277 / 375
第11章
第277話
しおりを挟む
「ケイ殿に捕まえていただいた者たちと、遺体から色々と情報が手に入りました」
「あぁ、ありがとう」
密かに魔人大陸に潜入して来たどこかの国の斥候を捕まえたケイ。
生け捕りにした2人と息の根を止めた6人の遺体の扱いは、説明をしてバレリオに任せた。
国内への侵入ならともかく、さすがに大陸に入ってくる者までは察知できない。
それをケイに捕縛してもらえ、バレリオたちには感謝された。
どうやって聞き出したかは聞いていないが、捕まえた2人と6人の遺体から得た情報を、バレリオはわざわざ羊皮紙に書いてケイに渡してくれた。
「エヌーノ王国? 聞いたことない国だな」
ケイは、日向に向かうために人族大陸の横断をした事がある。
とは言っても、南の方が中心だったため、北の方にある国のことはよく分からない。
恐らく、エヌーノという国は北側に存在する国なのだろう。
聞き覚えがないのは仕方がない。
「エルスール王国の南に最近できた小さい国のようです。人族の中でもそれほど知られていないとか」
「結構北だな」
エルスール王国と聞いて、ケイはなんとなくエヌーノ王国の場所を理解する。
何故なら、エルスール王国が北にある国だということは有名だからだ。
北にあり、領土の半分は冬になると超極寒になるという話だ。
アンヘル島では雪はあまり降らないので、雪の積もった白銀の世界というのは見ることはない。
見てみたい気もするが、前世の時から寒いのが苦手なケイは、あまり行きたくない国の1つだ。
「山に囲まれた小さな町が勝手に国を名乗ったといったところらしいです」
「なるほど」
大体の位置が分かったケイに、バレリオは人族大陸の地図を出してエヌーノ王国の位置を指さして教えてくれた。
たしかに、指さしたところは全方位を山に囲まれており、国と呼ぶには小さい。
「領土拡大を図りたくても、他の国に攻め込めるほどの巨大ではないうえに、攻め込むにしても山越えで労力を奪われるため、とてもではないが無理なようです」
「そりゃそうだろ」
そもそも、エヌーノ王国は国を名乗るほどの大きさの国ではない。
エルフ王国を名乗るアンヘル島の半分くらいの大きさしかない。
それがエルスールはもちろんのこと、周囲の国へ攻め込むなんて無謀も良いところだ。
周囲の国も、わざわざ手に入れに動くほどの地と思っていないのか、完全に孤立している。
「それで、魔人領を得て、巨大な領地を手に入れようって考えか?」
「そのようです」
周辺の国から領土を奪いたくても不可能。
なら、どこなら可能かと考えた時、魔物は強くても人が住んでいる場所は少ない魔人大陸に目を付けたのかもしれない。
山に囲まれているが、エヌーノ王国には1か所だけ海岸があるさしく、そこから西に向かえば魔人大陸にはすんなり上陸できるらしい。
何かと都合が合い、他の選択を考えなくなったのか、エヌーノ王は魔人大陸侵攻を決めたらしい。
「今回の斥候の人数が少ないのも人員不足からか?」
潜入にしては人数が少ないため、ケイが相手した8人は少数精鋭で送ってきたのかと思ったが、話から考えると人材不足という方がしっくりくる。
何しろ、実力自体もたいしたことなかったからだ。
魔力操作のレベルは、本格的に訓練し始めて3ヵ月程度のバレリオより少し上なくらい。
戦いでは魔力操作が重要だが、それだけで決まるというものでもない。
他にも剣術などの練度などの総合的なことも関わってくるので、恐らく1対1ならバレリオが勝てる可能性が高い。
その程度の実力の者ばかりなら、ドワーフ王国の援護のあるエナグアなら有利に戦えるはずだ。
「俺が進入して来てもいいんだが……」
アンヘル島よりも小さい領土の国なら、ケイが密かに進入して暗躍すればもっと有利にすることができるかもしれない。
それをすれば、そもそも魔人大陸への侵攻ということすらなくなるかもしれない。
「……だからか?」
ドワーフ王国の王太子であるセベリノは、ケイに魔人たちの強化だけを頼んで来た。
ケイに言えば、そもそも侵攻すら防げるというのにそれを頼んで来なかった。
もしかしたら侵攻して来るのを待っているかのようにも思えてくる。
勝てるかもしれないとは言っても、戦争になるのを良しとするとは考えにくいが、なんとなくそう思えてくる。
「わざわざドワーフの力を借りなくても強くなれって言いたいのか?」
攻めて来るとしても、残り3ヵ月程。
それだけの期間があれば、もしかしたらエナグアだけで勝てるようになるかもしれない。
セベリノはそれを期待しているのだろうか。
いつまでもドワーフ製の武器に頼っている様では成長が見込めない。
そうなると、毎回ドワーフに助力を求めてくることになる。
いくらなんでも毎回となったら、ドワーフたちも迷惑だ。
しかし、自分たちの武器を評価してもらっている魔人たちに、武器を渡した自分たちが直接言うのは躊躇われる。
だから、あまり魔人とは関係のないエルフのケイに頼んでしまおうという考えに至ったのではないだろうか。
「……後で、魔道具沢山要求しよう」
思いついたらそうとしか思えなくなってきてしまった。
別にそれならそれで構わないが、黙っていなくてもいい気がする。
なので、ケイはちょっと腹いせに、報酬の魔道具を多めにもらうことにしたのだった。
「あぁ、ありがとう」
密かに魔人大陸に潜入して来たどこかの国の斥候を捕まえたケイ。
生け捕りにした2人と息の根を止めた6人の遺体の扱いは、説明をしてバレリオに任せた。
国内への侵入ならともかく、さすがに大陸に入ってくる者までは察知できない。
それをケイに捕縛してもらえ、バレリオたちには感謝された。
どうやって聞き出したかは聞いていないが、捕まえた2人と6人の遺体から得た情報を、バレリオはわざわざ羊皮紙に書いてケイに渡してくれた。
