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パーティ編 その8
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踊れるわけないのよ。
当然だわ。
だって前世は普通の日本。社交ダンスを習うはずもない。
女子高生が興味を持つようなものでもなかったし…。どう考えても踊れる訳ないわよね…?
「…ちょっとまって」
演奏家に合図を送ろうとするアレクシスを止めるべく彼の耳元で囁く。
私の強張った表情に驚いたアレクシスが不思議そうにこちらを見つめてくる。
「どうした?」
「…ごめんなさい、私踊れたかしら…」
私って踊れたかしら?と他人に聞くのはなんとも変な話だが、仕方ない。
#悪役令嬢__リティシア__にダンスシーンなんて一度も用意されていないんだから。
もし踊れないのであれば、私が踊れなくてもなんの問題もない。
問題なのはその逆だ。
国で一番を争うほど上手いなどと言われたら私は完璧に踊らざるを得なくなる。
お願い、踊れないと言って…。
「大丈夫だろ?リティシアの踊りは誰よりも素晴らしいんだから。」
私の希望はアレクシスの輝くような笑顔によって脆くも儚く打ち砕かれた。
やめて、期待の眼差しを向けないで。私は本物のリティシアではないのよ。
中身が純日本人のリティシアが踊れる訳ないじゃない…
「…これが初めてのパーティなんだから私の踊りなんて見たことないじゃない。誕生日パーティでも踊ったりなんてしなかったし…」
「覚えてないのか?リティシアの家に行った時に…俺の前で俺より優れている特技を見せる、私と踊りなさいと言って快く踊ってくれたじゃないか」
リティシア…貴女そんな事もしてたのね…。
しかも王子に対する相変わらずの上から目線…。図太い神経をお持ちなのね、本当に。全く羨ましくないけど。
というか上手いなんて本当に意外だわ。悪役にダンスが上手いだなんてそんな設定いらないわよ…。
あぁそうか、だからダンスシーンがなかったのか。悪役が技術で主人公より目立ってもしょうがないものね。
そもそもどうして上手なんだろう?一人で必死に練習してたのかな?…いや、まさかね。
「アレクシス殿下…とてつもなく言い難いのだけど…私、踊りを綺麗サッパリ忘れてしまったみたい」
傍から見れば苦しい言い訳だが、こう逃れるしか方法はない。アレクシスは優しいから、変な言い訳でも信じてくれる…はず。
私の予想通り、アレクシスは私の言い訳を疑いもせずに聞き入れてくれた。
「そうか。まぁリティシア嬢の言う通り誕生日パーティで踊ったこともなかったしな。俺と踊ったのも随分前の出来事だし、忘れてても仕方ないな」
苦しすぎる言い訳を素直に納得してくれるアレクシスに罪悪感を感じずにはいられなかったが、仕方ない。
生きる為…彼を主人公のいる場所へと導く為よ。我慢しなきゃ。
「そうよ。だから踊るのはまた今度にし…」
「え?どうして?というか、この状況で踊らないは流石に無理があると思わないか?」
アレクシスの言葉で周囲を見渡すと、皆が私と彼をじっと見つめていた。
というか、私と彼以外を全く見つめていなかった。
…ここでやっぱり踊らないなどと言い出せばそれこそ私達の評判が落ちるだろう。
…私は良いけど、アレクは巻き込めない。仕方ない、踊るわ。でも…。
不安そうな私に気づいたアレクシスは私の両手を取り、嬉しそうに笑う。
「心配するなって。俺が完璧にリードしてあげるよ」
貴方って人は…どこまで優しいのよ。
でもリードって言ったって全く踊れない人間相手に通用するのかしら…。
困惑気味の私の手を取ると、「俺を信じろ。大丈夫だから」と再び耳元で囁いてくる。
そうね、やるしかない。
「分かったわ。やってみなさい。でも…上手くリード出来なかったら、足を踏んづけるわよ」
「はは、それは怖いな。大丈夫。任せとけ。ダンスには自信があるからさ」
私は彼の手を取った。
軽快な音楽が流れ始め、私は彼に合わせて辿々しい足取りでステップを刻んでいく。
失敗の許されないダンスパーティの舞台が、静かに幕を上げた。
当然だわ。
だって前世は普通の日本。社交ダンスを習うはずもない。
女子高生が興味を持つようなものでもなかったし…。どう考えても踊れる訳ないわよね…?
「…ちょっとまって」
演奏家に合図を送ろうとするアレクシスを止めるべく彼の耳元で囁く。
私の強張った表情に驚いたアレクシスが不思議そうにこちらを見つめてくる。
「どうした?」
「…ごめんなさい、私踊れたかしら…」
私って踊れたかしら?と他人に聞くのはなんとも変な話だが、仕方ない。
#悪役令嬢__リティシア__にダンスシーンなんて一度も用意されていないんだから。
もし踊れないのであれば、私が踊れなくてもなんの問題もない。
問題なのはその逆だ。
国で一番を争うほど上手いなどと言われたら私は完璧に踊らざるを得なくなる。
お願い、踊れないと言って…。
「大丈夫だろ?リティシアの踊りは誰よりも素晴らしいんだから。」
私の希望はアレクシスの輝くような笑顔によって脆くも儚く打ち砕かれた。
やめて、期待の眼差しを向けないで。私は本物のリティシアではないのよ。
中身が純日本人のリティシアが踊れる訳ないじゃない…
「…これが初めてのパーティなんだから私の踊りなんて見たことないじゃない。誕生日パーティでも踊ったりなんてしなかったし…」
「覚えてないのか?リティシアの家に行った時に…俺の前で俺より優れている特技を見せる、私と踊りなさいと言って快く踊ってくれたじゃないか」
リティシア…貴女そんな事もしてたのね…。
しかも王子に対する相変わらずの上から目線…。図太い神経をお持ちなのね、本当に。全く羨ましくないけど。
というか上手いなんて本当に意外だわ。悪役にダンスが上手いだなんてそんな設定いらないわよ…。
あぁそうか、だからダンスシーンがなかったのか。悪役が技術で主人公より目立ってもしょうがないものね。
そもそもどうして上手なんだろう?一人で必死に練習してたのかな?…いや、まさかね。
「アレクシス殿下…とてつもなく言い難いのだけど…私、踊りを綺麗サッパリ忘れてしまったみたい」
傍から見れば苦しい言い訳だが、こう逃れるしか方法はない。アレクシスは優しいから、変な言い訳でも信じてくれる…はず。
私の予想通り、アレクシスは私の言い訳を疑いもせずに聞き入れてくれた。
「そうか。まぁリティシア嬢の言う通り誕生日パーティで踊ったこともなかったしな。俺と踊ったのも随分前の出来事だし、忘れてても仕方ないな」
苦しすぎる言い訳を素直に納得してくれるアレクシスに罪悪感を感じずにはいられなかったが、仕方ない。
生きる為…彼を主人公のいる場所へと導く為よ。我慢しなきゃ。
「そうよ。だから踊るのはまた今度にし…」
「え?どうして?というか、この状況で踊らないは流石に無理があると思わないか?」
アレクシスの言葉で周囲を見渡すと、皆が私と彼をじっと見つめていた。
というか、私と彼以外を全く見つめていなかった。
…ここでやっぱり踊らないなどと言い出せばそれこそ私達の評判が落ちるだろう。
…私は良いけど、アレクは巻き込めない。仕方ない、踊るわ。でも…。
不安そうな私に気づいたアレクシスは私の両手を取り、嬉しそうに笑う。
「心配するなって。俺が完璧にリードしてあげるよ」
貴方って人は…どこまで優しいのよ。
でもリードって言ったって全く踊れない人間相手に通用するのかしら…。
困惑気味の私の手を取ると、「俺を信じろ。大丈夫だから」と再び耳元で囁いてくる。
そうね、やるしかない。
「分かったわ。やってみなさい。でも…上手くリード出来なかったら、足を踏んづけるわよ」
「はは、それは怖いな。大丈夫。任せとけ。ダンスには自信があるからさ」
私は彼の手を取った。
軽快な音楽が流れ始め、私は彼に合わせて辿々しい足取りでステップを刻んでいく。
失敗の許されないダンスパーティの舞台が、静かに幕を上げた。
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