277 / 281
3学年 後期
第276話
しおりを挟む
「これは……」
伸が戦っていると思われる大爆発が起きた場所に到着した柊家当主の俊夫は、周囲を見渡して小さく呟く。
というのも、先程の爆発によって起きた土煙によって全貌は見えていないが、会場の武舞台は消し飛び、観客席も穴だらけになっている。
しかも、隣の会場まで穴が開いている場所まである。
どう戦ったらこのような状況になるのか理解できない。
これを見たら、俊夫でなくても戸惑いの声を上げることだろう。
「あれはまさか……」
会場を見渡していた俊夫は、端の方に折れた刀が落ちているのを発見する。
その柄には見覚えがある。
伸が使用していた刀だ。
刀が折れているのを見て、伸の身に良くない何かが起きたのではないかと俊夫の頭をよぎった。
「っ!?」
少しずつ土煙が治まってくる。
そして、その中から人の姿らしきシルエットが見えてきた。
俊夫としては、伸が無事でいることを願いつつそのシルエットに目を凝らす。
「……っっっ!? そんな……」
土煙の中から姿が見えた。
伸であることを願っていた俊夫だったが、それは叶わなかった。
立っているのが魔人(バルタサール)の方だったからだ。
そのため、驚きと共に絶望の気配を感じていた。
「お終いだ……」
俊夫にとって、伸は柊家の期待の婿殿だ。
それだけではなく、この大和皇国にとっても希望となる存在になる事は間違いない。
だからこそ、伸ならどんな魔人にも負けないと信じていた。
そんな伸が敗れるなんて、自分や魔闘師たちが束になっても勝てる気がしない。
そのため、俊夫はこの国の終わりが迫っていることを感じざるを得なかった。
「…………見事だ」
土煙が晴れ、バルタサールは小さく呟く。
誰に言っているのかは明白。
伸に向かってだ。
“ガラガラッ!!”
バルタサールの攻撃によって開いた壁の穴が、上にある観客席の重みに耐えきれずに崩れ落ちる。
それによって、またも土煙が舞い上がった。
「……そいつはどうも」
「っっっ!?」
土煙の中から声が聞こえてくる。
伸の声だ。
俊夫は目を見開き、声がした方向へ視線を向ける。
「生きてる……」
土煙がなかなか晴れないため全身は見えないが、傷だらけでありながらも立っている。
そのことだけでも、絶望を感じていた俊夫の気持ちに希望が生まれていた。
「まさかあの状況から転移をするとはな……」
先程の全力を込めた自分の一撃。
その攻撃が当たる瞬間、伸の姿が消え去った。
それによって、ただ壁を破壊するだけになってしまった。
伸が消えた方法については心当たりがある。
転移魔術を使用したのだ。
「魔力を残していたなんてな……」
「まあな……」
バルタサールを倒すためには、相当量の魔力を込めた攻撃が必要だ。
そのために、伸はその一撃を放つための魔力を残しておいた。
その魔力を使うことで、バルタサールの強力な一撃を回避することに成功した。
『じいちゃん、ばあちゃんに感謝しないとな……』
生き残るために残しておいた魔力を使用してしまった。
残りの魔力は、もうスカスカの状態だ。
何とか立っているが、気を失わないように耐えるだけで精一杯だ。
しかし、そもそもバルタサールほどの相手とここまで戦えた時点で出来すぎだ。
ここまで戦えたのは、剣や体術を教えてくれた祖父と、魔力コントロール技術を鍛えてくれた祖母のお陰と言っていいだろう。
そのため、伸は心の中で祖父母に感謝していた。
「どうやら、俺もいつまでもここにいるわけにはいかないようだな……」
はっきり言って、バルタサールも残りの魔力は少ない。
伸を倒すことができたとしても、この場に居続ければ危険でしかない。
そう考えているのは、俊夫のことに気づいているからだ。
俊夫だけでなく、他の魔闘師たちもこの場に向かってきているから尚のことだ。
それでも、残りの魔力を使用すれば逃げ切るくらいは問題ない。
安全に逃走するためにも、バルタサールは一刻も早く伸を倒すことにした。
「今度こそさらばだ。伸!」
伸の残りの魔力では、身体強化することすら不可能だろう。
足が小刻みに震えていることから、辛うじて立っている状態なのだろう。
そんな状態なら、仕留めることなど簡単だ。
先程の攻撃を躱したのは素晴らしいが、無駄に時間を長引かせただけに過ぎない。
今度こそ仕留めるため、バルタサールは伸への別れの言葉と共に地を蹴った。
「新田君!!」
怪我をして魔力も消費しているバルタサールだが、それでも移動速度が尋常じゃない。
離れた距離にいる俊夫では、伸を助けたくても間に合わない。
そのため、俊夫は思わず伸の名前を叫んだ。
「ハァーッ!!」
「…………」
距離を詰めたバルタサールは、右拳を振りかぶる。
それを、伸は動かず、ただ黙って見ていることしかできないでいた。
“ドンッ!!”
