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ツヴァイト殿下の悲しい本音に私達は言葉が出ない。
本当はこんな時、寄り添ってあげるのは家族なのに…この子にはそれがいないなんて。
この様子じゃお父さんとお母さん…王様と皇后陛下もきっとこの状況に目を瞑っているんでしょうね。
ツヴァイト殿下が王になる確率は限りなく低いし…きっと後継者教育も適当なんだわ。
本を読むことしかできないって言ってたけど…本当にそうなのかな?なんとなくだけど、この子はもっと他に何か出来る気がするわ。
「…きっと変わってくれますよ。それから、どうかこれだけは忘れないで下さい。私は…いえリティシアとアーグレンも貴方様の味方です。決してツヴァイト殿下を除け者には致しません」
「えぇ。ツヴァイト殿下は一人ではありませんよ。ね、アーグレン」
「はい。勿論です。」
私達の言葉に、寂しそうだった表情が徐々に変わっていき彼は嬉しそうに微笑む。
「…勿体ないお言葉、有難うございます」
「それから殿下…殿下は先程本を持っていたと思うのですが…本がお好きなんですか?」
ツヴァイト殿下はアレクシスの言葉に即座に頷いた。
「はい。この城の書斎の本は全部読み尽くしてしまったので今は他国から取り寄せている状況なんです」
さらっと紡がれたその言葉に私達は先程とは別の意味で言葉を失った。
「全部…全部読んだんですか!?」
アレクシスの驚いたような声を聞いても尚きょとんとした表情をするツヴァイト殿下の様子を見ると…どうやら本人にとっては凄くもなんともないらしい。
「皆さんが持たれているその本も実は読んでいますよ。リティシア様の本は…どのページも全て白紙でしたけど」
「えっ…白紙?」
その言葉に驚き私がペラペラとページを捲るとアレクシスとアーグレンが覗き込んでくる。
確かにどのページも薄っすらと魔力が感じられるのみで、文字はどこにも書かれていなかった。
「ツヴァイト殿下は…アルターニャ王女様の書斎に入ったことがあるんですか?」
そしてアレクシスが問いかけると彼は再び頷く。
「はい。姉に何度か書斎に入りたいとお願いしたことがありまして…いちいち鍵を渡すのは面倒だからって合鍵をくれたんです。姉はもうその事をとっくに忘れているでしょうけど。」
確かにそのことは教えてもらわなかったわね…ということはあの王女…綺麗サッパリ忘れてたわね。
…そして明らかに使われていなかった書斎の机を見るに…きっとツヴァイト殿下は持ち出して自分の部屋で読んでいたのね。
「なるほど…凄いですね。あれだけの量を全てお読みになるなんて…」
「そうですか?大したことありませんが…有難うございます。それから…皆さんは本を持って帰るおつもりなのですか?」
「…申し訳ございません、アルターニャ王女様に渡されたのですがやはりお返しした方が…」
「いえいえ、姉が言ったのであれば勿論お持ち帰りになられて結構です。僕はリティシア様が黒表紙の本をお選びになられたことに興味を持ったので…少し聞いてみたかったんです。リティシア様、中身が白紙だということが分かりましたが…違う本に致しますか?」
ツヴァイト殿下は私を真っ直ぐ見つめてくるので、私もその視線に応え、真っ直ぐ見つめる。
「…いいえ。頂けるのであればこのまま持ち帰ります。…よろしいですか?」
「はい。僕もそれが良いと思います。一見不気味な本ですが…きっとその本はリティシア様のお役に立つと思いますよ。」
私の返事が期待通りであったのか、ツヴァイト殿下はまた明るい少年の笑みを見せる。
アルターニャとは別の意味で何を考えているのか分からないわね。
そして彼は私達を門まで案内すると「それでは、僕はこれで」と、一礼し去ろうとする。遠ざかっていくその背中をアレクシスが呼び止める。少年は振り返った。
「ツヴァイト殿下…アルターニャ王女様に…リティシアには手を出さないでほしいと…お伝えしてもらえますか?」
「…分かりました。ですが…姉が素直に聞くはずありません。申し訳ありませんが姉の行動に注意してください。」
本当に悪役令嬢リティシアはどこに行っても基本的に嫌われてるからね…もう慣れちゃったわよ。
まぁ自分が悪いんだけどさ…いや私は悪くないんだけどリティシアが悪い…
…ややこしいからこの話はなかったことにしよ。
それから何故あの花が私に合わないということを…アルターニャが知っているのかだけど…。考えてもやっぱり分からないわね。
でも今回の事で判明したのはこの城の全ての人間が私の敵ではないということ。
そしてツヴァイト殿下は必ず私達の…アレクの味方になってくれるわ。彼が将来王になってくれれば助かるんだけど…そう上手くはいかないわよね。
「…リティシア、アーグレン。…恐らく母さんがリティシアのことを狙ってる。昔からよく思っていないことは知っていたけど…最近は特に目の敵にしてる気がするんだ」
彼はそう去りゆくツヴァイト殿下の背中を眺めながら呟いた。
本当はこんな時、寄り添ってあげるのは家族なのに…この子にはそれがいないなんて。
この様子じゃお父さんとお母さん…王様と皇后陛下もきっとこの状況に目を瞑っているんでしょうね。
ツヴァイト殿下が王になる確率は限りなく低いし…きっと後継者教育も適当なんだわ。
本を読むことしかできないって言ってたけど…本当にそうなのかな?なんとなくだけど、この子はもっと他に何か出来る気がするわ。
「…きっと変わってくれますよ。それから、どうかこれだけは忘れないで下さい。私は…いえリティシアとアーグレンも貴方様の味方です。決してツヴァイト殿下を除け者には致しません」
「えぇ。ツヴァイト殿下は一人ではありませんよ。ね、アーグレン」
「はい。勿論です。」
私達の言葉に、寂しそうだった表情が徐々に変わっていき彼は嬉しそうに微笑む。
「…勿体ないお言葉、有難うございます」
「それから殿下…殿下は先程本を持っていたと思うのですが…本がお好きなんですか?」
ツヴァイト殿下はアレクシスの言葉に即座に頷いた。
「はい。この城の書斎の本は全部読み尽くしてしまったので今は他国から取り寄せている状況なんです」
さらっと紡がれたその言葉に私達は先程とは別の意味で言葉を失った。
「全部…全部読んだんですか!?」
アレクシスの驚いたような声を聞いても尚きょとんとした表情をするツヴァイト殿下の様子を見ると…どうやら本人にとっては凄くもなんともないらしい。
「皆さんが持たれているその本も実は読んでいますよ。リティシア様の本は…どのページも全て白紙でしたけど」
「えっ…白紙?」
その言葉に驚き私がペラペラとページを捲るとアレクシスとアーグレンが覗き込んでくる。
確かにどのページも薄っすらと魔力が感じられるのみで、文字はどこにも書かれていなかった。
「ツヴァイト殿下は…アルターニャ王女様の書斎に入ったことがあるんですか?」
そしてアレクシスが問いかけると彼は再び頷く。
「はい。姉に何度か書斎に入りたいとお願いしたことがありまして…いちいち鍵を渡すのは面倒だからって合鍵をくれたんです。姉はもうその事をとっくに忘れているでしょうけど。」
確かにそのことは教えてもらわなかったわね…ということはあの王女…綺麗サッパリ忘れてたわね。
…そして明らかに使われていなかった書斎の机を見るに…きっとツヴァイト殿下は持ち出して自分の部屋で読んでいたのね。
「なるほど…凄いですね。あれだけの量を全てお読みになるなんて…」
「そうですか?大したことありませんが…有難うございます。それから…皆さんは本を持って帰るおつもりなのですか?」
「…申し訳ございません、アルターニャ王女様に渡されたのですがやはりお返しした方が…」
「いえいえ、姉が言ったのであれば勿論お持ち帰りになられて結構です。僕はリティシア様が黒表紙の本をお選びになられたことに興味を持ったので…少し聞いてみたかったんです。リティシア様、中身が白紙だということが分かりましたが…違う本に致しますか?」
ツヴァイト殿下は私を真っ直ぐ見つめてくるので、私もその視線に応え、真っ直ぐ見つめる。
「…いいえ。頂けるのであればこのまま持ち帰ります。…よろしいですか?」
「はい。僕もそれが良いと思います。一見不気味な本ですが…きっとその本はリティシア様のお役に立つと思いますよ。」
私の返事が期待通りであったのか、ツヴァイト殿下はまた明るい少年の笑みを見せる。
アルターニャとは別の意味で何を考えているのか分からないわね。
そして彼は私達を門まで案内すると「それでは、僕はこれで」と、一礼し去ろうとする。遠ざかっていくその背中をアレクシスが呼び止める。少年は振り返った。
「ツヴァイト殿下…アルターニャ王女様に…リティシアには手を出さないでほしいと…お伝えしてもらえますか?」
「…分かりました。ですが…姉が素直に聞くはずありません。申し訳ありませんが姉の行動に注意してください。」
本当に悪役令嬢リティシアはどこに行っても基本的に嫌われてるからね…もう慣れちゃったわよ。
まぁ自分が悪いんだけどさ…いや私は悪くないんだけどリティシアが悪い…
…ややこしいからこの話はなかったことにしよ。
それから何故あの花が私に合わないということを…アルターニャが知っているのかだけど…。考えてもやっぱり分からないわね。
でも今回の事で判明したのはこの城の全ての人間が私の敵ではないということ。
そしてツヴァイト殿下は必ず私達の…アレクの味方になってくれるわ。彼が将来王になってくれれば助かるんだけど…そう上手くはいかないわよね。
「…リティシア、アーグレン。…恐らく母さんがリティシアのことを狙ってる。昔からよく思っていないことは知っていたけど…最近は特に目の敵にしてる気がするんだ」
彼はそう去りゆくツヴァイト殿下の背中を眺めながら呟いた。
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