主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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2学年 後期

第156話

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「ハァ!!」

「くっ!!」

 脇差程の長さの剣による、兎の魔人の攻撃が綾愛に迫る。
 それを、綾愛は父の俊夫から受け取った刀で防ぐ。

「セイッ!!」

「ぐっ!!」

 兎の魔人の攻撃を防いだ綾愛に、今度は鉄製のグリーブ(脛当て)を装着した馬の魔人の蹴りが襲い掛かる。
 その攻撃も刀で受け止めようとしたが、振りの鋭さから危険と察知した綾愛は、攻撃が刀に当たる瞬間後方に自ら跳ぶことで衝撃を逃がす。
 ひとまず距離を取ることに成功したため好都合だったが、馬の魔人の蹴りの威力は強く、綾愛はかなりの距離飛ぶことになった。  

「小娘のくせに、予想以上の反応だな」

「他にも相手にしなければならない奴がいるんだから、さっさとくたばれよ」

 自分たちの攻撃を防いだ綾愛に、兎と馬の魔人は面倒そうに呟く。
 馬の魔人が言う他に相手にしなければならない相手というのは、観客を逃がすために戦っている者たちのことだろう。

『さすがに2体はきついかも……』

 さっきの攻防だけで、目の前にいる魔人はかなりの実力があることが分かる。
 伸が来てくれるまで我慢したい我慢したいところだが、この2体の攻撃をいつまで防げるか分からない。
 綾愛はどうしたものかと、頭をフル回転させた。

「2対1はきつそうだな……」

「っ!?」

 綾愛が困っていると、不意に何者かが現れる。
 嬉しい気持ちと共に、綾愛は声のした方へ視線を向けた。

「康則殿……」

 現れたのは鷹藤家の康則だ。
 助けに来てくれたのは嬉しいが、伸が来てくれるのを期待していただけに、綾愛は若干がっかりした。

「柊家の令嬢とは言え、学生の君では荷が重い。私がメインで戦うから、君は援護を頼む」

「……分かりました」

 この魔人2体の相手を、自分1人で務めるのはしんどい。
 2年連続で大会優勝を果たすことができたが、たしかに次期鷹藤家当主である康則の方がまだ実力的には上だ。
 こんな状況では彼の指示に従うのが最適だと考えた綾愛は、康則の指示に従うことにした。

「……俺があいつをやる!」

「あっ! ズルいぞ!!」

 康則を見て、馬の魔人が行動する。
 兎の魔人に一声かけると、地を蹴って一気に康則へ向かって行ったのだ。
 兎の魔人は恨みがましく待ったをかけるが、馬の魔人は止まる気配はない。

「っっっ!!」

「セイッ!!」

 いきなり襲い掛かってきた馬の魔人の蹴り。
 康則は、腰に差していた刀を抜いて、その蹴りを受け止めようとした。

「ヌッ!?」

 先程以上に威力のこもった蹴りに、刀で受けた康則はかなりの距離を飛ばされることになった。

「まぁ、お前で我慢するか……」

「っ!?」

 飛んでいた康則を、馬の魔人が追跡する。
 そんな2人の攻防を、綾愛は必死に目で追う。
 指示を受けたように、隙を見て援護に入るためだ。
 しかし、その視線はすぐに遮られることになる。
 何故なら、兎の魔人が綾愛との距離を一気に詰めて攻めかかってきたからだ。

「オラッ!」

「くっ!」

 兎の魔人は接近と共に、持っていた剣で突きを放ってきた。
 その突きを、綾愛は刀で弾くことで躱すことに成功する。

「速いわね……」

「さっきと言い、お前反応良いな」

 綾愛はすぐさま距離を取り、小さく呟く。
 そんな綾愛を、兎の魔人は意外そうな表情をしながら褒める。
 馬の魔人と共に襲い掛かった時よりも少し速度を上げて攻めかかったというのに、綾愛が上手く防いだからだ。

「…………跳躍?」

 兎の高速の接近術。
 その移動速度はかなりのもので、警戒すべきものだ。
 それを2度見ただけで理解し、綾愛は答えを呟いた。

「おぉ! よくわかったな!」

 綾愛の呟きを聞き、兎の魔人は笑みを浮かべて称賛した。
 大会2連覇と言っても、所詮は人間の娘。
 自分の高速接近に反応できるだけでも驚きだというのに、もうその原理を読み取ったからだ。
 康則の相手を奪われてしまって期待していなかっただけに、綾愛が少しは自分を楽しませてくれる相手で嬉しそうだ。

「兎特有の跳躍力を、短距離直線的な移動速度に利用しているのね?」

 兎の魔人の接近術を見抜けた理由は、なんてことはない。
 単純に、その姿を見た時に、兎の魔人なら跳躍力が高いのではないかと思っていた。
 戦闘に置いて跳躍力はそこまで必要ではない。
 ならば、その力を上にではなく前に利用する。
 つまり、前に跳躍して相手との距離を詰めること利用しているということだ。

「その通り。相手との距離を詰める技術だけなら、俺は魔人の中でもトップクラスの力を有している」

 綾愛の指摘した通り、自分の接近術は跳躍力を利用している。
 その技術により、自分は魔人の中でも上位の実力を手に入れることができたと兎の魔人は自信を持っている。

「そう……」

「っっっ!?」

 兎の魔人の言葉を聞き、綾愛は納得したように呟く。
 そして、次の瞬間兎との距離を一気に詰め、振り上げた刀を振り下ろした。
 先程の自分に匹敵するほどの速度に、兎の魔人は驚きつつ後方へ跳ぶことで綾愛の攻撃を躱す。

「私も速度には自信があるのよね」

「へ~……」

 文康との試合では出すことがなかったが、速度勝負ならば自分も自信がある。
 兎の魔人の速度に対応できるのも、それが理由だ。
 文康戦の場合、伸を誘拐したことによる慢心がなければ、もっと苦戦していた。
 伸を誘拐してくれたことで、試合が楽に勝てたし、魔人相手に時間を稼ぐくらいはできる。
 文康のおこなったことはバカとしか言いようがないが、自分にとってはメリットばかり。
 バカでも役に立つのだと、綾愛は密かに文康の好感度が上がった。
 とは言っても、マイナスの好感度がプラスになるほどではない。

「どこまで付いてこれるか楽しみだ」

 こう言うと、兎の魔人は笑みを浮かべながらステップを踏み始める。
 魔人の中でも、自分の速度についてこれる者は少ない。
 久しぶりに全速力での戦闘ができそうなため、楽しみから来る笑みだ。

「援護を頼まれたけど、あんたなんか私が倒してやるわ!」

 援護を頼まれたが、康則は離れた所で戦い始めていて、馬の魔人も先程までは本気ではなかったのか、康則への攻撃の威力が増しているように思える。
 とてもではないが、兎の魔人を相手にできる余裕はなさそうだ。
 ならば、自分が兎の魔人を相手にするしかない。
 強気な言葉と共に、綾愛は兎の魔人へ刀を構えた

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