「っっっ!? がっ!?」
バルタサールの右拳が、伸の頭部に迫る。
その瞬間、伸とバルタサールの間に魔法陣が浮かび上がり、そこからバスケットボール大の魔力の玉が飛び出してきた。
不意に真下から飛んできたその魔力の玉が、接近していたバルタサールの顎をかち上げた。
「シッ!!」
「っっっ!! バ、バカ…な……」
顎を打たれ動きが止まったバルタサール。
その隙を待っていたかのように、伸は右手で抜き手を放つ。
所詮は身体強化をされていない生身の人間の攻撃。
そう思ったバルタサールだったが、伸はその考えを覆す。
右手の人差し指と中指の2本にだけ、魔力を纏っていた。
その2本指の攻撃により、バルタサールの心臓に深く突き刺さった。
「お、おの…れ……」
血を吐き、その場に崩れ落ちるバルタサール。
それを見届けた伸も、糸が切れた人形のように倒れた。
伸が戦っていると思われる大爆発が起きた場所に到着した柊家当主の俊夫は、周囲を見渡して小さく呟く。
というのも、先程の爆発によって起きた土煙によって全貌は見えていないが、会場の武舞台は消し飛び、観客席も穴だらけになっている。
しかも、隣の会場まで穴が開いている場所まである。
どう戦ったらこのような状況になるのか理解できない。
これを見たら、俊夫でなくても戸惑いの声を上げることだろう。
「あれはまさか……」
会場を見渡していた俊夫は、端の方に折れた刀が落ちているのを発見する。
その柄には見覚えがある。
伸が使用していた刀だ。
刀が折れているのを見て、伸の身に良くない何かが起きたのではないかと俊夫の頭をよぎった。
「っ!?」
少しずつ土煙が治まってくる。
そして、その中から人の姿らしきシルエットが見えてきた。
俊夫としては、伸が無事でいることを願いつつそのシルエットに目を凝らす。
「……っっっ!? そんな……」
土煙の中から姿が見えた。
伸であることを願っていた俊夫だったが、それは叶わなかった。
立っているのが魔人(バルタサール)の方だったからだ。
そのため、驚きと共に絶望の気配を感じていた。
「お終いだ……」
俊夫にとって、伸は柊家の期待の婿殿だ。
それだけではなく、この大和皇国にとっても希望となる存在になる事は間違いない。
だからこそ、伸ならどんな魔人にも負けないと信じていた。
そんな伸が敗れるなんて、自分や魔闘師たちが束になっても勝てる気がしない。
そのため、俊夫はこの国の終わりが迫っていることを感じざるを得なかった。
「…………見事だ」
土煙が晴れ、バルタサールは小さく呟く。
誰に言っているのかは明白。
伸に向かってだ。
“ガラガラッ!!”
