主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

文字の大きさ
192 / 281
3学年 前期

第191話

しおりを挟む
「どうした道康!!」

 伸たち同様、官林地区の学園も夏休みに入る。
 1年の時は八郷学園に通っていた鷹藤家次男の道康だったが、2年になると同時に官林学園に編入することになった。
 元々、柊家の綾愛に近付き、婚姻関係を結ぶために近付いたようなものだ。
 それも去年の夏合宿の事件によって無駄に終わり、更には兄の文康が対抗戦で不正を犯したことで学園を退学になった。
 そんな文康に家を継がせるわけにはいかないと、父の康則は道康を地元の官林地区に呼び戻し、跡継ぎとして育て上げることにした。
 夏休みは、道康を指導するには絶好の機会。
 そのため、康則は道康を連れて鷹藤家の別荘のある土成州の山へと向かった。
 そこにある道場で、康則は朝から晩までみっちりと道康を訓練していた。

「うぅ……」

 剣道の面以外の防具を使用した竹刀による訓練とはいえ、腕や手首に何度も衝撃が加われば痛みが生じる。
 それをほぼ毎日のように繰り返されると、回復魔術で痛みを取り除こうとも精神的にはきついことこの上ない。
 そのため、座り込んだ道康は痛みだけでなく、心まで折れかかっていた。

「そんなことで、名門鷹藤の跡継ぎを名乗れると思うなよ!」

「わ、分かってるよ……」

 康則が道康に熱血指導している理由。
 それは、魔闘師の中でもトップと言われた名門鷹藤家の名を、自分と道康で取り戻そうと考えているからだ。
 ここ数年で柊家が名を上げた。
 だからと言って、名門鷹藤家の名が落ちるようなことは本来なかった。
 しかし、自分の息子である長男の文康が愚行を重ねたこともあり、世間ではかなり印象が悪くなっている。
 実家でほぼ幽閉状態の文康には期待ができない。
 それを払拭するためには、自分や道康が強くなる必要がある。
 道康もそのことを分かっているので、康則の言葉に返事をする。

「ハッ!!」

「よしっ! いいぞ!」

 少し休んだ後、立ち上がった道康は康則へ攻めかかる。
 その打ち込みに、康則はどこか嬉しそうに褒めた。
 口には出さないが、康則としては文康よりも道康の方に期待していた。
 父でありながら、息子2人を比べるのは良くないことだと分かっている。
 しかし、文康は自分の父で現当主の義康に似た天才型。
 反対に、自分や道康は地道な訓練を重ねることで実力をつける努力型だ。
 どうしても、自分に似た道康に感情移入してしまうのは仕方がない。

「よし! 休憩だ!」

「ハァ、ハァ、うっす!」

 長い時間訓練を続けていたため、康則も汗が流れてきた。
 そのため、道康のことも考え、ここでいったん休憩をとることにした。
 疲労困憊といった様子の道康は、息を切らしつつ礼をして、その場に座り込んだ。

「……おじい様はいつ頃こちらに?」

「明後日には来るそうだ」

 この別荘地には、祖父の義康が来ることになっている。
 他の仕事が忙しい中、道康を指導するためにわざわざ足を運んでくれることになっている。
 父に直接指導してもらえることは嬉しいが、やはり大和皇国最強と言われた祖父から指導を受けられることが嬉しいようだ。
 道康は、義康が来るのが待ち遠しいといったような様子だ。
 そんな道康の問いに、康則は嘆息交じりに返答した。

「まぁ、それまで俺で我慢するんだな」

「う……、うん」

 祖父の義康が来るのことを待ち遠しい気持ちが見抜かれたような康則の言葉に、道康は何とも言い難い表情で返事をした。





◆◆◆◆◆

「さて、今日も訓練を始めよう!」

「うっす!」

 別荘に到着した早々、きつい訓練を行った翌日。
 軽い準備運動をおこなった後、康則と道康は午前の訓練を開始することにした。

「まずは、周辺の魔物の討伐からだ」

「うん!」

 別荘地の周辺は樹々に覆われているため、魔物も出現することがある。
 そのため、魔物が別荘に近付かないように、討伐をおこなう必要がある。
 午前の訓練として、魔物討伐をおこなうことにした康則たちは、別荘を中心に探索を始めた。

「……大したことないのばかりだな」

 探索を始めて、時々出現する魔物を退治しているが、道康としては物足りない。
 出てくるのが、弱い魔物ばかりだからだ。
 別に強い魔物が出てきてほしいなどとは思わないが、もう少し体を動かしたいというのが本音だ。

「あまりおかしなことを口にするなよ。良くないことを招くぞ」

「うっす!」

 特に思うところはなくても、道康の言葉は強い魔物を期待しているような内容だ。
 それがフラグになって、本当に危険な魔物を呼び寄せてしまう可能性がある。
 いわゆる言霊というやつだ。
 そのことを康則が注意すると、道康は少ししか反省の色が見えない返事をした。

「その通りだぜ」

「「っっっ!?」」

 康則の言葉に賛同するかのような言葉が聞こえてくる。
 人がいるような場所でもないだけに、康則と道康は驚きと共に腰に差した刀に手をやる。

「貴様何者だ!?」

 声がした方向に目を向けると、離れた場所に眼鏡をかけた1人の男が立っていた。
 康則は、その男に警戒をしたまま問いかける。

「お前らを殺しに来た者だ」

 康則に問いかけられたその男は、眼鏡を直しながら笑みを浮かべて返答した。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

プライベート・スペクタル

点一
ファンタジー
【星】(スターズ)。それは山河を変えるほどの膂力、千里を駆ける脚力、そして異形の術や能力を有する超人・怪人達。 この物語はそんな連中のひどく…ひどく個人的な物語群。 その中の一部、『龍王』と呼ばれた一人の男に焦点を当てたお話。 (※基本 隔週土曜日に更新予定)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...