「エヌーノ王国? 聞いたことない国だな」
ケイは、日向に向かうために人族大陸の横断をした事がある。
とは言っても、南の方が中心だったため、北の方にある国のことはよく分からない。
恐らく、エヌーノという国は北側に存在する国なのだろう。
聞き覚えがないのは仕方がない。
「エルスール王国の南に最近できた小さい国のようです。人族の中でもそれほど知られていないとか」
「結構北だな」
エルスール王国と聞いて、ケイはなんとなくエヌーノ王国の場所を理解する。
何故なら、エルスール王国が北にある国だということは有名だからだ。
北にあり、領土の半分は冬になると超極寒になるという話だ。
アンヘル島では雪はあまり降らないので、雪の積もった白銀の世界というのは見ることはない。
見てみたい気もするが、前世の時から寒いのが苦手なケイは、あまり行きたくない国の1つだ。
「山に囲まれた小さな町が勝手に国を名乗ったといったところらしいです」
「なるほど」
大体の位置が分かったケイに、バレリオは人族大陸の地図を出してエヌーノ王国の位置を指さして教えてくれた。
たしかに、指さしたところは全方位を山に囲まれており、国と呼ぶには小さい。
「領土拡大を図りたくても、他の国に攻め込めるほどの巨大ではないうえに、攻め込むにしても山越えで労力を奪われるため、とてもではないが無理なようです」
「そりゃそうだろ」
そもそも、エヌーノ王国は国を名乗るほどの大きさの国ではない。
エルフ王国を名乗るアンヘル島の半分くらいの大きさしかない。
それがエルスールはもちろんのこと、周囲の国へ攻め込むなんて無謀も良いところだ。
周囲の国も、わざわざ手に入れに動くほどの地と思っていないのか、完全に孤立している。
「それで、魔人領を得て、巨大な領地を手に入れようって考えか?」
「そのようです」
周辺の国から領土を奪いたくても不可能。
なら、どこなら可能かと考えた時、魔物は強くても人が住んでいる場所は少ない魔人大陸に目を付けたのかもしれない。
山に囲まれているが、エヌーノ王国には1か所だけ海岸があるさしく、そこから西に向かえば魔人大陸にはすんなり上陸できるらしい。
何かと都合が合い、他の選択を考えなくなったのか、エヌーノ王は魔人大陸侵攻を決めたらしい。
「今回の斥候の人数が少ないのも人員不足からか?」
潜入にしては人数が少ないため、ケイが相手した8人は少数精鋭で送ってきたのかと思ったが、話から考えると人材不足という方がしっくりくる。
何しろ、実力自体もたいしたことなかったからだ。
魔力操作のレベルは、本格的に訓練し始めて3ヵ月程度のバレリオより少し上なくらい。
戦いでは魔力操作が重要だが、それだけで決まるというものでもない。
他にも剣術などの練度などの総合的なことも関わってくるので、恐らく1対1ならバレリオが勝てる可能性が高い。
その程度の実力の者ばかりなら、ドワーフ王国の援護のあるエナグアなら有利に戦えるはずだ。
「俺が進入して来てもいいんだが……」
アンヘル島よりも小さい領土の国なら、ケイが密かに進入して暗躍すればもっと有利にすることができるかもしれない。
それをすれば、そもそも魔人大陸への侵攻ということすらなくなるかもしれない。
「……だからか?」
ドワーフ王国の王太子であるセベリノは、ケイに魔人たちの強化だけを頼んで来た。
ケイに言えば、そもそも侵攻すら防げるというのにそれを頼んで来なかった。
もしかしたら侵攻して来るのを待っているかのようにも思えてくる。
勝てるかもしれないとは言っても、戦争になるのを良しとするとは考えにくいが、なんとなくそう思えてくる。
「わざわざドワーフの力を借りなくても強くなれって言いたいのか?」
攻めて来るとしても、残り3ヵ月程。
それだけの期間があれば、もしかしたらエナグアだけで勝てるようになるかもしれない。
セベリノはそれを期待しているのだろうか。
いつまでもドワーフ製の武器に頼っている様では成長が見込めない。
そうなると、毎回ドワーフに助力を求めてくることになる。
いくらなんでも毎回となったら、ドワーフたちも迷惑だ。
しかし、自分たちの武器を評価してもらっている魔人たちに、武器を渡した自分たちが直接言うのは躊躇われる。
だから、あまり魔人とは関係のないエルフのケイに頼んでしまおうという考えに至ったのではないだろうか。
「……後で、魔道具沢山要求しよう」
思いついたらそうとしか思えなくなってきてしまった。
別にそれならそれで構わないが、黙っていなくてもいい気がする。
なので、ケイはちょっと腹いせに、報酬の魔道具を多めにもらうことにしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい
木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。
下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。
キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。
家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。
隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。
一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。
ハッピーエンドです。
最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる