行った。

 時折馬車が僕達を追い抜いて行くが、今追い抜かれた馬車から王都の奴隷商の店で嗅いだような匂いがした。

 これはもしかしてあの奴隷商の匂いか?

 馬車は僕達を追い越して徐々に距離が広がっていく。

 一瞬の事だったので確信は持てないが、追いかけてみる価値はありそうだ。

「テオ、エリク。今の馬車から奴隷商の匂いがしたようなんだけど…」

 そう言うとテオも鼻を少しひくつかせた。

「僕達は奴隷商を直接見てはいないが、確かにあの店で嗅いだような匂いだ。追いかけてみよう」

 僕達は馬車を追いかけて走り出した。

 町中を走る僕達を周りの人達は驚いたような目で見てくるが、そんな事は気にしてられない。

 馬車はさしてスピードを出していないので、すぐに追い付く事が出来た。

 前を走る馬車を追いかけながらもう一度匂いを嗅ぐ。

 やはりあの奴隷商の匂いで間違いないようだ。

 だけど、どうやって走る馬車を止めたらいいんだろう。

 するとエリクが何かを思い付いたように僕達に耳打ちしてきた。

「僕が先回りして馬車を止めるから、シリルは馬車から顔を出した人物が奴隷商かどうか確認してくれ」

 そう言うとエリクは走って馬車を追い抜くと、馬車を引く馬に向かって「ガウッ」と唸り声をあげた。

 馬は突然聞こえた狼の声に怯えて狼狽えると、前脚を上げていななく。

 そのため馬に繋がれている馬車がガタンと揺れて立ち止まった。

 御者は慌てて怯えた馬を宥めようとしている。

 馬車が揺れて立ち止まった事で、馬車に乗っている人物が窓から顔を出して御者を怒鳴った。

「何をやってる! 儂を殺す気か! さっさと走れ!」

 僕は馬車から顔を出した男を見つめた。

 あの奴隷商だ!

 …と言う事は一緒に乗っているのは兄さん達なのだろうか?

 テオはすかさず馬車の扉を開けて奴隷商を引きずり出した。

「うわぁっ! 何をする!」

 テオに引きずり出された奴隷商は地面に尻餅をついて座り込んでいる。

 その隙に僕は馬車の中に入り、座席に置かれた籠を持ち上げた。

「…兄さん?」

 声をかけたが、中に居たのは一匹のハムスターの赤ちゃんだった。

 がっかりはしたが、かと言ってこの子を放ったらかしには出来ない。

 僕が籠を持って馬車を降りると、奴隷商はテオに縛られて転がされていた。

 騒ぎを聞きつけて駆けつけてくる騎士団が向こうの方に見える。

 御者は逃げたそうにしているが、馬はエリクが前にいるので怖がって動こうとしないのでお手上げの状態だ。

「シリル、どうだ? 見つかったか?」

 テオに問われて僕は力無く首を横に振る。

 それを見たテオは奴隷商に詰め寄った。

「おい! 狐の獣人はどうした! 何処に連れて行った!」

 僕達が狐の獣人を探しているらしいとみた奴隷商は「フン」と鼻を鳴らすとそっぽを向いた。

「おい! 言わないと噛み付くぞ!」

 テオがなおも脅すが、奴隷商はどこ吹く風だ。

「殺したきゃ殺すがいいさ。でもそうしたら狐の獣人の居場所は永遠にわからないままだぞ。それでもいいのか?」

 僕達を嘲笑うかのような言葉に僕は愕然となる。

 この様子では例え聞き出したとしても、それが真実かどうかは判断の仕様がない。

 そのうちに騎士団がやってきたのでテオは事情を説明して奴隷商を引き渡した。

 御者も騎士団に事情を聞かれていたが、彼はただパストゥール王国まで彼を乗せるように雇われただけだった。

 僕達はそのままその馬車を使ってこの町の治療院にこのハムスターを送り届ける事にした。

 馬車に乗り込むと僕は籠を開けてハムスターを取り出した。

「ここなら人目がないから人間の姿に変わっても大丈夫だよ」 

 そう言って座席にハムスターを座らせたが、人間の姿になることはなかった。

「おい、シリル。この子は人間に戻れないように首輪を付けられているぞ」

 テオに指摘されて見てみると、確かにその首には黒い首輪がはめられていた。

「これを外さなきゃ駄目だ。…駄目だ。すぐには外せないようになっている」

 テオが首輪を外そうと試みたが、出来なかった。

 僕とエリクもやってみたがやはり首輪を外す事が出来ない。

 首輪は人に変化するのを防ぐと同時に喋れなくなる効果があるようだ。

 ハムスターを救出してもハムスターが喋る事はなかった。

「とりあえず治療院に行ってみるしかないな」

 僕達は馬車に揺られて治療院を目指した。
 
 
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