93 / 113
93 解除
しおりを挟む
兄さんの首輪を解除出来る魔法陣を手に入れた僕は再び公爵に面会を申し込んだ。
公爵家からの返事には二日後に来るようにと書かれていた。
手順なんか取っ払って今すぐにでも公爵邸に乗り込みたいけど、それが出来ないのがもどかしい。
その間にカジミールはベルナールさんを連れて彼の家へと戻って行った。
もっと早く二人のわだかまりが解ければ良かったのにと思わずにはいられなかった。
前回と同じように貴族服に身を包んで馬車に揺られて公爵邸に向かう。
今日こそは兄さんを連れて帰れる。
期待に胸を膨らませて僕は公爵邸の門をくぐった。
馬車を降りてこの前と同じ部屋に通される。
テオ達と一緒に待っているとやがて公爵が姿を現した。
公爵の後に続いて兄さんを入れた檻が部屋の中に入ってくる。
檻の中の兄さんは僕を見るなり檻から前足を差し出してくる。
「この狐の首輪を解除する魔法陣を持ってきたらしいね」
公爵は僕達の向かいに座ると挨拶もそこそこにそう切り出した。
「はい。こちらがその魔法陣です」
テオが魔法陣が書かれた紙をテーブルの上に広げると、公爵はそれを受け取り側にいた執事に手渡した。
執事はその紙を受け取ると兄さんが入っている檻の隙間から差し入れる。
皆が固唾を飲んで見守る中、兄さんはその魔法陣の上に体を乗せていく。
兄さんの四つ足が魔法陣を上に乗るとピカッと魔法陣が光り、兄さんの首に巻かれた首輪がポトリと落ちた。
「…外れた…」
今まで喋れなかった兄さんがやっと一声を発した。
「…狐が喋った?」
公爵を始め、執事や侍女達が兄さんが喋ったのを聞いて驚いている。
「ここから出して! こんな狭い所じゃ人型になれないよ」
狐の姿では大きめな檻でも、人間が入るような大きさではない。
体を丸めたら且つ且つ入れるような大きさの檻だ。
公爵は執事に命じて檻の扉を開けさせた。
兄さんは檻から出るとすぐに人型に姿を変えた。
そこにはビリー兄さんと同じくらいの大きさになったアーリン兄さんが立っていた。
「アーリン兄さん!」
人目もはばからずに兄さんに駆け寄ってその体を抱きしめようとすると、サッと避けられた。
「…兄さん?」
何故避けられたのか理由がわからずに兄さんを見つめると、兄さんは少し戸惑ったような表情で僕を見つめる。
「お前がシリルだとはわかるけど、どうしてそんなに大きくなってるんだ?」
…アーリン兄さんもか。
僕はビリー兄さんにしたのと同じ説明をアーリン兄さんに繰り返した。
「…尻尾が五本?」
僕の説明を聞いてもアーリン兄さんは信じられないといった表情のままだ。
流石にこの場では狐の姿にはなれないので後で見せると約束をした。
兄さんと一緒にテオ達の所に戻るが、兄さんはテオ達にどう接していいかわからないようだった。
それでも僕が一緒に座るように促すと緊張した面持ちで僕の隣に腰を下ろした。
「…本当に狐の獣人だったんだな。君達の所に返すのは吝かではないが、娘の悲しむ姿を思うと返したくはないな」
公爵はしばらく考え込んでいたが、おもむろに口を開いた。
「ねぇ、君。アーリンと言ったかな。檻に入れたりはしないから狐の姿のままで娘の側にいてはくれないか?」
突然の公爵の申し出に僕達は驚きを隠せなかった。
「ちょっと待ってください。どうしてそんな事を仰るんですか?」
テオが抗議するような口調で問うと、公爵は肩を竦めた。
「私は娘の悲しむ顔は見たくないのでね。場合によっては力づくででも君を引き留めるつもりだ」
まさか公爵にそんな事を言われるとは思わなかった。
テオもエリクも険しい表情で公爵を凝視している。
それなのに兄さんはと言うと何故か頬を赤く染めている。
一体どういう事だ?
