エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸

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第12章

第311話

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「おのれ! 人間ごときが!!」

 至近距離からの攻撃を受けて、体に大穴を開けていたギジェルモ。
 大量の血を地面に垂れ流し、少しの間苦しみもがいた後、ケイに開けられた体の穴が修復されていった。
 光魔法による攻撃により、修復と共に魔力も失った。
 このままではケイとの魔力量の差が開く一方だ。
 そのため、負けるというイメージが湧いてきたギジェルモは、最初の余裕がどこへ行ったのか怒りで我を忘れているかのようだ。

「俺が負けるはずがない! 負ける訳にはいかない!」

「……独り言か?」

 どこを見ているのか分からない状態で、ギジェルモは独り言のように呟き始めた。
 何度も痛めつけられたことで、ストレスで脳の血管でも切れたのだろうか。

「あのに仕える俺が、負けるはずがない!」

「……あの方? 誰のことを言っているんだ?」

 聞かれているということすら忘れているのか、何だか気になるような発言をしたのがケイには聞こえた。
 たしかに、何者かがギジェルモの行動に関わっているかのような発言だ。
 しかも、あの方などと言う物言いから察するに、ギジェルモ以上の実力の持ち主ということになる。
 今となってはケイの方が押しているが、ギジェルモが余裕をかましていなかったら、魔力を削るのにもっと苦労していたことだろう。
 そんなギジェルモ以上となると、ケイの本音としては関わりたくない所だ。

「おのれ! おのれ! おのれ! おのれ!」

「おい! あの方ってのは誰だって聞いてんだよ!」

 何だかどんどんエスカレートしていく恨みにより、ギジェルモは魔力を今まで以上に多く出して身に纏い始めた。
 何をする気なのかということも気になるが、あの方とか言う者の話が知りたいケイは、脅して吐かせようとするように左手の銃をギジェルモの方に向けた。

「おのれ――!!」

「っ!! ……そんな量の魔力を使ってどうしようってんだ?」

 ずっと放出し続けた魔力がかなりの量まで来ると、その魔力を纏ったギジェルモが、ケイに対して目を向けた。
 これまで以上の魔力による魔闘術にしているようだが、とてもコントロールできるようなレベルの魔力量ではない。
 コントロールできない魔力によって、反動がギジェルモ自身に襲い掛かってくるのが目に見えている。
 そのため、怒りでまともに戦うことも出来なくなったのかと、僅かにケイの警戒感が薄れたのは仕方がない。

「ガァッ!!」

「——―っ!!」

 ギジェルモが大量の魔力で魔闘術をおこない、そのまま地面を蹴った瞬間、ケイはすぐに警戒感を元に戻した。
 瞳孔の開いた眼で飛び出したギジェルモが、一瞬にしてケイの間合い入り、持っていた剣で一閃放ってきたのだ。

「……速い!!」

 ギリギリの所で躱すことに成功したが、突進力を利用した突きがケイの服を腹部分を浅く斬り裂いていた。
 これまでよりも急激に加速した移動速度に、危うく串刺しにされるところだった。
 いきなりのことに、ケイは冷や汗を食ことになった。

「ガァッ!!」

「くっ!!」

 攻撃を躱されたギジェルモは、すぐにターンをしてまたもケイへと接近を開始する。
 今度は同じようにいく訳にはいかないと、ケイも両手の銃で攻撃をする。
 その銃弾をサイドステップをして躱し、またもケイへと接近を計る。
 これまでと違い、近付かれるとその突進力に痛手を受ける可能性がある。
 そのため、近付こうとしてくるギジェルモに攻撃を放ちながら、ケイは距離を取ろうとバックステップをおこなった。

「ガァー!!」

「しつけえな!!」

 ケイが距離を取ろうと、何度も銃撃して足止めを計ろうとするのだが、それを躱してすぐに距離を埋めようとギジェルモが迫って来る。
 ずっと同じことの繰り返しに、ケイの方が先に焦りを感じ始めた。
 ジワジワと互いの距離が詰まってきているからかもしれない。

「グゥ……」

「……意識が飛んでんのか?」

 迫り来るギジェルモの眼がどこを向いているのか分からず、まるで意識が飛んでいるかのように見える。
 ケイの銃撃を最短距離で躱しているのは、意識を飛ばして野性的な反応を呼び覚ましているのかもしれない。

「バッ!!」

「ぐっ!! やっぱりスピードだけでなくパワーまで上がってやがる!!」

 とうとうケイに追いついたギジェルモは、剣を横薙ぎにしてケイの胴を斬り裂こうとしてきた。
 その攻撃に対し、ケイは両手の銃を使って防いだ。
 元々ギジェルモの方がパワーは上だったが、攻撃を防いだ衝撃を考えると明らかに上昇している。
 自ら後方に飛ぶことで衝撃を防ごうとしたケイだが、予想以上に飛ばされる形になった。

「距離を取らせてもらってありがとさん!」

「っ!!」

 威力があり過ぎるのは、今回の場合はケイにとって都合が良かった。
 飛ばされたことで距離を取ることができた。
 これなら逃げながらではなく、万全の態勢で攻撃をできる。
 今度は近付くことなどできないように、銃を連射し始めた。

「ガアァー!!」

「……おいおい。マジか……?」

 ケイのマシンガンのような連射攻撃をバックステップで躱して更に距離を取った所で、ギジェルモは更に魔力を増やして纏い始めた。
 これまでも魔力のコントロールが完全ではなく、振り回されている感も否めないでいたが、これ以上となれば完全に体が耐えきれるわけがない。
 自爆でもしようとしているのだろうか。

「ガアッ!!」

「おわっ!!」

 さらに速度を上げたギジェルモは、ケイの攻撃を剣で弾きながら接近してきた。
 数を増やした分威力が弱まっているとは言っても、お構いなしと言うかのような直線的な動きだ。
 魔力量を増やしたことで防御力も上がっているのだろう。
 剣では止め切れないと判断したら、左手で受け止めてそのまま距離を詰めてきた。
 弾丸を受け止めた左手は浅く穴が開いただけで、たいした痛手を与えていないようだ。

「ガアッ!!」

“ブチブチッ!!”

「っ!! 筋肉が切れてもお構いなしか!?」

 魔力を増やしてたことで、思った通り体が耐えきれないでいるようだ。
 ギジェルモが近くまで迫った時、踏ん張った瞬間変な音が聞こえて来た。
 体への負荷によって、筋肉が切れているようだ。

「ぐっ!!」

 更に速度が増した攻撃を、ケイは銃を使って防いだが、吹き飛ばされると同時に手が痺れてきた。
 まともに食らえば、一発で致命傷になってしまうだろう。

「ぐぅ……」

「体が耐えられなくても再生するから気にしないって事か……? ふざけた体しやがって!」

 数度の衝突で、ようやくギジェルモの意図が分かった。
 超回復と光属性の攻撃以外ではたいした痛手にならないことを利用し、自分の魔力で自分が傷ついても回復させればいいと、膨大な魔力を魔闘術に使っているようだ。
 ケイには真似できない方法により、一気に実力差を埋めてきたようだ。

「ガッ!!」

「っ!!」

 悪態をついているケイに、もはや会話をしなくなったギジェルモは剣を振り回してきた。
 その剣を何とか銃で防ぐが、距離を取っての攻撃ができなくなってきた。

「ガアッ!!」

「ぐあっ!!」

 剣の攻撃ばかりを注意していたためか、空いていたケイの腹にギジェルモの回し蹴りが当たった。
 何とか威力を抑えようと、当たる瞬間に魔闘術の魔力を増やす。
 それでなんとか骨が折られるのを防ぐが、直撃によって一瞬息が止まった。

「銃は遠距離攻撃しか使えないと思うなよ!!」

 蹴られた部分の痛みを我慢して、ケイはギジェルモを接近で迎え撃つことを覚悟した。
 逃げ回っても痛手が与えられないうえに距離を取っても意味がないのでは仕方ない。

「何とかして捕まえて、あの方とやらを聞きだしてやる!!」

 人間界に迷惑をかける存在でしかない魔族。
 ギジェルモほどの者が従っている所を見ると、かなりの戦闘力の人間なのだと想像できる。
 そんな奴を野放しにして置いたら、エルフの国にも危険が迫るかもしれない。
 そんなことにならないように、そいつを見つけて何とかしないといけない。
 そのため、ケイはギジェルモを何としても弱らせて、捕まえてやると考えるようになっていた。

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