主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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2学年 後期

第134話

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「やっぱりこの2人が残ったか……」

「予想通りね……」

 選手控室に備えられたモニターを見ながら、伸は独り言を呟く。
 それに反応するように、綾愛は話しかけながら伸の隣に立った。
 現在、会場となる訓練場の中央には、伸の友人の金井了と柊綾愛の友人の杉山奈津希が向かい合っている状況だ。

「決勝はどっちになるかな?」

 準決勝第1試合は、綾愛と大橋の戦いになった。
 1年の時、伸たちと揉めて試合をおこなったメンバーの1人だ。
 去年の校内戦では準決勝で了と当たり、互角の戦いをした後、僅かな差で負けることとになった。
 今年も選手に選ばれ、この1年で得意の棒術に磨きをかけて来たらしく、かなり鋭い攻撃を放ってきた。
 しかし、相手は綾愛。
 全ての攻撃を躱しきり、息が上がってきたところで綾愛の攻撃が首筋付近で止められ勝負あり。
 今から戦う二人よりも早く、綾愛は去年と同様、決勝進出と全国大会の出場権を手にいれた。

「新田君は金井君有利の予想よね?」

「あぁ、僅かな差でな」

 全国への出場権を手に入れたことで一息吐けたからか、綾愛は余裕を持って了と奈津希の試合を観戦できるようだ。
 伸が勝利予想を問いかけると、表情明るく以前話した時の予想を確認するように問い返してきた。
 その問いに、伸は以前と予想が変わっていないことを答える。

「とは言っても、どっちが勝ってもおかしくない」

 伸は説明を付け足す。
 了と奈津希の実力は互角で、成長力の差を考えると了に分があると伸は思っている。
 だが、勝負は時の運という。
 実力差がある場合、運の入り込む余地は少ないが、互角同士になると話が違う。
 絶対に了が勝つとは言い切れない。

「そうだ! 勝負しましょ?」

「……勝負?」

 試合開始間際、綾愛が急におかしなことを言って来る。
 そのため、伸はオウム返しのように聞き返す。

「新田君は金井君。私は奈津希が勝つと思っている。だから予想を外した方がお昼代を支払う」

 何の勝負かと思ったら、予想の的中勝負らしい。
 そのことだと薄々気づいていたが、わざわざ昼飯を賭けての勝負をする必要があるのかが疑問だ。

「どう? そうすれば応援しやすいでしょ?」

「……なるほど」

 綾愛がわざわざ勝負を吹っ掛けて来た意味。
 伸は了と仲が良いが、奈津希も決して知らない仲ではない。
 逆に、綾愛は奈津希と仲が良いが、了とも時折話す仲だ。
 つまり、伸と自分が、それぞれの友人を応援するための免罪符にするためのようだ。

「良いぞ。その勝負乗った」

「よし!」

 お互い遠慮なく友人を応援できる。
 それだけのことだが、少し気分的に楽になる。
 そのため、伸は綾愛の持ちかけて来た勝負を受けることにした。

「じゃあ、私は奈津希の応援する!」

「俺は了を応援させてもらう!」

 密かに予想勝負することになった伸と綾愛は、気兼ねなく友人の応援をする事にした。





◆◆◆◆◆

「始め!!」

 今年も伸たちの担任の三門が、審判役を担っている。
 その三門が、了と奈津希が武器を構えあった所で試合開始の合図を出した。

「ハッ!!」

 試合開始の合図と共に、了は身体強化をして奈津希との距離を詰めようとする。
 去年、綾愛との決勝でおこなった、了得意の奇襲作戦だ。

「っと! 読まれてたか……」

「当然!」

 一直線に突き進んだ了だが、奈津希はその場にいない。
 去年の校内戦と、全国大会でも了の速攻攻撃は見ている。
 当然今年もおこなって来る可能性を予想していたため、奈津希も開始早々横へと飛んでいたのだ。

「やっぱり去年とは違うわね」

「当然。訓練したからな」

「そのようね」

 去年の決勝で、了は最初の一撃を綾愛に躱されたところで気を失った。
 そして、その年の全国大会では、多少余力を残して使用するように調整できるようになった。
 2年の前期と夏休み中に、この技術を相当訓練してきたのだろう。
 去年と同じレベルの速度による開始早々の攻撃を躱されても、たいして苦にならないほど余力を残していることが表情からうかがえる。
 戦う前から分かっていたことだが、了の表情を見た奈津希は、簡単に勝てる相手ではないだと気合いを入れ直した。

『柊に隠れていたけど、やっぱ杉山もすげえな……』

 余裕そうな表情をしているが、了は内心驚いていた。
 奈津希が開始早々の速攻を躱した技術は、自分がやったのと同じ技術を使用していたからだ。
 自分が去年使用した速攻は、全魔力を使用してのものだった。
 だが、去年の夏から上がり始めた魔力の操作技術を、今年も磨きをかけて来たことにより、速攻に使用する魔力をかなり減らすことができるようになった。
 1回で魔力切れなんてもう起きないが、それでも少なくない魔力を消費する。
 何回か使用できるが、連発すれば魔力切れで敗北決定だ。

『しかし、これでいつも通りの戦いにできるな』

 高速攻撃は布石。
 いつ使用してくるか分からないと警戒させ、いつものように逃げ回る敵を接近戦へと持って行く戦いをするためだ。

「ハッ! ハッ!」

 了が思った通り、初撃の速攻を躱した奈津希は火球魔術を放って距離を取る戦法を選択する。 
 接近戦の実力が高いと知られている了を相手にするならば、当然の選択だろう。

「フッ! ハッ!」

「くっ!」

 飛んでくる火球を躱し、距離を詰めようとする了。
 それを阻止するように、奈津希は距離を取りながら魔術を放つ。

「……了のペースだな」

 モニターを見ていた伸は、試合の流れを見て呟く。
 このような展開になることは読めていたからだ。

「このまま、杉山の魔力が尽きるのを待てばいい」

 了も奈津希も、身体能力を上げるために魔力を身に纏っている。
 それだけなら時間が経過しても互角のままだが、了の接近を阻止するためには、どうしても魔術で攻撃をおこなうしかない。
 近付けないためだけに魔術を放ち逃げ回るだけなら、ドンドン奈津希の魔欲が減っていくだけだ。
 了を応援する伸としては、このままの展開が続くことを期待した。

「……このままじゃ終わらないわ」

 伸程の実力者の予想となると、きっと正解なのだろう。
 そのことから、実は料亭で伸の予想を聞いた綾愛は、内容をそのまま奈津希に話していた。
 この学園の代表になるためには、綾愛と奈津希が友人だといってもライバル関係になる。
 だからといって、去年自分が負かして出場できなかった奈津希をそのままにしておけない。
 今年こそは一緒に全国大会に出場したいのだ。
 そのために伸の予想を、言い方悪くチクったのだ。
 綾愛から、了との対戦時はどういう展開になるかを聞いた奈津希は、きっと対抗策を用意しているはず。
 そのことを期待して、綾愛はモニターに映る奈津希を応援した。

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