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死んでも嫌
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そして間もなくしてアレクシスが呼んでいたものと、私達を迎えに来た二つの馬車が目の前に並ぶ。
私は自分の馬車に私とアーグレンの本を乗せると先に帰るように命じる。
…頼むものがあって良かったわ。折角来てくれたのに無駄足になったら可哀想だもの。
その後、私が二人の手を贅沢に使って馬車に乗りこむ。続いてアレクシスが乗り、最後に抵抗を完全に諦めたアーグレンが乗ると馬車はゆっくりと走り出した。
私は向かい合う二つの席の内一つを独占し、向かい側の席に二人を座らせ、窓を眺める。
アルターニャのお城は本当に危険がいっぱいだったわね。
できればもう二度と来たくないと言いたいところだけど…ツヴァイト殿下が心配だから…また来ることになるかもしれないわ。
「それにしても…ツヴァイト殿下があんな扱いを受けているとはな…」
アレクシスは遠ざかる城を眺めながら、複雑な表情をしてふと呟いた。
確かに…兄と弟であんなに対応が違うのはおかしいわ。それに加えてアレクは同じ王族だから…余計に色々思うところがあるんでしょうね。
「…分からないな。お前以外の王族が考えることは」
彼の言葉に、アーグレンが吐き捨てるように応えた。
アーグレン…私もその言葉に賛同するわ。一般的な王族というのは…本当に何を考えているのか分からないもの。アルターニャとその兄は特にね。
「ツヴァイト殿下なんて人がいたことすら私は知らなかったわ。…エリック殿下もそう」
ツヴァイト殿下は虐げられていたから納得するとして…エリック殿下は名前を聞いても思い出せないなんておかしいわ。
一体どれだけ脇役だったの?
アルターニャの兄なんだから一度くらいは出ていてもおかしくないのに…。
「…ツヴァイト殿下はあんな扱いを受けていたから恐らく最小限にしか周囲にその存在を知られていないんだろう。それからエリック殿下だけど…多分リティシアが知らない原因は彼が一度もパーティや外交の場に参加していないから…だと思う。」
その言葉に私は驚かざるを得ない。
…え?第一王子のくせに一切参加していない…?王様はそれを黙認してるというの…?
「参加していないって…どういうこと?」
「…王になる気はあって、勉強も剣術も優れているらしいんだけど…そういう政治とか外交関係は嫌いらしくて…誰かに押し付けているって話をどこかで聞いたけど恐らくそれがツヴァイト殿下だったんだろうな。押し付けたら最後その結果がどうなったかは知りもしない。どうせ失敗したんだと決めつけて何も出来ない王子だと勘違いをしているんじゃないかと…俺は思う」
つまり何もしていないのに自分は王になると謳っていると…やばいわね。
神様、今すぐ彼に与えた能力を剥奪してツヴァイト殿下にあげてよ。頑張ってるツヴァイト殿下がどう考えても可哀想だわ。
「…実は私もエリック殿下の姿を見たのは一度きりです。侍女を口説いていたところを目撃したのが衝撃的で覚えていただけで…他の場面で見たことはありませんね」
はぁ…女癖も悪いのね…ホント最悪。
侍女が仮にあんたに対して良い顔してたとしてもそれはあんたじゃなくてあんたの地位に惚れてるだけよ。間違えても貴方の人柄に惚れた訳じゃないからね。
「…あんな奴とは死んでも婚約したくないわね」
その言葉を聞いたアレクシスとアーグレンはお互い顔を見合わせる。そしてその後に私をじっと見つめてきたので意味が分からずに私は首を傾げる。
「…何?」
「…いや別になんでもないよ」
「…何よ、教えなさいよ」
アレクシスは少し戸惑う様子を見せたが、私の剣幕に負け小さな声で呟いた。
「…エリック殿下あんなやつじゃなくて俺なら婚約しても良いのかなって思っただけだよ」
「はぁ…自惚れるのも大概にしなさい」
私はアレクシスの言葉にため息をついたが、確かにそうともとれると感じ、更に自分自身に呆れる。
婚約しているのがアレクで良かったって…そう思ってるのね。まぁ厳密に言うとアレクと婚約しているのは私じゃなくてリティシア…なんだけどね。
「そうだな、悪い。…それにしてもグレンとリティシアが仲良くなれて良かったよ。まぁ俺は初めから二人ならすぐに仲良くなれると思ってたけどな」
「そうね。私達はとっても仲が良いわよ。貴方よりもずっとね」
そう冷たく言い放つとアレクシスの瞳が少し揺らぐ。その瞳が何を意味するのかは分からないが、確かにぐらりと揺らいだ。
「…公女様…私は親友の婚約者を奪うような人間ではありませんよ…」
「…分かってるわよ。可愛い冗談じゃないの」
私の本心としては全く可愛くない冗談だと思うけどね。リティシアとして生活してるとホントに性格がひねくり曲がりそうだわ。
でもいつかアレクと別れなきゃいけないのはもう決まってるんだし…こうやって冷たいこと言って少しでも別れやすくしてあげないとね…。
「…アレク?今のは…公女様の冗談だからな?」
「あぁ…分かってるよ」
なんとも浮かない表情を浮かべるアレクシスに私は疑問を覚える。
…ちゃんと分かってるのにどうしてそんなにテンションが下がってるのよ?
私は自分の馬車に私とアーグレンの本を乗せると先に帰るように命じる。
…頼むものがあって良かったわ。折角来てくれたのに無駄足になったら可哀想だもの。
その後、私が二人の手を贅沢に使って馬車に乗りこむ。続いてアレクシスが乗り、最後に抵抗を完全に諦めたアーグレンが乗ると馬車はゆっくりと走り出した。
私は向かい合う二つの席の内一つを独占し、向かい側の席に二人を座らせ、窓を眺める。
アルターニャのお城は本当に危険がいっぱいだったわね。
できればもう二度と来たくないと言いたいところだけど…ツヴァイト殿下が心配だから…また来ることになるかもしれないわ。
「それにしても…ツヴァイト殿下があんな扱いを受けているとはな…」
アレクシスは遠ざかる城を眺めながら、複雑な表情をしてふと呟いた。
確かに…兄と弟であんなに対応が違うのはおかしいわ。それに加えてアレクは同じ王族だから…余計に色々思うところがあるんでしょうね。
「…分からないな。お前以外の王族が考えることは」
彼の言葉に、アーグレンが吐き捨てるように応えた。
アーグレン…私もその言葉に賛同するわ。一般的な王族というのは…本当に何を考えているのか分からないもの。アルターニャとその兄は特にね。
「ツヴァイト殿下なんて人がいたことすら私は知らなかったわ。…エリック殿下もそう」
ツヴァイト殿下は虐げられていたから納得するとして…エリック殿下は名前を聞いても思い出せないなんておかしいわ。
一体どれだけ脇役だったの?
アルターニャの兄なんだから一度くらいは出ていてもおかしくないのに…。
「…ツヴァイト殿下はあんな扱いを受けていたから恐らく最小限にしか周囲にその存在を知られていないんだろう。それからエリック殿下だけど…多分リティシアが知らない原因は彼が一度もパーティや外交の場に参加していないから…だと思う。」
その言葉に私は驚かざるを得ない。
…え?第一王子のくせに一切参加していない…?王様はそれを黙認してるというの…?
「参加していないって…どういうこと?」
「…王になる気はあって、勉強も剣術も優れているらしいんだけど…そういう政治とか外交関係は嫌いらしくて…誰かに押し付けているって話をどこかで聞いたけど恐らくそれがツヴァイト殿下だったんだろうな。押し付けたら最後その結果がどうなったかは知りもしない。どうせ失敗したんだと決めつけて何も出来ない王子だと勘違いをしているんじゃないかと…俺は思う」
つまり何もしていないのに自分は王になると謳っていると…やばいわね。
神様、今すぐ彼に与えた能力を剥奪してツヴァイト殿下にあげてよ。頑張ってるツヴァイト殿下がどう考えても可哀想だわ。
「…実は私もエリック殿下の姿を見たのは一度きりです。侍女を口説いていたところを目撃したのが衝撃的で覚えていただけで…他の場面で見たことはありませんね」
はぁ…女癖も悪いのね…ホント最悪。
侍女が仮にあんたに対して良い顔してたとしてもそれはあんたじゃなくてあんたの地位に惚れてるだけよ。間違えても貴方の人柄に惚れた訳じゃないからね。
「…あんな奴とは死んでも婚約したくないわね」
その言葉を聞いたアレクシスとアーグレンはお互い顔を見合わせる。そしてその後に私をじっと見つめてきたので意味が分からずに私は首を傾げる。
「…何?」
「…いや別になんでもないよ」
「…何よ、教えなさいよ」
アレクシスは少し戸惑う様子を見せたが、私の剣幕に負け小さな声で呟いた。
「…エリック殿下あんなやつじゃなくて俺なら婚約しても良いのかなって思っただけだよ」
「はぁ…自惚れるのも大概にしなさい」
私はアレクシスの言葉にため息をついたが、確かにそうともとれると感じ、更に自分自身に呆れる。
婚約しているのがアレクで良かったって…そう思ってるのね。まぁ厳密に言うとアレクと婚約しているのは私じゃなくてリティシア…なんだけどね。
「そうだな、悪い。…それにしてもグレンとリティシアが仲良くなれて良かったよ。まぁ俺は初めから二人ならすぐに仲良くなれると思ってたけどな」
「そうね。私達はとっても仲が良いわよ。貴方よりもずっとね」
そう冷たく言い放つとアレクシスの瞳が少し揺らぐ。その瞳が何を意味するのかは分からないが、確かにぐらりと揺らいだ。
「…公女様…私は親友の婚約者を奪うような人間ではありませんよ…」
「…分かってるわよ。可愛い冗談じゃないの」
私の本心としては全く可愛くない冗談だと思うけどね。リティシアとして生活してるとホントに性格がひねくり曲がりそうだわ。
でもいつかアレクと別れなきゃいけないのはもう決まってるんだし…こうやって冷たいこと言って少しでも別れやすくしてあげないとね…。
「…アレク?今のは…公女様の冗談だからな?」
「あぁ…分かってるよ」
なんとも浮かない表情を浮かべるアレクシスに私は疑問を覚える。
…ちゃんと分かってるのにどうしてそんなにテンションが下がってるのよ?
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