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パーティ編 その15
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「あっ、アレクシス殿下…!」
彼の存在にいち早く反応し、嬉しそうな声をアルターニャがあげる。
恋する乙女の眼差しを向ける彼女は、先程までとは打って変わって恋に溺れる年頃の少女の様であった。
…彼女の目には最早アレクシスしか映っていない。どんなに鈍感な人が見たとしても、彼女が恋をしているとすぐに気づく事だろう。
しかし例外もいる。
それは想いを寄せる張本人のアレクシスである。
彼は彼女から向けられる好意をすべて「隣国の王子だから友好的に接してくれている」と勘違いしているのだ。
…間違ってはいないが、確実にそれだけの気持ちではない。
…哀れね、アルターニャ。訂正してあげるつもりもないけどね。
「…アレクシス。どうしてここに?」
さっきは助かったと感じたけど、やはり彼には会いたくなかった。
彼の優しさに触れる度に…言いようのない悲しみに包まれてしまうから。
「馬車に乗って帰るんだろ?もう準備が出来てるはずだから、そこまで送ろうと思って」
「あらそう。とっても嬉しいわ。ありがとう。」
どうしてここまで優しくするのよ…私めちゃめちゃ棒読みの演技したわよ?
これで傷ついたわよね?
私と別れたくなる…はずよね?…まぁもう期待はしてないわ。
優しすぎる貴方は…悪役令嬢の最大の敵ね。
「喜んでくれて嬉しいよ。それから…アルターニャ王女様、お会いできて光栄でございます。パーティの際にお声がけできず、申し訳ございません。」
アレクシスの上着を掴んだまま彼の美しさにぼうっと見惚れていたアルターニャであったが、自分が話しかけられている事にようやく気づき、コホン、と咳払いをする。
「いえ構いませんわ。パーティに訪れた殿下はとても美しく、私などがお声がけしてもらえるような存在ではありませんでしたもの。アレクシス殿下は間違いなくその場の誰よりも輝いておられましたわ。私が保証致します…!」
流れるように褒め称えられたアレクシスは少し面食らいながらも礼儀上のものだと捉え、納得したようだ。
違うわよ、どう見てもアルターニャは本気で言ってるし思ってるわよ。優しくて基本なんでも出来るのに、鈍感なのよね、この王子は。
「私などにはとても勿体ないお言葉有難うございます。それと一つお聞きしたいのですが…その上着を何故アルターニャ王女様がお持ちになられているのですか?」
「あっ、これはリティシアが奪った物だと思いましたので取り返しておきました。殿下にお返し致しますわ」
「…アルターニャ王女様。お気遣いは有難く思いますが、それは私自ら貸した物です。彼女にお返し頂けますか。それから…彼女の名誉を傷つけた事に関しても謝って頂きたい」
本来ならば自分が褒められたら同じ様に自分を下げ、相手を褒め称える場面であるが…彼はそれより先に私に謝るように促してくれる。
丁寧な言葉ではあるが、節々に静かな怒りが感じられた。
優しいアレクシスの静かな怒りを感じ取ったアルターニャは慌ててドレスの裾を持ち上げ、深く謝罪をする。
「…申し訳ございません。リティシア…嬢も、ごめんなさい。私が出過ぎた真似を致しました。しかし私が殿下を思って行ったという事をどうかお忘れなきようお願い申し上げます。」
流石はアレクシス。隣国の王女にたかが公女相手に謝罪させるとは。
こんな事は彼が尊敬され、好かれていなければ到底出来やしない。相変わらず凄いわね。
そして自分のアレクシスへの好意アピールを忘れないアルターニャの図太さには私も呆れるしかなかった。彼女は心の底から彼に惚れているのだろう。
そして言い終わるや否や私に雑に上着を返してくる。だがそれがアレクシスの上着である事をすぐに思い出し、私から奪い取り、もう一度丁寧に返してくる。何がしたいのよ。
もういいかしら。私は早く帰りたいんだけど。
「ですが殿下、一つ言わせてくださいませ」
「…?なんでしょうか」
「いえ、アレクシス殿下ではなくリティシア嬢に…」
そして眉を吊り上げ、強く私を睨みつけると大声を張り上げる。
標的を見据えた彼女の目は王女というよりは童話に出てくる恐ろしい魔女の様だ。
「…リティシア!」
「…はい。どうなさいましたか?」
「貴女、殿下に対してあんな対応をするなんて…どういう事か分かってるの!?彼はこの国の王子なのよ!」
あんな対応とは恐らく…先程の素っ気ない態度や言動の事を指しているのだろう。
確かに態度は悪かったが、隣国の王女様に口出しされる程の出来事ではなかったはずだ。…私だって好きでそうしてる訳じゃないのよ、アルターニャ。
「はい。ですが…彼はその前に私の婚約者です。誠に失礼でございますが…アルターニャ王女様にどうこう言われる筋合いはないかと思います。」
「…!王女に向かってそんな…!」
案の定彼女の目は般若の様に吊り上がり、烈火の如く燃え盛る。
だがこうやって納得させるしか方法が思いつかないから、仕方ない。
「アルターニャ王女様、申し訳ありません。リティシアの代わりに謝罪させて下さい。彼女は決して王女を怒らせようとした訳ではありません。」
…彼の言う通り怒らせようとはしてないけどアレクシスを譲らないという思いがあるから少し口調が強くなってしまったのよね…。
彼の存在にいち早く反応し、嬉しそうな声をアルターニャがあげる。
恋する乙女の眼差しを向ける彼女は、先程までとは打って変わって恋に溺れる年頃の少女の様であった。
…彼女の目には最早アレクシスしか映っていない。どんなに鈍感な人が見たとしても、彼女が恋をしているとすぐに気づく事だろう。
しかし例外もいる。
それは想いを寄せる張本人のアレクシスである。
彼は彼女から向けられる好意をすべて「隣国の王子だから友好的に接してくれている」と勘違いしているのだ。
…間違ってはいないが、確実にそれだけの気持ちではない。
…哀れね、アルターニャ。訂正してあげるつもりもないけどね。
「…アレクシス。どうしてここに?」
さっきは助かったと感じたけど、やはり彼には会いたくなかった。
彼の優しさに触れる度に…言いようのない悲しみに包まれてしまうから。
「馬車に乗って帰るんだろ?もう準備が出来てるはずだから、そこまで送ろうと思って」
「あらそう。とっても嬉しいわ。ありがとう。」
どうしてここまで優しくするのよ…私めちゃめちゃ棒読みの演技したわよ?
