コレクター(まだ本編は始まらない)

冬麻

文字の大きさ
13 / 55
第二章 呪いからの解放編

履き違え

しおりを挟む
 

 白い子の、魔物への一方的な虐殺に呆然としていた一団を引き連れて王都に向かい、そして着いた。

 そのころには子供たちも半分ほどはまともな状態になったようで、白い子に言われて大人しくついてきている。

 一人ずつ頭の中がまともになるにつれて、ぼくの警戒度も上がっていく。まず安全だろうと思っていても、実力そのものをちゃんと図らなければ安心できない。

「……」

「どうした?」

 白い子が呆然としているので尋ねてみる。

「遠くから見ても凄かったけど、大きいのね。人もたくさんいる」

 白い子は王都の風景を見ながらそう言った。

「まあ、一応は国の首都だからな。でもこの国はそこまで大きな国じゃないから、世界を回ればそのうちの半分ぐらいはもっと凄いぞ」

「そう、いつか見る機会があるかしら」

 大きな興味があるように白い子は答えた。まあ、無理もないか。今までの人生を数十人程度の規模の村でずっと生きてきたのだから。

 ゆっくりと王都を進んでいると、暗い顔をした女性の将軍が声をかけてきた。

「失礼、皇子。先ほど、我が主との連絡により、全ての情報が共有できました。結果、宰相が民衆の前で、皇子の罪を断罪しようと企んでいるらしいのです」

「罪?」

 このぼくにそんなものがあったっけ?

「今回の任務で将軍を三人、兵士を半数以上犠牲にしてしまったので」

「ふーん」

「申し訳ありません。ですが我が主に隠し事はできませんし、これほどの犠牲を隠すことはできないでしょう」

「隠す?なんで?ぼくは悪いことなんてしていないさ。任務を果たして堂々の凱旋だ。胸を張って報告させてもらうよ」

 はっきりと告げると先に進む。

 すると宮殿前広場に国王を中心に重鎮や、見物の民がたくさん集まっている。

 なるほど。ここでぼくを糾弾し、手柄を奪い、それ以外にもぼくから色々な利権を奪う気なのだろう。

 実に楽しみだ。どうやって跳ね返そう。

 ぼくたちが広場に入るとやはりというか、まずは国王が声をあげる。

「第十皇子、クルギスよ。よくぞ帰った」

 一見すると労いの言葉に聞こえるが、実際のところはどうだろう。

「任務完了です。命令通り、生き残りは全員、保護して連れてきたよ」

 ぼくの軽口に色々な人間がざわつく。

 まあ、上司に対する口の利き方ではないが、それでも十二歳の子供に目くじらを立て過ぎだ。

「クルギス皇子、国王に対しその言葉は!」

「よい。常々言っておろうが。我が国は完全な実力主義であり、結果を出している人間はある程度の自由が認められる。義理とはいえ、我の子でもあるしな」

「しかし、それでは示しが!」

「なにより、クルギスは「皇子」なのだ。許される」

 その一言はとても強力だった。

 この国での「皇子」とは次の国王を指す言葉だ。

 ぼくは第十「皇子」だが、よっぽどの問題行動を起こさなければ、ほぼ確実に次の国王になるとそう言われている。

 まあ、そんな未来が来ないことは確定しているのだが、国王なんてくだらない存在になる気はないのだ。だが、この国にいる間は強力な権力になるので、甘んじて否定はしない。

「じゃあ、子供たちは引き渡すよ。ぼくは忙しい。部屋に戻らせてもらう」


 兵士を連れてのお使いは実に疲れるので、とっと帰ろうとすると引き留められる。

「待て!クルギス皇子よ。大体の報告は既に受けている。さらに一目見ただけでも瞭然なことに、ずいぶん兵士の人数が少なくなってはいないか?」

 宰相が大きな声で始めた。

「なってるよ。いっぱい死んだみたいだからね」

「将軍を三名、兵士を六百名死なせた責任はどうやってとる気だ?」

 的外れな意見を持っている宰相にある程度の説明をする。

「責任?そんなものはないだろう。ぼくは国王からの任務を完全に果たした。それに彼らが死んだのは「命令違反」に「独断専行」だぞ。上司の命令を聞けない部下の命までは責任は持つ必要はない」

「確かに、常人ならその理屈は正しいだろう。だが、クルギス皇子は常人ではない。聞くが、お前は本当に部下を「助けられなかったのか?」見殺しにしたのではないか?」

「当然だろう。さっきも言ったように上司の命令を聞けない部下なんて必要ない。命令を無視した時点でぼくが殺してもよかったぐらいだ。犬死できて幸せだったろうさ」

 ぼくの発言に、最初からざわめきが大きかった民衆のざわめきが比べ物にならないぐらい大きくなる。

「ほう、将軍たちはその理屈を通せるのかもしれないが、命令に従っただけの兵士たちはどうなるのだ?彼らにだって家族や友人がいたのだぞ。今、見物している人間の中にも多数な」

「だから?兵を連れてったのも命令したのも将軍たちだ。責任は彼らにある。兵が無理やり徴兵されたものだと言うのなら徴兵した国王に責任がある」

 履き違えるなと、ぼくはそう言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

転生魔女は悠々自適に世界を旅する

黛 ちまた
ファンタジー
 前世の記憶を持つ双子の魔女エレンとキリエは、転生した異世界を旅する。膨大な魔力、最強の使い魔、魔女だけが使える特別な馬車で、好き勝手に世界を満喫する。  異世界転生ひゃっほーぅ!!なお話です。  小説家になろうさまでも連載を開始しました。

処理中です...