バルタサールの攻撃によって開いた壁の穴が、上にある観客席の重みに耐えきれずに崩れ落ちる。
それによって、またも土煙が舞い上がった。
「……そいつはどうも」
「っっっ!?」
土煙の中から声が聞こえてくる。
伸の声だ。
俊夫は目を見開き、声がした方向へ視線を向ける。
「生きてる……」
土煙がなかなか晴れないため全身は見えないが、傷だらけでありながらも立っている。
そのことだけでも、絶望を感じていた俊夫の気持ちに希望が生まれていた。
「まさかあの状況から転移をするとはな……」
先程の全力を込めた自分の一撃。
その攻撃が当たる瞬間、伸の姿が消え去った。
それによって、ただ壁を破壊するだけになってしまった。
伸が消えた方法については心当たりがある。
転移魔術を使用したのだ。
「魔力を残していたなんてな……」
「まあな……」
バルタサールを倒すためには、相当量の魔力を込めた攻撃が必要だ。
そのために、伸はその一撃を放つための魔力を残しておいた。
その魔力を使うことで、バルタサールの強力な一撃を回避することに成功した。
『じいちゃん、ばあちゃんに感謝しないとな……』
生き残るために残しておいた魔力を使用してしまった。
残りの魔力は、もうスカスカの状態だ。
何とか立っているが、気を失わないように耐えるだけで精一杯だ。
しかし、そもそもバルタサールほどの相手とここまで戦えた時点で出来すぎだ。
ここまで戦えたのは、剣や体術を教えてくれた祖父と、魔力コントロール技術を鍛えてくれた祖母のお陰と言っていいだろう。
そのため、伸は心の中で祖父母に感謝していた。
「どうやら、俺もいつまでもここにいるわけにはいかないようだな……」
はっきり言って、バルタサールも残りの魔力は少ない。
伸を倒すことができたとしても、この場に居続ければ危険でしかない。
そう考えているのは、俊夫のことに気づいているからだ。
俊夫だけでなく、他の魔闘師たちもこの場に向かってきているから尚のことだ。
それでも、残りの魔力を使用すれば逃げ切るくらいは問題ない。
安全に逃走するためにも、バルタサールは一刻も早く伸を倒すことにした。
「今度こそさらばだ。伸!」
伸の残りの魔力では、身体強化することすら不可能だろう。
足が小刻みに震えていることから、辛うじて立っている状態なのだろう。
そんな状態なら、仕留めることなど簡単だ。
先程の攻撃を躱したのは素晴らしいが、無駄に時間を長引かせただけに過ぎない。
今度こそ仕留めるため、バルタサールは伸への別れの言葉と共に地を蹴った。
「新田君!!」
怪我をして魔力も消費しているバルタサールだが、それでも移動速度が尋常じゃない。
離れた距離にいる俊夫では、伸を助けたくても間に合わない。
そのため、俊夫は思わず伸の名前を叫んだ。
「ハァーッ!!」
「…………」
距離を詰めたバルタサールは、右拳を振りかぶる。
それを、伸は動かず、ただ黙って見ていることしかできないでいた。
“ドンッ!!”
「っっっ!? がっ!?」
バルタサールの右拳が、伸の頭部に迫る。
その瞬間、伸とバルタサールの間に魔法陣が浮かび上がり、そこからバスケットボール大の魔力の玉が飛び出してきた。
不意に真下から飛んできたその魔力の玉が、接近していたバルタサールの顎をかち上げた。
「シッ!!」
「っっっ!! バ、バカ…な……」
顎を打たれ動きが止まったバルタサール。
その隙を待っていたかのように、伸は右手で抜き手を放つ。
所詮は身体強化をされていない生身の人間の攻撃。
そう思ったバルタサールだったが、伸はその考えを覆す。
右手の人差し指と中指の2本にだけ、魔力を纏っていた。
その2本指の攻撃により、バルタサールの心臓に深く突き刺さった。
「お、おの…れ……」
血を吐き、その場に崩れ落ちるバルタサール。
それを見届けた伸も、糸が切れた人形のように倒れた。
1
あなたにおすすめの小説
プライベート・スペクタル
点一
ファンタジー
【星】(スターズ)。それは山河を変えるほどの膂力、千里を駆ける脚力、そして異形の術や能力を有する超人・怪人達。
この物語はそんな連中のひどく…ひどく個人的な物語群。
その中の一部、『龍王』と呼ばれた一人の男に焦点を当てたお話。
(※基本 隔週土曜日に更新予定)
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる