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第二章 呪いからの解放編
苦手なもの
しおりを挟むそれからも会議はつつがなく進行し、細かい話まで終わったあとは無駄に長い会議は終了し、ほとんどの人間が部屋から退出した。
会議室に残っているのは国王と第一王子、そして何故かぼくだった。何故?
「なんでぼくをこの場に残したんだ?ぼくは第十皇子だけど」
会議が終わり、仮面が必要なくなったので流石に誰に対しても敬語ではなくなる。
「皮肉を言うな。お前は皇子なのだ。第十などと皇子の順番で測れるような人間ではない。それで、聞きたいのだが実際のところ作戦の成功率はどのぐらいだと思っているのだ?」
「さっきも言ったとおり、あの程度のことが出来ないのなら子供たちは何の役にも立ちませんよ」
つまり、あの作戦が上手くいかなければ子供たちは役に立たないが、あの作戦が決して上手くいくことはないという矛盾。
「なるほどな、会議中にその言葉を言わなかったのは成長したという証拠だな。昔のお前は他人の感情というものを理解できていなかったから平気で失言をしていた」
「そんなことより、なんでぼくをこの場所に残したんだ?」
「うむ、入るがいい」
国王が声をかけると、部屋の外にいた一人の子供が中に入ってきた。
トール村にいた子供の一人でぼくの部下にしてくれと積極的に語っていた子供だ。
具体的に言えば白い子だ。
「彼女はトール村の子供たちの中で一番強いらしい、ゆえに村の代表として近くに置いておいたのだ。名をアンナという」
国王からぼくたちへの丁寧な紹介が終わった。
「やあ」
ぼくは気安く声をかける。
「ええ、それで何の用かしら?」
白い子はぼくに頭を下げた後、物怖じせずに国王に質問をする。
「会議の話を聞いていたのだろう。どう思う?」
「さっきの作戦が成功するかという話なら不可能に決まっているわ」
「ほう、つまりクルの意見が間違っているということか?」
「ううん、クルギスの言っていたことは全部正しいわ。でも問題は人材ね。どれだけ方針が正しくても、能力が低ければ成功しないのは誰でもわかる当たり前のことよ。一応トール村の子供の中で一番強いのは私のつもりだけど、私が騎士団との戦いの中に入らなくても勝ち目なんて全くないわね」
「ほう、この国の参謀では能力不足ということか?」
「ええ、国王や第一王子でぎりぎりぐらいね。もっとも会話をしてみた私の勝手な印象で決めてるけど。でも少なくても参謀って人では絶対に無理だと思うわ」
「ほう、では失敗したらレオンが行うか?」
レオンとは第一王子の名前だ。
「いえ、私には自信がありませんね。基準となる白鴎騎士団の団長ははっきり言って強すぎる。同じトール村の出身な以上実力の基準にしやすいのですが、団長の半分の実力の持ち主が二十人もいるのなら不可能です。この国の上層部ならそのぐらいわかっていて当然だと思っているのですが。彼らは何を考えているのでしょうか?」
会議に参加していた重鎮たちを第一王子は疑問視する。
「まあつまらないプライドと、相手が子供だからって慢心しているんだろうさ。心を折ろうとしてどれだけの騎士団の人間の心が折れるのか楽しみだね」
「それは趣味が悪いぞ」
「いやいや、この国の人間も心を折られる必要があるからね。最近はぼくの功績を自分たちの功績だと勘違いしている偉そうな人間はたくさんいるから自分たちがなんの役にも立っていないという現実を知ったほうがいいだろう。致命的な何かが起こる前にね」
「うむ、それは間違いないな。慢心するものは我が国の戦力に相応しくはない。この国に無用な戦を招きかねんだろうからな」
「では、結局どうしますか?」
「決まっている。クルに行動してもらうのがいいだろう」
「断る」
「では、アンナよ。そなたはどう思う?」
「クルギスのトール村での悪魔との交渉を私は目の前で見たわ。その結果、クルギスなら全て上手くいくと思うわ。トール村の人間はあらゆる力に弱い。あれだけ圧倒的な頭脳があるのなら簡単に絶対服従になるわね」
「いや、ぼくは子供たちなんかいらないから」
何故、足手まといを自分の元に囲む必要があるのだろうか。
ぼくは一人で十分だ。
「そう、それはいいけど。私をクルギスの部下にしてくれるって話はどうなったの?」
そんな話は知らん。
「そんな話はまだ聞いてなかったけど、とりあえず断る」
「なんでよ、納得いかないわ。だって私はあなたの役に立つわよ」
「部下なんて役に立たないからいらない。別にそのことをきみが納得する必要はない」
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