24 / 52
24 王宮の中
しおりを挟む
部屋に戻ってくつろいでいると「仕立て屋が参りました」と告げられた。
入室を許可すると仕立て屋と共にガブリエラさんもやってきた。
「まあ、侯爵夫人。どうしてこちらに?」
「衣装を仕立てるのに陛下やアンドリュー王子では勝手がわからないだろうと思いまして、わたくしが同席させていただく事になりました」
正直、ガブリエラさんが同席してくれて助かった。
お父様達は執務に行ってしまったし、たとえ同席しても役に立ちそうにはない。
その点、ガブリエラさんならば王女としてどういった物を身に着ければいいのかわかるだろう。
だが、そう安心していたのも束の間。
王女という身分だからとあれこれと高額な生地を提案されて、めまいがしてきた。
つい数日前まで庶民だった私としては少々ハードルが高すぎる。
「王妃様がおられない今、この国で一番身分が高いお立場なのですから、最高級の衣装を身に着けるのは当然ですわ」
仕立て屋さんの力説もわかるけれど、おいそれとは頷けないのも理解してほしい。
すったもんだの挙げ句、衣装の注文と共にお父様が用意していたという衣装の手直しもお願いして、仕立て屋との打ち合わせも終わった。
ガブリエラさんも「また近い内に参ります」と言って帰ってしまったが、帰り際私に向かってニコリと微笑んだ。
「エイブラムったらせっかく王宮に来たからと言って騎士団の訓練に行ってしまったわ」
騎士団の訓練場って王宮の中にあるのかしら?
先程お兄様が王宮の案内を、と言っていたのを思い出した。
王宮の中を案内してもらいながら、騎士団の訓練も見学出来たりするのかしら?
「セアラ。王宮の中を案内してもらってもいいかしら? その時に騎士団の訓練も見学したいのだけど…」
そうお願いをするとセアラはすぐに側に控えていた侍従に何やら耳打ちをした。
侍従はすぐさま何処かへ行ってしまったから、騎士団の方に連絡に行ったのかもしれない。
だけど、いきなり見知らぬ私が見学に行っても騎士団の迷惑にはならないかしら?
そう思いながらもセアラに王宮の中を案内してもらった。
今、私がいる所は王族の私的な部分で、他の貴族は入って来られない場所らしい。
向かいの部屋がお兄様の部屋だとは聞いたけれど、そこからお父様の部屋、そしてお母様の部屋と場所を教えられた。
流石にお父様とお兄様の部屋は本人がいないので立ち入る事は出来ないけれどね。
それでもお母様の部屋は入れてもらえたわ。
「王妃様のお部屋は王妃様が生きておられた時のままにしてあります」
セアラが開けてくれた扉から中に入るといかにも貴婦人のお部屋って感じだったわ。
入って左側の壁には家族三人の肖像画が掛けられてあった。
真ん中の小さな男の子はきっとお兄様なのね。
当然の事ながら私の姿はない。
その事にほんの少しだけ鼻の奥がツンとした。
「これはアリス様がお生まれになる少し前に描かれた物です」
セアラの説明によく見ると椅子に座っているお母様のお腹が膨らんでいるのがわかった。
たったそれだけでも少し救われたような気持ちになるのはちょっと現金過ぎるかしら?
私的なエリアから公的なエリアへと足を運ぶと、すれ違う人がチラチラと私を見てくる。
まだ正式に王女だと公表されていないから仕方がない事よね。
セアラに連れられてやがて騎士団の訓練場へとやってきた。
カンッとかキンッとか金属の打ち合う音が聞こえる。
使用しているのは本物の剣ではないらしいけど、それでも当たったら痛いわよね。
剣道の試合なら見たことはあるけれど、こんな剣の打ち合いは初めてだから新鮮だわ。
あ、あそこにエイブラムさんがいる。
私に気付いてくれたみたいでニコリと笑いかけてくれたから、軽く手を振った。
そうして隅っこの方で騎士団の訓練を見ていたのに、気が付けばお兄様とエイブラムさんが剣を持って対峙している。
どうしてこうなったのかしら?
入室を許可すると仕立て屋と共にガブリエラさんもやってきた。
「まあ、侯爵夫人。どうしてこちらに?」
「衣装を仕立てるのに陛下やアンドリュー王子では勝手がわからないだろうと思いまして、わたくしが同席させていただく事になりました」
正直、ガブリエラさんが同席してくれて助かった。
お父様達は執務に行ってしまったし、たとえ同席しても役に立ちそうにはない。
その点、ガブリエラさんならば王女としてどういった物を身に着ければいいのかわかるだろう。
だが、そう安心していたのも束の間。
王女という身分だからとあれこれと高額な生地を提案されて、めまいがしてきた。
つい数日前まで庶民だった私としては少々ハードルが高すぎる。
「王妃様がおられない今、この国で一番身分が高いお立場なのですから、最高級の衣装を身に着けるのは当然ですわ」
仕立て屋さんの力説もわかるけれど、おいそれとは頷けないのも理解してほしい。
すったもんだの挙げ句、衣装の注文と共にお父様が用意していたという衣装の手直しもお願いして、仕立て屋との打ち合わせも終わった。
ガブリエラさんも「また近い内に参ります」と言って帰ってしまったが、帰り際私に向かってニコリと微笑んだ。
「エイブラムったらせっかく王宮に来たからと言って騎士団の訓練に行ってしまったわ」
騎士団の訓練場って王宮の中にあるのかしら?
先程お兄様が王宮の案内を、と言っていたのを思い出した。
王宮の中を案内してもらいながら、騎士団の訓練も見学出来たりするのかしら?
「セアラ。王宮の中を案内してもらってもいいかしら? その時に騎士団の訓練も見学したいのだけど…」
そうお願いをするとセアラはすぐに側に控えていた侍従に何やら耳打ちをした。
侍従はすぐさま何処かへ行ってしまったから、騎士団の方に連絡に行ったのかもしれない。
だけど、いきなり見知らぬ私が見学に行っても騎士団の迷惑にはならないかしら?
そう思いながらもセアラに王宮の中を案内してもらった。
今、私がいる所は王族の私的な部分で、他の貴族は入って来られない場所らしい。
向かいの部屋がお兄様の部屋だとは聞いたけれど、そこからお父様の部屋、そしてお母様の部屋と場所を教えられた。
流石にお父様とお兄様の部屋は本人がいないので立ち入る事は出来ないけれどね。
それでもお母様の部屋は入れてもらえたわ。
「王妃様のお部屋は王妃様が生きておられた時のままにしてあります」
セアラが開けてくれた扉から中に入るといかにも貴婦人のお部屋って感じだったわ。
入って左側の壁には家族三人の肖像画が掛けられてあった。
真ん中の小さな男の子はきっとお兄様なのね。
当然の事ながら私の姿はない。
その事にほんの少しだけ鼻の奥がツンとした。
「これはアリス様がお生まれになる少し前に描かれた物です」
セアラの説明によく見ると椅子に座っているお母様のお腹が膨らんでいるのがわかった。
たったそれだけでも少し救われたような気持ちになるのはちょっと現金過ぎるかしら?
私的なエリアから公的なエリアへと足を運ぶと、すれ違う人がチラチラと私を見てくる。
まだ正式に王女だと公表されていないから仕方がない事よね。
セアラに連れられてやがて騎士団の訓練場へとやってきた。
カンッとかキンッとか金属の打ち合う音が聞こえる。
使用しているのは本物の剣ではないらしいけど、それでも当たったら痛いわよね。
剣道の試合なら見たことはあるけれど、こんな剣の打ち合いは初めてだから新鮮だわ。
あ、あそこにエイブラムさんがいる。
私に気付いてくれたみたいでニコリと笑いかけてくれたから、軽く手を振った。
そうして隅っこの方で騎士団の訓練を見ていたのに、気が付けばお兄様とエイブラムさんが剣を持って対峙している。
どうしてこうなったのかしら?
9
あなたにおすすめの小説
山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する
紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!!
完結済み。
毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
モンスターを癒やす森暮らしの薬師姫、騎士と出会う
甘塩ます☆
恋愛
冷たい地下牢で育った少女リラは、自身の出自を知らぬまま、ある日訪れた混乱に乗じて森へと逃げ出す。そこで彼女は、凶暴な瘴気に覆われた狼と出会うが、触れるだけでその瘴気を浄化する不思議な力があることに気づく。リラは狼を癒し、共に森で暮らすうち、他のモンスターたちとも心を通わせ、彼らの怪我や病を癒していく。モンスターたちは感謝の印に、彼女の知らない貴重な品々や硬貨を贈るのだった。
そんなある日、森に薬草採取に訪れた騎士アルベールと遭遇する。彼は、最近異常なほど穏やかな森のモンスターたちに違和感を覚えていた。世間知らずのリラは、自分を捕らえに来たのかと怯えるが、アルベールの差し出す「食料」と「服」に警戒を解き、彼を「飯をくれる仲間」と認識する。リラが彼に見せた、モンスターから贈られた膨大な量の希少な品々に、アルベールは度肝を抜かれる。リラの無垢さと、秘められた能力に気づき始めたアルベールは……
陰謀渦巻く世界で二人の運命はどうなるのか
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
氷の騎士と陽だまりの薬師令嬢 ~呪われた最強騎士様を、没落貴族の私がこっそり全力で癒します!~
放浪人
恋愛
薬師として細々と暮らす没落貴族の令嬢リリア。ある夜、彼女は森で深手を負い倒れていた騎士団副団長アレクシスを偶然助ける。彼は「氷の騎士」と噂されるほど冷徹で近寄りがたい男だったが、リリアの作る薬とささやかな治癒魔法だけが、彼を蝕む古傷の痛みを和らげることができた。
「……お前の薬だけが、頼りだ」
秘密の治療を続けるうち、リリアはアレクシスの不器用な優しさや孤独に触れ、次第に惹かれていく。しかし、彼の立場を狙う政敵や、リリアの才能を妬む者の妨害が二人を襲う。身分違いの恋、迫りくる危機。リリアは愛する人を守るため、薬師としての知識と勇気を武器に立ち向かうことを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる