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side大志:2 恋愛相談②
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「コレって星野のだよな?…何故か紬に俺にくれたんだけど、良いのか?」
俺はペンケースから二十五セント硬貨を取り出し、星野に差し出す。
「ああ、いいんだよ。私が紬にあげたの。…紬は大志に渡す時、何も言わなかったの?」
俺は混乱であやしくなった記憶を辿り、言葉にする。
「『大志の幸せを願ってるからあげる』と言われた気がする」
その後は紬が走り去ってしまったので、詳しい説明は聞けなかった。
「ああ…いっぱいいっぱいだったんだね、紬」
星野は「んー」と言って少し黙った。たぶん、紬の代わりに説明するか迷っているんだろう。
「…私がそのコインをもらった経緯は知ってるよね?」
俺はうなずく。
去年の十二月、北斗が留学に行くことを寸前で伝えたために、星野は自分は北斗にとって軽い存在なんじゃないかと悩んでいた。そんな時に、客の老夫婦が星野にくれたものだ。
「一期一会の自分の幸せを願ってくれたのが嬉しかったって言ってたよな」
「よく覚えてるね。そうだよ」
星野は思い出を噛みしめるような表情を見せた。
「じゃあ、大事なものだろ」
俺は星野の前にコインを置く。講義室のテーブルとコインが触れてコツンと硬い音がした。
「…コインがなくてもいいの。」
星野は硬貨をひょいとつまみ上げると、目の高さに持っていって眺める。
「私の幸せを願ってくれる気持ちが嬉しかったの。それは、このコインがなくなっても変わらないから、なくても大丈夫。今度は私が『紬の幸せを願ってるよ』って伝えたくてあげたんだよ」
星野は俺の手を取ると、銀色に輝く硬貨を手のひらに載せた。
「紬が幸せを願う人にあげていいよって、私言ったから…大志にあげたかったんだろうね」
「………」
俺が黙り込んでしまうと、星野は再びコーラに口をつけた。考えをまとめるのを待ってくれているらしい。
「…思いの外、嬉しいものだな」
星野がずっと大切に持っていた気持ちも、今なら分かる。
「でしょ?」
「でもそれなら、なおさら紬に持っていて欲しい」
星野はキョトンとした顔をして、質問をする。それは俺が紬に幸せになって欲しいと思っているからか、と。俺はうなずき、二十五セント硬貨をギュッと握りしめた。
「んー、じゃあ返せば?」
「ハッ!?」
大声を出した俺を星野は睨む。講義室で昼食を取っていた学生が少しこちらを見て、すぐに自分たちの会話に戻っていった。そんなことしたらフッたと思われないか、と尋ねると額にパチッと小さな痛みが走る。
「説明して渡せばいいでしょ?アンタはしゃべらなすぎ!そんなんじゃ、付き合い始めたってうまくいかないよ。お互いの思ってること、ちゃんと伝え合わないとすれ違っちゃうんだからね」
星野は親指と中指で輪を作りながら俺を見据えている。デコピン第二波が来そうだ。
「…分かった」
「もう!紬泣かせたらしばくから!」
そんな権利お前にないだろうと思いつつ、黙って手の中にある硬貨を眺める。綺麗だが、このまま返すのも味気ない。スマホで「二十五セント硬貨 アクセサリー」で検索したら、いろいろと出てきた。
「…なんか加工して渡そうかな…」
「おー!いいじゃん!…あっ!土器はやめなよ?土器は」
星野は思いきり残念なものを見るような目を向けてくる。
「古傷えぐってくんじゃねぇ」
俺は眉をしかめたらしい。星野はからかっていたのに、急に真面目そうな表情になった。
「…紬のこと好きなのに返事をためらってるのって、やっぱりその古傷に関係があるの?」
突然確信を突かれて、俺の息は止まりそうになった。
俺はペンケースから二十五セント硬貨を取り出し、星野に差し出す。
「ああ、いいんだよ。私が紬にあげたの。…紬は大志に渡す時、何も言わなかったの?」
俺は混乱であやしくなった記憶を辿り、言葉にする。
「『大志の幸せを願ってるからあげる』と言われた気がする」
その後は紬が走り去ってしまったので、詳しい説明は聞けなかった。
「ああ…いっぱいいっぱいだったんだね、紬」
星野は「んー」と言って少し黙った。たぶん、紬の代わりに説明するか迷っているんだろう。
「…私がそのコインをもらった経緯は知ってるよね?」
俺はうなずく。
去年の十二月、北斗が留学に行くことを寸前で伝えたために、星野は自分は北斗にとって軽い存在なんじゃないかと悩んでいた。そんな時に、客の老夫婦が星野にくれたものだ。
「一期一会の自分の幸せを願ってくれたのが嬉しかったって言ってたよな」
「よく覚えてるね。そうだよ」
星野は思い出を噛みしめるような表情を見せた。
「じゃあ、大事なものだろ」
俺は星野の前にコインを置く。講義室のテーブルとコインが触れてコツンと硬い音がした。
「…コインがなくてもいいの。」
星野は硬貨をひょいとつまみ上げると、目の高さに持っていって眺める。
「私の幸せを願ってくれる気持ちが嬉しかったの。それは、このコインがなくなっても変わらないから、なくても大丈夫。今度は私が『紬の幸せを願ってるよ』って伝えたくてあげたんだよ」
星野は俺の手を取ると、銀色に輝く硬貨を手のひらに載せた。
「紬が幸せを願う人にあげていいよって、私言ったから…大志にあげたかったんだろうね」
「………」
俺が黙り込んでしまうと、星野は再びコーラに口をつけた。考えをまとめるのを待ってくれているらしい。
「…思いの外、嬉しいものだな」
星野がずっと大切に持っていた気持ちも、今なら分かる。
「でしょ?」
「でもそれなら、なおさら紬に持っていて欲しい」
星野はキョトンとした顔をして、質問をする。それは俺が紬に幸せになって欲しいと思っているからか、と。俺はうなずき、二十五セント硬貨をギュッと握りしめた。
「んー、じゃあ返せば?」
「ハッ!?」
大声を出した俺を星野は睨む。講義室で昼食を取っていた学生が少しこちらを見て、すぐに自分たちの会話に戻っていった。そんなことしたらフッたと思われないか、と尋ねると額にパチッと小さな痛みが走る。
「説明して渡せばいいでしょ?アンタはしゃべらなすぎ!そんなんじゃ、付き合い始めたってうまくいかないよ。お互いの思ってること、ちゃんと伝え合わないとすれ違っちゃうんだからね」
星野は親指と中指で輪を作りながら俺を見据えている。デコピン第二波が来そうだ。
「…分かった」
「もう!紬泣かせたらしばくから!」
そんな権利お前にないだろうと思いつつ、黙って手の中にある硬貨を眺める。綺麗だが、このまま返すのも味気ない。スマホで「二十五セント硬貨 アクセサリー」で検索したら、いろいろと出てきた。
「…なんか加工して渡そうかな…」
「おー!いいじゃん!…あっ!土器はやめなよ?土器は」
星野は思いきり残念なものを見るような目を向けてくる。
「古傷えぐってくんじゃねぇ」
俺は眉をしかめたらしい。星野はからかっていたのに、急に真面目そうな表情になった。
「…紬のこと好きなのに返事をためらってるのって、やっぱりその古傷に関係があるの?」
突然確信を突かれて、俺の息は止まりそうになった。
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