主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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1学年 前期

第55話

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「何してんだよ? 了!」

「でかい魔物が出たって聞いて、せめて避難の誘導にきたんだ。そしたら子供が襲われているのが見えたんだが、伸だったか……」

 海岸に突如現れた巨大イカの魔物を退治しようとしたところに、急遽割り込んでくる者がいた。
 伸からしたらはっきり言って迷惑な存在だ。
 それが誰かと思ったら、まさかの了だった。
 予想外の了との遭遇に、伸は思わずこの場に来た理由を尋ねた。
 すると、どうやら巨大イカと戦う者の姿を見て、了は襲われていると勘違いしたようだ。
 それで、思わず助けに来てしまったということらしい。

「子供って……、自分がでかいだけだろ……」

 たしかに、伸は高校1年生だから、離れた所から見るとまだ子供のように見えるかもしれない。
 高校1年の平均身長より低いのはたしかだが、まだちゃんと成長している。
 180cm近い身長の了は大人に見えるだろうが、子ども扱いされることには何だか納得できない。
 そのため、伸は抗議するように小さく文句を呟いた。

「それより、何で了は右菅うすがから離れたここにいるんだ?」

 了の実家は、伸の実家のある花紡州の隣の右菅州。
 この谷津代やつよ州からはかなり離れているはずだ。
 なのに、どうして了がここにいるのか気になり、伸は問いかける。

「剣道部の合宿があるって言っただろ?」

「そういえば……、まさかこの近くだったなんて……」

 了の回答で、伸は夏休み前にそんな事を聞いていたことを思いだす。
 たしかにそのことは聞いていたが、まさかその合宿地がこの近くだということは聞いていなかった。
 仲のいい知り合いに会うことはないと思って気にしていたなかったが、こんな事なら顔を隠して来ればよかったかもしれない。

「伸は何してんだ?」

「……了と同じだ。魔物が出たって聞いたから、みんなを避難させに……」

「そうか……」

 自分がした質問を返され、伸は少し言葉を詰まらせる。
 なるべくなら自分の実力を知られたくない伸は、まさか倒しに来ましたとは言えないため、咄嗟に考え出した答えを口にした。
 学園にモグラの魔物が出現した時、2人とも戦うということを選択したが、またも同じことになったのだと、どうやら了はこの答えで納得してくれたようだ。

「っと!」「おわっ!」

 急に現れた了に驚いて無視する形になってしまったが、まだ巨大イカと戦闘中だ。
 話している2人が動かないのを確認し、巨大イカは伸と了へ向かって触腕の攻撃をして来た。
 その攻撃に、伸と了は話をやめて回避に移る。
 伸は余裕だが、了は足場の砂地に足を取られ、危うく当たりそうになりつつ何とか回避し、腰に差した刀を抜いた。

「話している場合じゃないな! 魔闘組合の人が来るまで、何とかしてこいつを抑えておかないと……」

「……そうだな」『……っていうか、了が来なければ終わってたんだけど……』

 触腕によって撃ちつけられ、大量に砂を巻きあがらせる。
 相当な威力があるのが分かる。
 直撃したら一発で大ダメージを受けることだろうことを悟り、了は真剣に伸へと話しかけてくる。
 それに対し、伸は内心ツッコミを入れたい気持ちで一杯だった。

『……どうしよう。ここでこの魔物を倒したら実力がバレちまうし、かといってこのまま放置する訳にもいかないし……』

 触腕と墨の攻撃を仕掛けてくる巨大イカ。
 その攻撃を躱しながら、伸はどうするべきか考える。
 了がいる状況で倒してしまったら、実力を隠していたことがバレてしまう。
 かと言って、他の魔術師が来るのはいつになるか分からないため、この魔物を放置して町中へ向かうようなことになってはいけない。
 倒すべきか、避難すべきか悩ましいところだ。

「くっ!! ハッ!!」

 伸と了に攻撃をしていた巨大イカだったが、伸に攻撃が通用しないことをようやく理解したのか、ターゲットを了へと変えた。
 伸への攻撃が減り、了目掛けて触腕の攻撃を振り回す。
 自分へ迫る鞭の嵐のような攻撃を、了は必死に回避するが、明らかに反応が遅れて来ている。

『仕方ない……』

 この魔までは了が攻撃を受けてしまう。
 そうなる前に、実力がバレても構わないと判断した伸は、巨大イカを倒すことに決めた。
 しかし、その決断は少し遅かった。

「っ!! 了! 危ない!!」

「えっ!? がっ!!」

 伸が巨大イカを倒そうと決めて攻撃をしようとした時、巨大イカがこれまでと違う攻撃をして来た。
 海水浴に来ていたどこかの家族が置いたのだろう。
 巨大イカは折り畳み式のウッドテーブルを弾き、了へと飛ばしてきた。
 思わぬ攻撃に回避することができず、そのテーブルが了の頭部へ直撃した。

「おい了! 大丈夫か!?」

「ウッ……」

 頭部に攻撃を受け、了はそのまま倒れてしまう。
 追撃を受けたら大ダメージは必至。
 伸は倒れた了を抱え、その場から離れた。
 了の容態を確認するために話しかけるが、了は反応が鈍い。

「……脳震盪だな」

 容態を確認すると、出血や骨折をしている様子はない。
 どうやら脳震盪になっているようだ。

『……あっ! 丁度いいかも……』

 脳震盪なら、回復魔法をかければすぐに治る。
 そのため、伸は了を治そうと、攻撃を受けた患部へ手を近付けた。
 しかし、了がこのまま眠ってくれていれば、巨大イカを倒しても実力がバレないと思った。
 そして、もしかしたら了と同様に、この近くに来ているかもしれない学園の剣道部員も誤魔化せることができるかもしれない方法を思いついた。

『やったことないけど、出来るよな……』

 いい方法を思いついたが、これまで試したことはない。
 多分大丈夫だと思うが、やってみるしか今は時間がないため、伸はとりあえずやってみることにした。

「ハッ!!」

「…………」

「おぉ! 成功だ!」

 まず了に睡眠魔術をかけ、次に頭部のダメージを回復させたあと、伸は自分の魔力を了へと流した。
 そして、伸は魔力を流した了を動かしてみる。
 すると、思った通り、了は眠ったまま立ち上がった。
 それを見て自分の考えが成功したことを確信した伸は、嬉しそうに声をあげた。

「じゃあ、悪いが頑張ってもらうな」

 眠ったまま立っている了に刀を握らせ、伸は申し訳なさそうに話しかける。
 伸が考えたのは、了の体を自分の魔力を使って操作する魔術だ。
 操られた状態でも巨大イカを倒したのが了なら、自分の実力を知られるようなことはない。
 いい方法を見つけた伸は、巨大イカから少し離れ、了を動かすことに集中することにしたのだった。

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