主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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1学年 前期

第16話

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「……やっぱでかいな」

 1~2時間くらい高速を飛ばして、ようやくたどり戸谷雷州の着いたのは星空せいくう市。
 柊家が地盤としている町として知られている町だ。
 車から降りると、伸は目の前に広がる庭園と豪邸に思わず呟いた。

「噴水まであるよ……」

 木畑により玄関まで案内を受ける中、伸は横目で見た景色にまたも呟いた。
 広がる庭園の一部に、噴水まで作られている。
 魔物の討伐で財を成した一族で有名だが、ここまで築くのにどれほどの月日がかけられたのだろう。
 
「こちらでお待ちいただけますか?」

「どうも……」

 まず伸が案内されたのは、待合室のような場所だった。
 木畑さんの様子からすると、どうやら到着したことを当主に伝えに行ったのかもしれない。

「いらっしゃい」

「んっ?」

 木畑さんと入れ替わるように、伸にここに来ることになった要因である柊綾愛が現れた。
 平日は学園の女子寮に住んでいるのだが、今日のことがあって昨日のうちに戻って来ていたのだろう。
 制服姿しか見たことがなかったのだが、普段の洋服姿は新鮮に感じた。

「悪かったね。わざわざ来てもらって」

「選択肢がなかったんだから仕方がない」

 せっかくの休みの日に、高級車とはいえある程度の時間かけて連れてこられたことに、綾愛は軽く謝ってきた。
 どうやら、呼び出した内容が内容なだけに、申し訳なく思っているようだ。
 呼び出しに応じなければ強制的に招待されるなんて言われていたのだから、伸としては来ない訳にはいかなかった。
 だから、謝られてもどうしようもない。

「当主様には失礼のないようにした方が良いですよ」

 ここに来たのは綾愛だけではなかった。
 学園内と同じように、杉山奈津希も一緒に来ていた。
 これから当主に会うというのに、伸が全く緊張している様子がない。
 問題児とはいっても、同じ学園に入学したばかりの学生だ。
 綾愛と違い伸の実力を知らない奈津希は、伸が当主にまで普通に接しそうで気になった。
 当主の怒りを買って、冗談交じりに言っていたことが本当になるのは気が引けたため、念のため釘を刺しておくことにしたようだ。

「分かってるよ。……って、杉山はここだとメイド服なのか?」

 面倒だとは思っているだけで、緊張はしていない。
 荒事になったとしても、切り抜ける自信があるためだ。
 目を付けられても困るので、当たり障りなく済ませるつもりだ。
 それよりも気になることがあった。
 奈津希がメイド姿だったのだ。
 柊家の従者の家系という話だったが、まさかこんな姿で給仕をおこなっているとは思わなかった。

「そうです。欲情しましたか?」

「おかしなこと言うチビッ子だ」

「失礼な!」

 恰好を指摘された奈津希は、からかうように問いかけてくる。
 しかし、身長的も体格的も色々・・と寂しい奈津希では、何だか子供が大人を真似ているように見えてしまう。
 その手・・・の興味は持ち合わせていないため、伸は平然と言葉を返した。
 考える素振りすら見せずに返答されたことで、奈津希は冗談だったとはいっても若干ショックを受けていた。

「新田様。ご当主様の準備が整いましたのでご案内いたします」

「分かりました」

 綾愛たちと話していると、木畑さんが戻ってきた。
 伸は椅子から立ち上がり、その案内に従うことにした。

「お嬢様たちはお越しになられなくてもよいとのことです」

「えっ? 何で?」

 伸に続いて、綾愛たちも付いて来ようとする。
 それに対し、木畑さんは2人を止めに入る。
 伸を呼んだことに無関係ではないため、綾愛は自分が止められる理由が分からず木畑に問いかけた。

「私には分かりません。ご当主様の仰ったことなので……」

「そう……」

 木畑も当主に言われたことなので、理由を言うことができない。
 そう言われてはどうしようもない綾愛は、渋々それを受け入れるしかなかった。





「よく来てくれた。私は柊俊夫としお、柊家の当主をしている者だ」

「初めまして。新田伸と申します」『殺気漏れてますよ』

 案内されたのは和室だった。
 外から見ると洋風な邸のように見えたが、和室があるのは俊夫の好みなのだろうか。
 部屋はともかく、とりあえず対面の座布団に正座をすると俊夫が名乗ってきたため、伸も返すように名前を名乗ったのだった。
 会って早々だが、いい気分はしない。
 というのも、俊夫は抑え込んでいるようだが、僅かに殺気が漏れていたからだ。

「あの……、娘さんのことなら……」

「いや、君を呼んだのは娘のことではない」

 少しの沈黙があり、伸は早々に誤解を解いておこうと話しかけようとしたのだが、その途中で俊夫に止められることになった。
 綾愛からは噂による確認だと聞いていたのに、それが違うというのはどういうことだろう。

「……では、何故……?」

 噂の剣でないというなら、他に心当たりがない。
 そのため、伸は呼ばれた理由を俊夫に問いかけた。

「先日、学園で魔物の襲撃があったね?」

「……はい」

 呼ばれた原因が先日の魔物の話となると、伸はいやな予感がしていた。

「あの時の魔物を娘が倒したと聞いて喜んだのだが、どうも違和感を感じている」

「違和感ですか?」

「うむっ」

 学園に魔物が出たと聞き、その時俊夫は大いに慌てた。
 だが、それがすぐに倒され、倒したのが綾愛だということを聞いて今度は歓喜した。
 しかし、関係者から話を聞いていると、何となく違和感を感じてきたのだ。

「あの魔物と戦った教師陣からは、学生が倒せるかは微妙な実力だったが、まさか一人で倒してしまうとは思わなかったと言っていた」

「……一応手伝った者もいるんですけどね」

 教師陣にまで聞いたのでは、確かに違和感を持つだろう
 話している最中だが、何となく自分に何が聞きたいのか分かってきた。
 先程の殺気も、もしかしたら関係しているのかもしれない。
 せめてもの抵抗として、伸は完全に綾愛一人で倒したのではないように話を持って行こうとした。

「それだとしても不思議だ。自分で言うのも何だが、娘は優秀だ。ただ、娘がそこまで飛びぬけた実力者だとは思えない。鷹藤・・家の長男なら分からないが……」

「……そうですか」

 奈津希から娘を溺愛する父という話だったが、どうやらそれは嘘ではないようだ。
 話の中に娘自慢が入っている。
 しかし、やはり名門の当主だけあるらしく、それに目をくらませるようなことはなかったらしい。
 教師の誰かから聞いた魔物の実力と、綾愛の実力を考えると、勝てるとは思えなかったのだろう。
 鷹藤の長男というのは、隣の地区である官林地区の魔術学園に今年入学した生徒のことだ。
 伸や綾愛の学年の中では、最強の魔術師だといわれている。
 名門鷹藤家の長男で、魔物の討伐ももう経験済みだという話だ。
 多くの魔術を使いこなし、大和王国最強の魔術師である祖父にもいつか追いつくのではないかといわれている。
 俊夫もその話を聞いているため、娘じゃなくその鷹藤家の長男が倒したと聞いたのなら納得していただろう。

「娘にもどうやって倒したのかとかを聞いたのだが、どうも要領を得なくてね……」

「何が言いたいのですか?」

 口止めしていたが、綾愛では誤魔化しきれなかったのだろう。
 綾愛に話を聞いていた中で、伸が何か知っていると俊夫の中で浮かび上がったのかもしれない。
 聞きたくない一族の名前が出て来て若干不愉快な思いになるが、伸は表情に出さず問いかける。

「率直に聞こう」

 ここまでの話の仕方で聞きたいことはなんとなく分かる。
 俊夫の中で、魔物を倒したことに関係しているのが確定しているような雰囲気だ。
 ならば、あの魔物を倒すような人間がどんな人間で、どうしてこれまで隠れていたのか知りたいのだろう。

「君は何者だね?」

 俊夫の質問に対し、伸の中では話すべきか、それとも逃走を図るべきかなどの色々な考えが浮かんでいたのだった。

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