99 / 209
親友
しおりを挟む
「俺がいない時はグレンの側を離れないでくれ。頼む」
アレクシスは私の瞳を真っ直ぐ真剣に見つめてくる。
いつ見ても澄んだ美しい瞳ね。歪んだ怪しい光を灯すリティシアの瞳とは…本当に大違い。
そして私はすぐに視線を逸らすと、腕を組み素っ気なく言葉を返す。
「…言われなくても分かってるわ。彼を護衛騎士にしたのは私の意思なんだから。」
皇后が私を嫌ってる…なるほどね。
そりゃ可愛い可愛いアレクシスを悪役令嬢わたしなんかに渡したくないでしょう…。皇后の気持ちがよく分かるわ。
王様もあんまり優しくはなさそうだし…両方共私を嫌っていると考えた方が自然ね。
…私を心配してくれてるのにごめんね、アレク。それは私の…狙い通りだわ。
悪目立ちをできる限り避けておけば…殺されずに婚約破棄に一役かってもらえそうだから。
どうか安心して下さい陛下、皇后。
私は大切な息子さんを奪うつもりは一切ございません。必ず彼を幸せに導いてみせましょう。
間違っても…私を殺さないで下さいね。
「あぁ、そうだよな。分かってくれてありがとう。それからグレン…お前ばかりに頼んで申し訳ないけど…改めてお願いをさせてくれ。俺の代わりに…リティシアを護ってほしい」
アレクシスが次にアーグレンの瞳を見つめると彼の瞳が不思議そうに揺らぐ。
「…アレク。そういう時に命令を使うべきだろう。お前は王子なんだから。…それに、お前に言われなくても私は初めからそうするつもりだ。安心してくれ」
「…ありがとう。命令…ではなくやっぱりお願いだ。だって命令なんてしなくてもグレンは俺の意志を誰よりも理解してくれる人だから…できれば命令はしたくないんだ。結局言ってることは何も変わらないんだけど…ただの俺の我儘だな」
その言葉にアーグレンはふっと微笑む。まるで初めからその答えが分かっていたかのように。
「…お前らしいな。分かった。お前の親友として…その言葉、確かに聞き入れた。友達っていうのは対等だから…命令、じゃなくお願いをな。」
二人の親友はかつての思い出を振り返りながら互いに笑みを浮かべた。彼らは今後もとても良い関係を築いていくのだろう。
「それじゃぁ…もう帰るか。リティシアとアーグレンも俺の馬車に乗っていくか?」
「馬車ね…ずっと考えていたんだけど貴方の竜に乗って帰れば良いじゃない。どうしてわざわざ馬車を使うの?」
私の言葉が予想外であったらしく、アレクシスは目を丸くして驚いている。その隣を見てみればアーグレンも同様に驚いていた。
え?私そんなにおかしいこと言ったかしら?
「…リティシア…急に竜が町中を飛び回ったら皆びっくりしちゃうだろ?そもそもこの魔法を知ってる人すら少ないし…知っていて更に使える人なんて数える程しかいない。無闇に使ったら町がパニックになっちゃうんだよ」
あぁ、なるほどね…そういうことを気にして使っていなかったのね。
白馬に乗ってる王子様ならきっとすぐに受け入れられるけど、竜に乗ってる王子様なんて下手したら侵略者かと思われかねないものね。
「へぇ…確かに急に竜が飛び回ってたら驚くわね。私だったらそんなこと考えないで普通に飛んでたわ。流石は町の人のことまで考える素晴らしい王子様ね。貴方らしいわ」
皮肉めいた言い方をしたのだが彼はそれに気づいているのかいないのか、屈託のない笑みを浮かべる。
これはちゃんと本心なんだけど…普通に褒めちゃうとリティシアっぽくないから…こうやって伝えるしかないの。ごめんね。
でも貴方は全然気にしてないようで良かったわ。私の言葉に傷ついて落ち込んだりされたら流石に悲しいもの…。
軽く受け流すという悪役令嬢対抗スキルがアレクにちゃんと備わっていて良かったわ。
…嫌われる路線はもうほぼ不可能に思えてきたからとりあえずこれ以上好かれないようにしないとね…。
「ありがとう。それで…どうする?二人も一緒に乗るか?」
「貴方なんかと一緒にいたくない…と言いたいところだけど王族の馬車は乗り心地が最高なのよね…。ねぇ、私が乗るならアーグレンも乗るわよね?」
「…公女様、私は今度こそ馬に乗って護衛しますよ」
私から視線を逸らすようにして彼はそう呟く。私はその言葉に微笑むと、すぐに真顔に戻す。
「アーグレンも乗りたくて仕方ないって言ってるわ。アレクシス、早く用意して」
急に話を振られたアレクシスは戸惑いながらもなんとか声を発する。
「いや全然言ってなかったけど…」
「何度も言わせないで。私に文句を言うのは百億年早いのよ」
「また年数が増えてるような…まぁいいや。俺も二人と一緒に帰りたいし。良いよな?グレン」
「…あぁ」
全てを諦めたアーグレンが絶望の眼差しをアレクシスに向ける。その瞳を見たアレクシスが思わず吹き出し、大声で笑い始める。
「なんか面白いな。グレンがリティシアに振り回されてるとか…凄く新鮮だ」
「貴方も私に振り回されてるくせによく言うわよ」
即座に言葉を返すと彼は「確かに…でも」と言葉を漏らす。そしてまたあの優しい笑顔を浮かべた。
「リティシアにならどれだけ振り回されてもいいよ」
「またそんな事言って…バカじゃないの?」
なんてね。本当にバカなのはアレクじゃない。
嬉しいなんて思ってる私が…一番バカだわ。
