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パーティ編 その9
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結論から言えば、彼は宣言通り、本当にダンスが上手であった。その腕前は素人目で見てもプロ級であると言えるだろう。
流石は第二の主人公ね。
…でもこんな風に言うのはあまり良くないか。
彼は小説の中のキャラではなくて、今私の目の前にいる、今を生きる一人の人間なんだから。きっと王族としてずっと…ずっと努力をしてきたのね。
アレクは私を上手にリードするだけでなく、直前に行動を私に小声で教え、間違いを未然に防いでくれる。
あまりにも女性パートに詳しすぎる彼に疑問を持っていると私の視線に気付いた彼が、「…女性に恥をかかせてはいけないからと母さ…皇后が教えてくれたんだ。決して女性パートが踊りたかったからとかではないからな」と少し照れたように呟いてくる。
彼の可愛らしい姿に思わず笑みが溢れ、その表情を誰かに悟られる前に慌てて真顔へと戻す。
「そう。後者だったら面白かったのにね」
「確かに…リティシア嬢の期待に添えなくて悪かったな」
「ホントよ。貴方ってそういうところが駄目よね」
「うーん…リティシア嬢の理想の男になるには大分先が長そうだな」
「私の理想の男?貴方なんかがなれるわけないでしょう。貴方が私と踊れる今この瞬間に泣いて感謝なさい」
私の冷たく上から目線な台詞にも彼は一瞬たりとも嫌悪感を表情に現すことはない。
…王族は悪役令嬢への対応についての教育でも受けているのだろうか?
あぁ、今この瞬間に貴方に嫌われれば、すぐに婚約破棄が出来るのに。
お願いだから…私をそんな目で見ないで。
「そうだな。ありがとう。全力で泣かせてもらうよ」
アレクシスのまさかのふざけた態度に私は眉を顰める。
本心としては、適当言わないでと笑いたいところだが、残念ながらそうもいかない。
「貴方…適当に言っても私は誤魔化せないわよ」
「まさか。俺はいつだって本気だ」
「…足を踏むわよ」
「…わざとはやめてくれ」
どこかアレクシスに遊ばれている感が否めないが、ここで彼のペースに飲まれてはいけない。
忘れちゃダメよ、私。
私は悪役令嬢なのよ。
大好きなキャラクターの足しか引っ張らない存在なのよ。
踊れることに泣いて感謝するのは私の方なんだからね。
土下座でアレクシスに感謝する私を想像したが、その中でも彼は優しく、私に手を差し伸べてくれた。
…どうしよう。こんなに優しい人と私…婚約破棄、出来るのかしら?
考え事をしながら無意識に足を動かしているとアレクシスが突然驚いて目を見開く。
その直後私の足がドレスに思い切りひっかかり、更にアレクという支えを失った私の身体は重力に従い倒れていく。
「リティシア嬢ッ…!」
どうやら上の空で彼の言葉を聞いていたからステップを間違えたらしい。
これでリティシアの評判は更に落ちるわね。特に彼女が散々踊りを自慢していたであろう貴族達に。…まぁいいわ。アレクの評判には関わらないもの。
私はこれからくるであろう衝撃に耐えようと目を閉じた…。
私の身体が地面につくその寸前、彼の腕がしっかりと私を抱きとめ、なんとか転倒を防いでくれる。
…思い出した。彼にこうして転ばないように助けられたのは、本日二度目ね。
彼は今の出来事をハプニングであると悟られない為に踊りに動きを加え、あたかも演出であったと周囲に錯覚をさせる。
そして彼は、私にだけ聞こえる声で囁いてくる。
「危なかった…ごめんな。リティシア嬢と踊るのが楽しすぎて、つい強く引っ張っちゃったぜ」
「えっ、違うわ、今のは」
「ん?違わないだろ?そうだよな」
あぁ、もしかして私の真似をしているの?
…はぁ、アレク、貴方って人は…本当に…。
前述した様に、周囲はダンスの演出の一部であるとまんまと錯覚させられたことであろう。だから私にこんなことを言う必要はない。
というか、この方法があるならダンスシーンの一部だと思わせるなんて高度なテクニックをしなくてもいいのに。
…そうか。アレクシスはより確実な方法を選んだんだ。
…例えアレクシスがそう庇ったとしても…嫌われ者のリティシアのことだ。今のはリティシアのミスだと噂する貴族は間違いなく出てくるだろう。
彼はそれを避ける為、自身の持つ高度なテクニックでどうにかダンス上の演出であると見せかけようとしたのだ。
…自分のミスで転びそうになった婚約者の名誉を、守る為に。
…全ては、私の為に。
感動したなんて言葉だけでは、この気持ちを表すことは出来ない。
でもそれじゃぁ尚更私にこれを言う必要なんて本当になかったじゃない?
あぁ、きっと彼なりにさっきのお礼をしてくれているのね。
私が庇ってくれたのと同じ様に、彼も庇おうとしてくれたんだ。
良い人ね…本当に。
彼の事はよく知っていたつもりだったけど、いざ目の前にすると沢山の事を知れるわね。
知れば知るほど、悪役令嬢なんかには、勿体ないわ。
一刻も早く婚約破棄を…しなければ。
寂しくなんてないわ。
彼が幸せになる事は、私の幸せだから。
…例え心の底から嫌われたって…構わないんだから。
…本当よ。
流石は第二の主人公ね。
…でもこんな風に言うのはあまり良くないか。
彼は小説の中のキャラではなくて、今私の目の前にいる、今を生きる一人の人間なんだから。きっと王族としてずっと…ずっと努力をしてきたのね。
アレクは私を上手にリードするだけでなく、直前に行動を私に小声で教え、間違いを未然に防いでくれる。
あまりにも女性パートに詳しすぎる彼に疑問を持っていると私の視線に気付いた彼が、「…女性に恥をかかせてはいけないからと母さ…皇后が教えてくれたんだ。決して女性パートが踊りたかったからとかではないからな」と少し照れたように呟いてくる。
彼の可愛らしい姿に思わず笑みが溢れ、その表情を誰かに悟られる前に慌てて真顔へと戻す。
「そう。後者だったら面白かったのにね」
「確かに…リティシア嬢の期待に添えなくて悪かったな」
「ホントよ。貴方ってそういうところが駄目よね」
「うーん…リティシア嬢の理想の男になるには大分先が長そうだな」
「私の理想の男?貴方なんかがなれるわけないでしょう。貴方が私と踊れる今この瞬間に泣いて感謝なさい」
私の冷たく上から目線な台詞にも彼は一瞬たりとも嫌悪感を表情に現すことはない。
…王族は悪役令嬢への対応についての教育でも受けているのだろうか?
あぁ、今この瞬間に貴方に嫌われれば、すぐに婚約破棄が出来るのに。
お願いだから…私をそんな目で見ないで。
「そうだな。ありがとう。全力で泣かせてもらうよ」
アレクシスのまさかのふざけた態度に私は眉を顰める。
本心としては、適当言わないでと笑いたいところだが、残念ながらそうもいかない。
「貴方…適当に言っても私は誤魔化せないわよ」
「まさか。俺はいつだって本気だ」
「…足を踏むわよ」
「…わざとはやめてくれ」
どこかアレクシスに遊ばれている感が否めないが、ここで彼のペースに飲まれてはいけない。
忘れちゃダメよ、私。
私は悪役令嬢なのよ。
大好きなキャラクターの足しか引っ張らない存在なのよ。
踊れることに泣いて感謝するのは私の方なんだからね。
土下座でアレクシスに感謝する私を想像したが、その中でも彼は優しく、私に手を差し伸べてくれた。
…どうしよう。こんなに優しい人と私…婚約破棄、出来るのかしら?
考え事をしながら無意識に足を動かしているとアレクシスが突然驚いて目を見開く。
その直後私の足がドレスに思い切りひっかかり、更にアレクという支えを失った私の身体は重力に従い倒れていく。
「リティシア嬢ッ…!」
どうやら上の空で彼の言葉を聞いていたからステップを間違えたらしい。
これでリティシアの評判は更に落ちるわね。特に彼女が散々踊りを自慢していたであろう貴族達に。…まぁいいわ。アレクの評判には関わらないもの。
私はこれからくるであろう衝撃に耐えようと目を閉じた…。
私の身体が地面につくその寸前、彼の腕がしっかりと私を抱きとめ、なんとか転倒を防いでくれる。
…思い出した。彼にこうして転ばないように助けられたのは、本日二度目ね。
彼は今の出来事をハプニングであると悟られない為に踊りに動きを加え、あたかも演出であったと周囲に錯覚をさせる。
そして彼は、私にだけ聞こえる声で囁いてくる。
「危なかった…ごめんな。リティシア嬢と踊るのが楽しすぎて、つい強く引っ張っちゃったぜ」
「えっ、違うわ、今のは」
「ん?違わないだろ?そうだよな」
あぁ、もしかして私の真似をしているの?
…はぁ、アレク、貴方って人は…本当に…。
前述した様に、周囲はダンスの演出の一部であるとまんまと錯覚させられたことであろう。だから私にこんなことを言う必要はない。
というか、この方法があるならダンスシーンの一部だと思わせるなんて高度なテクニックをしなくてもいいのに。
…そうか。アレクシスはより確実な方法を選んだんだ。
…例えアレクシスがそう庇ったとしても…嫌われ者のリティシアのことだ。今のはリティシアのミスだと噂する貴族は間違いなく出てくるだろう。
彼はそれを避ける為、自身の持つ高度なテクニックでどうにかダンス上の演出であると見せかけようとしたのだ。
…自分のミスで転びそうになった婚約者の名誉を、守る為に。
…全ては、私の為に。
感動したなんて言葉だけでは、この気持ちを表すことは出来ない。
でもそれじゃぁ尚更私にこれを言う必要なんて本当になかったじゃない?
あぁ、きっと彼なりにさっきのお礼をしてくれているのね。
私が庇ってくれたのと同じ様に、彼も庇おうとしてくれたんだ。
良い人ね…本当に。
彼の事はよく知っていたつもりだったけど、いざ目の前にすると沢山の事を知れるわね。
知れば知るほど、悪役令嬢なんかには、勿体ないわ。
一刻も早く婚約破棄を…しなければ。
寂しくなんてないわ。
彼が幸せになる事は、私の幸せだから。
…例え心の底から嫌われたって…構わないんだから。
…本当よ。
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