これで傷ついたわよね?
私と別れたくなる…はずよね?…まぁもう期待はしてないわ。
優しすぎる貴方は…悪役令嬢の最大の敵ね。
「喜んでくれて嬉しいよ。それから…アルターニャ王女様、お会いできて光栄でございます。パーティの際にお声がけできず、申し訳ございません。」
アレクシスの上着を掴んだまま彼の美しさにぼうっと見惚れていたアルターニャであったが、自分が話しかけられている事にようやく気づき、コホン、と咳払いをする。
「いえ構いませんわ。パーティに訪れた殿下はとても美しく、私などがお声がけしてもらえるような存在ではありませんでしたもの。アレクシス殿下は間違いなくその場の誰よりも輝いておられましたわ。私が保証致します…!」
流れるように褒め称えられたアレクシスは少し面食らいながらも礼儀上のものだと捉え、納得したようだ。
違うわよ、どう見てもアルターニャは本気で言ってるし思ってるわよ。優しくて基本なんでも出来るのに、鈍感なのよね、この王子は。
「私などにはとても勿体ないお言葉有難うございます。それと一つお聞きしたいのですが…その上着を何故アルターニャ王女様がお持ちになられているのですか?」
「あっ、これはリティシアが奪った物だと思いましたので取り返しておきました。殿下にお返し致しますわ」
「…アルターニャ王女様。お気遣いは有難く思いますが、それは私自ら貸した物です。彼女にお返し頂けますか。それから…彼女の名誉を傷つけた事に関しても謝って頂きたい」
本来ならば自分が褒められたら同じ様に自分を下げ、相手を褒め称える場面であるが…彼はそれより先に私に謝るように促してくれる。
丁寧な言葉ではあるが、節々に静かな怒りが感じられた。
優しいアレクシスの静かな怒りを感じ取ったアルターニャは慌ててドレスの裾を持ち上げ、深く謝罪をする。
「…申し訳ございません。リティシア…嬢も、ごめんなさい。私が出過ぎた真似を致しました。しかし私が殿下を思って行ったという事をどうかお忘れなきようお願い申し上げます。」
流石はアレクシス。隣国の王女にたかが公女相手に謝罪させるとは。
こんな事は彼が尊敬され、好かれていなければ到底出来やしない。相変わらず凄いわね。
そして自分のアレクシスへの好意アピールを忘れないアルターニャの図太さには私も呆れるしかなかった。彼女は心の底から彼に惚れているのだろう。
そして言い終わるや否や私に雑に上着を返してくる。だがそれがアレクシスの上着である事をすぐに思い出し、私から奪い取り、もう一度丁寧に返してくる。何がしたいのよ。
もういいかしら。私は早く帰りたいんだけど。
「ですが殿下、一つ言わせてくださいませ」
「…?なんでしょうか」
「いえ、アレクシス殿下ではなくリティシア嬢に…」
そして眉を吊り上げ、強く私を睨みつけると大声を張り上げる。
標的を見据えた彼女の目は王女というよりは童話に出てくる恐ろしい魔女の様だ。
「…リティシア!」
「…はい。どうなさいましたか?」
「貴女、殿下に対してあんな対応をするなんて…どういう事か分かってるの!?彼はこの国の王子なのよ!」
あんな対応とは恐らく…先程の素っ気ない態度や言動の事を指しているのだろう。
確かに態度は悪かったが、隣国の王女様に口出しされる程の出来事ではなかったはずだ。…私だって好きでそうしてる訳じゃないのよ、アルターニャ。
「はい。ですが…彼はその前に私の婚約者です。誠に失礼でございますが…アルターニャ王女様にどうこう言われる筋合いはないかと思います。」
「…!王女に向かってそんな…!」
案の定彼女の目は般若の様に吊り上がり、烈火の如く燃え盛る。
だがこうやって納得させるしか方法が思いつかないから、仕方ない。
「アルターニャ王女様、申し訳ありません。リティシアの代わりに謝罪させて下さい。彼女は決して王女を怒らせようとした訳ではありません。」
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