アレクシスは私の瞳を真っ直ぐ真剣に見つめてくる。
いつ見ても澄んだ美しい瞳ね。歪んだ怪しい光を灯すリティシアの瞳とは…本当に大違い。
そして私はすぐに視線を逸らすと、腕を組み素っ気なく言葉を返す。
「…言われなくても分かってるわ。彼を護衛騎士にしたのは私の意思なんだから。」
皇后が私を嫌ってる…なるほどね。
そりゃ可愛い可愛いアレクシスを悪役令嬢わたしなんかに渡したくないでしょう…。皇后の気持ちがよく分かるわ。
王様もあんまり優しくはなさそうだし…両方共私を嫌っていると考えた方が自然ね。
…私を心配してくれてるのにごめんね、アレク。それは私の…狙い通りだわ。
悪目立ちをできる限り避けておけば…殺されずに婚約破棄に一役かってもらえそうだから。
どうか安心して下さい陛下、皇后。
私は大切な息子さんを奪うつもりは一切ございません。必ず彼を幸せに導いてみせましょう。
間違っても…私を殺さないで下さいね。
「あぁ、そうだよな。分かってくれてありがとう。それからグレン…お前ばかりに頼んで申し訳ないけど…改めてお願いをさせてくれ。俺の代わりに…リティシアを護ってほしい」
アレクシスが次にアーグレンの瞳を見つめると彼の瞳が不思議そうに揺らぐ。
「…アレク。そういう時に命令を使うべきだろう。お前は王子なんだから。…それに、お前に言われなくても私は初めからそうするつもりだ。安心してくれ」
「…ありがとう。命令…ではなくやっぱりお願いだ。だって命令なんてしなくてもグレンは俺の意志を誰よりも理解してくれる人だから…できれば命令はしたくないんだ。結局言ってることは何も変わらないんだけど…ただの俺の我儘だな」
その言葉にアーグレンはふっと微笑む。まるで初めからその答えが分かっていたかのように。
「…お前らしいな。分かった。お前の親友として…その言葉、確かに聞き入れた。友達っていうのは対等だから…命令、じゃなくお願いをな。」
二人の親友はかつての思い出を振り返りながら互いに笑みを浮かべた。彼らは今後もとても良い関係を築いていくのだろう。
「それじゃぁ…もう帰るか。リティシアとアーグレンも俺の馬車に乗っていくか?」
「馬車ね…ずっと考えていたんだけど貴方の竜に乗って帰れば良いじゃない。どうしてわざわざ馬車を使うの?」
私の言葉が予想外であったらしく、アレクシスは目を丸くして驚いている。その隣を見てみればアーグレンも同様に驚いていた。
え?私そんなにおかしいこと言ったかしら?
「…リティシア…急に竜が町中を飛び回ったら皆びっくりしちゃうだろ?そもそもこの魔法を知ってる人すら少ないし…知っていて更に使える人なんて数える程しかいない。無闇に使ったら町がパニックになっちゃうんだよ」
あぁ、なるほどね…そういうことを気にして使っていなかったのね。
白馬に乗ってる王子様ならきっとすぐに受け入れられるけど、竜に乗ってる王子様なんて下手したら侵略者かと思われかねないものね。
「へぇ…確かに急に竜が飛び回ってたら驚くわね。私だったらそんなこと考えないで普通に飛んでたわ。流石は町の人のことまで考える素晴らしい王子様ね。貴方らしいわ」
皮肉めいた言い方をしたのだが彼はそれに気づいているのかいないのか、屈託のない笑みを浮かべる。
これはちゃんと本心なんだけど…普通に褒めちゃうとリティシアっぽくないから…こうやって伝えるしかないの。ごめんね。
でも貴方は全然気にしてないようで良かったわ。私の言葉に傷ついて落ち込んだりされたら流石に悲しいもの…。
軽く受け流すという悪役令嬢対抗スキルがアレクにちゃんと備わっていて良かったわ。
…嫌われる路線はもうほぼ不可能に思えてきたからとりあえずこれ以上好かれないようにしないとね…。
「ありがとう。それで…どうする?二人も一緒に乗るか?」
「貴方なんかと一緒にいたくない…と言いたいところだけど王族の馬車は乗り心地が最高なのよね…。ねぇ、私が乗るならアーグレンも乗るわよね?」
「…公女様、私は今度こそ馬に乗って護衛しますよ」
私から視線を逸らすようにして彼はそう呟く。私はその言葉に微笑むと、すぐに真顔に戻す。
「アーグレンも乗りたくて仕方ないって言ってるわ。アレクシス、早く用意して」
急に話を振られたアレクシスは戸惑いながらもなんとか声を発する。
「いや全然言ってなかったけど…」
「何度も言わせないで。私に文句を言うのは百億年早いのよ」
「また年数が増えてるような…まぁいいや。俺も二人と一緒に帰りたいし。良いよな?グレン」
「…あぁ」
全てを諦めたアーグレンが絶望の眼差しをアレクシスに向ける。その瞳を見たアレクシスが思わず吹き出し、大声で笑い始める。
「なんか面白いな。グレンがリティシアに振り回されてるとか…凄く新鮮だ」
「貴方も私に振り回されてるくせによく言うわよ」
即座に言葉を返すと彼は「確かに…でも」と言葉を漏らす。そしてまたあの優しい笑顔を浮かべた。
「リティシアにならどれだけ振り回されてもいいよ」
「またそんな事言って…バカじゃないの?」
なんてね。本当にバカなのはアレクじゃない。
嬉しいなんて思ってる私が…一番バカだわ。
0
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる