いつか、桜の森で。【8P短編】

ジェリージュンジュン

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――秋。



 私は、緑色の葉が散り始めた桜の森を眺めていた。


 5ヵ月と27日。


 彼が私の側からいなくなって、もう半年近くが経とうとしていた。


 桜の森の木々たちの変化は、否応なしに、私に時間の経過をもたらしてくる。


ちなみに私は、今も同居人と暮らしている。

でも、相手は変わった。

 今度も男性だ。

 前と同じく、管理人さんの紹介だった。

 誠実でいい人だけど、恋愛感情はもちろんない。


なぜなら、私が恋をする相手は彼以外にいないから。


 最近、こんな噂話を聞いた。

 都会に出て行った彼。

 彼はどうやら、華々しい世界に飛びこんだようだ。

 誰もが羨む憧れの世界。

 彼はその世界で、アイドルになっていた。

みんなから、キャーキャー言われる存在。

 見る者に、夢や希望を与える存在。

まさに、今、人気絶調のアイドルになっていた。


 本当は、私も祝福してあげたい。


すごいね。

 頑張ったんだね。

と、笑顔で拍手をしてあげたい。


でも私は、その気持ちとはうらはらに、胸がチクリと痛んだ。

 彼は、華やかな世界で活躍している。

みんなの憧れの的として、頑張っている。


これからも応援するのが当たり前なのだろう。


でも、できない。

 私にはできないよ。

あなたが、遠くへ行ってしまう。

どんどん、遠くへ行ってしまう。

あなたが活躍すればするほど、私の恋心は増すばかり。

 叶わない恋。

やっぱり、あの時の約束は嘘だったの?

エイプリルフールの軽いジョークだったの?


でもね、それでもいいんだ。

 私は待ってるから。

だって、私はあなたが好きだから。

あなたに恋をしているから。

 葉っぱの落ちた桜の森は、冷たい風に揺られて、なんだか寂しそうなダンスを披露していた。





 私は待っています



桜の森の満開の下で



私は、あなたを待っています



 ずっとずっと、待っています





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