僕が困惑していると部屋の扉がバン、と開かれた。
公爵家からの返事には二日後に来るようにと書かれていた。
手順なんか取っ払って今すぐにでも公爵邸に乗り込みたいけど、それが出来ないのがもどかしい。
その間にカジミールはベルナールさんを連れて彼の家へと戻って行った。
もっと早く二人のわだかまりが解ければ良かったのにと思わずにはいられなかった。
前回と同じように貴族服に身を包んで馬車に揺られて公爵邸に向かう。
今日こそは兄さんを連れて帰れる。
期待に胸を膨らませて僕は公爵邸の門をくぐった。
馬車を降りてこの前と同じ部屋に通される。
テオ達と一緒に待っているとやがて公爵が姿を現した。
公爵の後に続いて兄さんを入れた檻が部屋の中に入ってくる。
檻の中の兄さんは僕を見るなり檻から前足を差し出してくる。
「この狐の首輪を解除する魔法陣を持ってきたらしいね」
公爵は僕達の向かいに座ると挨拶もそこそこにそう切り出した。
「はい。こちらがその魔法陣です」
テオが魔法陣が書かれた紙をテーブルの上に広げると、公爵はそれを受け取り側にいた執事に手渡した。
執事はその紙を受け取ると兄さんが入っている檻の隙間から差し入れる。
皆が固唾を飲んで見守る中、兄さんはその魔法陣の上に体を乗せていく。
兄さんの四つ足が魔法陣を上に乗るとピカッと魔法陣が光り、兄さんの首に巻かれた首輪がポトリと落ちた。
「…外れた…」
今まで喋れなかった兄さんがやっと一声を発した。
「…狐が喋った?」
公爵を始め、執事や侍女達が兄さんが喋ったのを聞いて驚いている。
「ここから出して! こんな狭い所じゃ人型になれないよ」
狐の姿では大きめな檻でも、人間が入るような大きさではない。
体を丸めたら且つ且つ入れるような大きさの檻だ。
公爵は執事に命じて檻の扉を開けさせた。
兄さんは檻から出るとすぐに人型に姿を変えた。
そこにはビリー兄さんと同じくらいの大きさになったアーリン兄さんが立っていた。
「アーリン兄さん!」
人目もはばからずに兄さんに駆け寄ってその体を抱きしめようとすると、サッと避けられた。
「…兄さん?」
何故避けられたのか理由がわからずに兄さんを見つめると、兄さんは少し戸惑ったような表情で僕を見つめる。
「お前がシリルだとはわかるけど、どうしてそんなに大きくなってるんだ?」
…アーリン兄さんもか。
僕はビリー兄さんにしたのと同じ説明をアーリン兄さんに繰り返した。
「…尻尾が五本?」
僕の説明を聞いてもアーリン兄さんは信じられないといった表情のままだ。
流石にこの場では狐の姿にはなれないので後で見せると約束をした。
兄さんと一緒にテオ達の所に戻るが、兄さんはテオ達にどう接していいかわからないようだった。
それでも僕が一緒に座るように促すと緊張した面持ちで僕の隣に腰を下ろした。
「…本当に狐の獣人だったんだな。君達の所に返すのは吝かではないが、娘の悲しむ姿を思うと返したくはないな」
公爵はしばらく考え込んでいたが、おもむろに口を開いた。
「ねぇ、君。アーリンと言ったかな。檻に入れたりはしないから狐の姿のままで娘の側にいてはくれないか?」
突然の公爵の申し出に僕達は驚きを隠せなかった。
「ちょっと待ってください。どうしてそんな事を仰るんですか?」
テオが抗議するような口調で問うと、公爵は肩を竦めた。
「私は娘の悲しむ顔は見たくないのでね。場合によっては力づくででも君を引き留めるつもりだ」
まさか公爵にそんな事を言われるとは思わなかった。
テオもエリクも険しい表情で公爵を凝視している。
それなのに兄さんはと言うと何故か頬を赤く染めている。
一体どういう事だ?
僕が困惑していると部屋の扉がバン、と開かれた。
11
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる