【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅

文字の大きさ
17 / 52

17 準備

しおりを挟む
 翌朝、スッキリとした頭で目が覚めた。

 前の世界の事を夢で見たりするのかと思ったが、そんな事は一切無い。

 実の親ではなかったとはいえ、十七年も育ててくれた両親の事ですら夢で見ないなんて、なんて薄情なんだろう。

 それどころか顔や声ですら曖昧になってしまっているなんて、異世界転移の弊害なのかしら?

 ベッドの中でモゾモゾしていると、

「アリス様、お目覚めですか?」

と、侍女から声をかけられた。

 私の返事と共に天蓋の幕が開けられて、顔を洗う為のお湯が用意される。

 洗面台がないから仕方がないとはいえ、こうして用意されるのも気が引けるわね。

 かと言って右も左もわからない世界でこのお屋敷から放り出されても困るんだけど…。

 明日、国王様に会ったら、ガブリエラさんにこのお屋敷で働かせて貰えるようにお願いしてみようかしら。

 昨日、仕立て屋さんが持ってきてくれたブラジャーの試作品を身に着けて、ちょっと気分が落ち着いた。

 ノーブラは楽だけど、胸の突起が気になって仕方がないのよね。

 身支度を終えて食堂に向かうと既にガブリエラさんとエイブラムさんは食卓に着いていた。

「おはようございます。遅くなって申し訳ありません」 

「おはよう、アリス。気にする事はないわ。それじゃいただきましょうか」 

 エイブラムさんはお仕事はお休みだけれど、食事の後は王宮に行って剣の訓練をするらしい。

 今日一日一緒に過ごせるかも、と思っていたからちょっとがっかりだわ。

 だけど今日はマナーの練習があるのだから、それにエイブラムさんを付き合わせるのは申し訳ないわね。

「それでは、母上。支度があるのでお先に失礼します。それじゃ、アリス、またね」

 エイブラムさんは先に席を立つと食堂から出ていってしまった。

 その姿を目で追って、エイブラムさんが消えた扉を見つめていると、フッとガブリエラさんの笑った声が聞こえた。

 慌てて姿勢を正すとガブリエラさんが微笑ましいものを見るような目をしているのが目に入った。

 エイブラムさんの事が気になっているのがバレバレみたいなんだけど、ガブリエラさんはそれには触れてこない。

 マナーの先生が来られるまで自室で読書をする。

 あ、ガブリエラさんに『ヒール』が使える事を伝えるのを忘れていたわ。

 マナーの先生にはお辞儀の仕方や、お茶会でのマナー等を教わった。

 漫画なんかでカーテシーの場面を読んだ事があるけれど、実際にやってみると結構大変なのね。

 歩き方の最終チェックもして貰って何とか及第点をもらえたわ。

 午後遅くになって仕立て屋さんがドレスが出来上がったと届けに来た。

「お待たせいたしました。こちらがアリス様のドレスになります」
 
 そう言って仕立て屋さんが取り出したドレスが、仮縫いの時より豪華になっているように見えるのは気の所為じゃ無いわよね。

 いくら国王様に会うとはいえ、こんな豪華なドレスを作って貰っていいのかしら?

 本当に下着の特許料だけで賄えるとは思えないんだけど、本当に大丈夫なのかしら?

「それから、アリス様が発案されたブラジャーと下履きですが、既に何人かの貴族の方からご注文を頂きました」

 私の心配は無用だったみたいで、貴族の方に受け入れられたみたいね。

 ドレスのデザインによってはパット付きのドレスにしてもいいものね。

 夕方に戻って来たエイブラムさんとまた三人で食卓を囲む。

 正面に座って食事をするエイブラムさん、いくら見ていても見飽きないわ。

 でもあんまり見ていると変に思われるから、其の辺の加減が難しいわね。

 ガブリエラさんの意味ありげな微笑みも気になるんだけど。

 夕食を終えて自室に戻り、お風呂の支度が出来るのを待っていた。

 明日はいよいよ王宮に向かうのね。

 ゆっくり休んで万全の体制で臨まなきゃ、ガブリエラさんとエイブラムさんに恥をかかせてしまうわ。

 私はお風呂を終えると早々にベッドに潜り込んだ。

 これがこのお屋敷で過ごす最後の夜になるとは知らずに…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!! 完結済み。 毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

王子様と乳しぼり!!婚約破棄された転生姫君は隣国の王太子と酪農業を興して国の再建に努めます

黄札
恋愛
とある王国の王女として転生したソフィアは赤毛で生まれてしまったために、第一王女でありながら差別を受ける毎日。転生前は仕事仕事の干物女だったが、そちらのほうがマシだった。あげくの果てに従兄弟の公爵令息との婚約も破棄され、どん底に落とされる。婚約者は妹、第二王女と結婚し、ソフィアは敵国へ人質のような形で嫁がされることに…… だが、意外にも結婚相手である敵国の王弟はハイスペックイケメン。夫に溺愛されるソフィアは、前世の畜産の知識を生かし酪農業を興す。ケツ顎騎士団長、不良農民、社交の達人レディステラなど新しい仲間も増え、奮闘する毎日が始まった。悪役宰相からの妨害にも負けず、荒れ地を緑豊かな牧場へと変える! この作品は小説家になろう、ツギクルにも掲載しています。

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

処理中です...